日大アメフト選手・監督・コーチの衝撃会見で露呈した「問題の根源」

日大アメフト選手・監督・コーチの衝撃会見で露呈した「問題の根源」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/05/24
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加害学生による単独会見を見て

日本大学アメリカンフットボール部の悪質タックル問題に関して、大騒動が収まる気配が一向に見えない。それどころか、当の日大側が火に油を注ぎ続けている格好だ。

5月22日、問題となっているタックルを行った当事者の学生が、単独で会見を行った。

そこでは、一言一言丁寧に言葉を選びながら、真摯に謝意と反省を自分の言葉で述べ、今後自分にはアメフトを続ける権利はないと言い切った。

また、自らの責任を明確に認め、一言も監督やコーチを責めたり、責任転嫁をしたりすることはなかった。

もちろん、彼の行ったラフプレーは絶対に許されることではなく、被害者の選手は大きな怪我を負っている。

スポーツのフェアプレー精神に反する悪質な行為であり、アメリカンフットボールという競技に対する冒涜でもある。その責任は大きい。

しかし、若干20歳の若者が会見で見せた痛々しいまでの率直で誠実な態度には、誰もが胸を痛め、そして彼の勇気と潔さを称えた。

監督・コーチの会見は酷かった

一方、日大アメフト部の内田正人監督は、その3日前、被害を受けた関西学院大学に謝罪に赴いた際、空港で囲みの取材を受けた。

そこでは「すべて私の責任。弁解はしない」と述べ、具体的な点には何も言及しなかった。

一見、潔い会見のようにも見えるが、その実、具体的な質問への回答を姑息に避けているだけで、誠実さとはかけ離れた会見だった。

事実、場にそぐわない鮮やかなピンク色のネクタイや、「かんせいがくいん」を「かんさいがくいん」と終始言い間違えたことが、言葉の裏に隠した心情を如実に物語っていた。

真摯に謝罪をする気持ちが本当にあるのならば、このような失態は絶対にしないだろう。相手のことを何も考えず、自分のテレビ映えのことしか考えていなかったと言われても弁解はできない。

また、これまで長きにわたって定期戦を行ってきたライバル校の校名を、知らなかったとはどういうことだろうか。

さらに酷かったのは、当該学生による会見の翌日、急遽行われた内田監督と井上奨コーチによる会見である。

この日はさすがにグレーのネクタイで、冒頭深々と頭を下げたが、まずタイミングが遅すぎる。囲み取材よりも、学生の会見よりも、真っ先に指導者が会見を開いて謝罪や説明をするべきであった。

そして、会見の内容も唖然とするものだった。

内田監督は、悪質タックルに対する自らの指示を明確に否定した。

また、井上コーチは、監督の指示を学生に伝えた記憶はないと述べ、自ら「相手の選手を潰してこい」との指示はしたが、それを学生が誤って解釈したという趣旨の発言をした。

つまり、監督の言い分は、当の学生が嘘をついているということであり、コーチの言い分は、学生が誤解して勝手なプレーをしたということである。

2人とも見事なまでに自分の責任を回避して、学生に責任転嫁したと言われても仕方ない態度であった。

さらに、大学の広報部に属する司会者が、仏頂面で横柄な態度に終始していたことも大きな批判を集めた。終盤には、記者からの質問を一方的に遮って、「しつこい」「何時間やっても終わらない」などと述べて会見を打ち切った。

そして、「会見はみんな見ていますよ」と言う記者に対して、こともあろうに「見てても、見ていなくてもいい」などという暴言を投げつけた。

とにかく細かいところを突っ込まれて、言質を取られないようにしたい、できれば会見は誰も見ていないほうがいいというのが本音だろう。

批判をかわすためにとりあえず会見は開いたが、早く幕引きをしたいというあからさまな態度だった。

これらは、被害者側が、刑事告訴も辞さない姿勢を示していることを考えての対応なのであろう。

しかし、つい数日前に監督が「全責任は私にある」と言っていたのは、やはりうるさい質問を煙に巻くための方便だったということがはっきりした。

そして、大学側も、自己弁護に腐心している監督やコーチも、学生を守る気などは毛頭ないこともはっきりした。

当該学生の単独会見については、なぜまだ20歳そこらの学生を1人で会見に立たせたのか、大学はなぜ学生を守らないのかと大きな批判が集まったが、日大側の会見を受けて、その理由がわかったような気がする。

