徳島・渡大生、J2日本人得点王の涙。23ゴールを記録も、届かなかったJ1昇格PO

徳島・渡大生、J2日本人得点王の涙。23ゴールを記録も、届かなかったJ1昇格PO

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  • 更新日:2017/11/21
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徳島ヴォルティスのFW渡大生。試合終了後はぼう然と立ち尽くしていた【写真:Getty Images】

最終節、試合終了間際に激変した展開

劇的な結末となった19日の明治安田生命J2リーグ最終節。試合終了間際に喫した失点で東京ヴェルディに屈し、王手をかけていたJ1昇格プレーオフ進出を逃した徳島ヴォルティスで、異彩を放ったのがFW渡大生だ。ヴェルディ戦でも一時は同点とするボレーを決めた24歳は得点ランキングで2位、日本人では最多となる23ゴールをマーク。オフの移籍市場で間違いなく脚光を浴びそうな、176センチ、62キロのボディに異能の得点感覚を宿したストライカーの思いに迫った。(取材・文:藤江直人)

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ベンチの前でぼう然と立ち尽くすしかなかった。リザーブの選手たちの表情を見ただけで、志半ばで夢が散ったことがわかった。徳島ヴォルティスのFW渡大生は、涙をこらえながら自らを責めた。

「すごく責任を感じています。1点目を取ってから、2点目を取れるチャンスが僕にあったので。そこで決めきれないのがいまの僕の実力。チームに最後まで迷惑をかけた、というのが率直な思いです」

4分間が表示された後半のアディショナルタイムに突入した直後から、タッチライン際でリザーブ組が大きなジェスチャーを見せ始めた。誰もが両手を大きく振りながら、前へ、前へと伝えている。

直前の後半43分に、左コーナーキックから生まれた混戦のなかで、東京ヴェルディのMF内田達也に勝ち越しゴールを押し込まれた。もっとも、この時点ではJ1昇格プレーオフに進出できる可能性をまだ残していた。

全11会場で午後4時にキックオフされた19日の明治安田生命J2リーグ最終節。すでに湘南ベルマーレとV・ファーレン長崎がJ1への自動昇格を果たし、4チームがトーナメント形式で残り1枠を争うJ1昇格プレーオフへも、名古屋グランパスとアビスパ福岡がすでに進出を決めていた。

残るは2枠。試合開始前の時点でヴォルティスとヴェルディが勝ち点67で並び、得失点差で前者が5位につけていた。両チームを勝ち点1ポイント差で松本山雅FCが、さらに1ポイント差でジェフユナイテッド千葉が追う展開で90分間は進んでいった。

ベンチには京都サンガにリードを許していた松本と、横浜FCからなかなか勝ち越し点を奪えなかったジェフの戦況がリアルタイムで伝えられていた。このまま終われば、順位こそ6位にひとつ落とすものの、2013シーズン以来となるJ1昇格プレーオフ進出を決められる。

しかし、サッカーは時として信じられないようなドラマを生み出す。後半アディショナルタイムに入り、ジェフのキャプテン、DF近藤直也が起死回生の勝ち越し弾を頭で突き刺した。

「僕が決めていればというのが何回もあった。そこに尽きると思います」

このままではジェフが6位に食い込み、一転してヴォルティスは7位で涙を飲んでしまう。まさかの一報をすぐに共有できたからこそ、ヴォルティスのベンチはジェスチャーで「攻めろ」と伝えた。

非情にも祈りは届かなかった。ヴォルティスのリカルド・ロドリゲス監督をして「サッカーというのは非常に残酷なスポーツ」と言わしめた通りの、悪夢のような結末が待っていた。

ベンチに最も近い場所で終戦を迎えたからこそ、渡は動くことができなかった。試合終了後の挨拶の列にもなかなか加われなかった心境を、24歳のエースストライカーは必死に言葉で紡いだ。

「何て言うんですかね……頭が真っ白というか、終わったんだなと。負けた後に言うのはあれなんですけど