これは、学生本人の選択だったのではないだろうか。

彼はそれまでの対応から、大学や指導者への不信感を募らせた挙句、大学を見限り、大学に頼るよりも、自らを奮い立たせて、1人で直截に真実を語ることを選んだのではないだろうか。

一連の問題の根源にあるもの

ラフプレーを行なった選手は、監督の指示があったと述べ、監督はそれを否定している。監督の指示を伝えたコーチは、選手が勝手に思い込んで暴走したと言う。

しかし、言い分はそれぞれに違っても、全日本学生選抜にまで選ばれた優秀な選手が、あのような不可解で常軌を逸した反則をしてしまったという「異常な事態」が生じたことは紛れもない事実である。

そして、その「異常な事態」が生じてしまった背景にこそ、この問題の根源がある。それは、会見で学生本人が繰り返し述べていたように、監督やコーチが、彼を日常的に心理的に追い詰めていたことに尽きる。

やる気がないとたびたび叱責され、試合に出してもらえなかったり、日本代表を辞退するように迫られたり、ハラスメントともいえる仕打ちを繰り返し受けていた。

にもかかわらず、「雲の上」の存在である監督には、決して反論できず、その理由を聞くことすらできなかったという。

そして、当日「1プレー目で相手のクォーターバックの選手を潰せ」と言われ、「戦功」を焦るあまり、異常な心理状態に追い込まれた挙句の異常なプレーであったのだろう。

百歩譲って、直接の指示はなかったとしても、前途有望な若者をここまで追い込んだのは、間違いなく監督でありコーチである。

日常的なハラスメントと人格否定を繰り返し、学生を異常な行動に追いやった結果、その前途を潰してしまったことに対し、彼らはその重大な責任を自覚しているのだろうか。

絶大な権力、恐怖による支配

選手と直接コミュニケーションすら取ろうとしない監督は、まさに「雲の上」の存在となり、試合に出さないという「罰の力」で、選手を恐怖で支配していたと言える。

また、コーチや大学職員に対しては、人事担当の常務理事としての絶大な権力を背景に、やはり恐怖で支配していたのだと言える。

場違いなピンクのネクタイを締めていたことも、こともあろうに相手側の大学の名前を間違って連呼していたことも、大学側の会見で居丈高な司会者が批判の的になったことも、それらの原因はすべて同じである。

大学の職員の誰もが、内田監督に何の意見も言えず、忖度を重ね、彼の支配に飲み込まれているからだ。

ピンクのネクタイをしているのを見たら、注意をすればよいのにそれができない。大学の名前を言い間違えたら、そっと訂正してやればよいのに、そんな大それたことは誰もできない。

会見を一方的に打ち切った司会者も、大事なのは内田監督や組織を守ることであるから、被害者や加害側の学生のことなど「関係ない」し、問題に関心を寄せる報道陣や視聴者はうるさい存在でしかないのだ。

内田監督は、指導者であるにもかかわらず指導学生とコミュニケーションすら取らず、意図してかどうかはわからないが、強大な力を背景に恐怖で人々を支配してしまったがために、選手を萎縮させて「ありえない事態」を招いてしまった。

そして、その後の対応に際しても、誰も彼に意見が言えず、その結果、火に油を注ぎ続けている。その姿は、さながらピンクのネクタイを締めた裸の王様だ。

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〔PHOTO〕iStock

いま、われわれに問われていること

人間は誰しも間違いを犯す。

しかし、それを認め、周囲の意見を聞いて、自らを改めることへの勇気と謙虚さがあるかないか。

これが、事態を大きく分けることとなった。

偉くなればなるほど、人はそのような姿勢を失っていくようだ。

この一連の騒動から、何か得るものがあったとすれば、それはまだそのような姿勢を失っていない20歳の若者の姿を見たことだった。

彼からは本当に多くのことを教えられた。

そして、一度は過ちを犯してしまった若者を、今後周囲や社会がどのように支援し、受け入れていくか、今度はわれわれの側の姿勢が問われる番である。

そのために、まずメディアは、当該選手の名前や顔の大写しを繰り返し垂れ流すことをやめるべきだ。

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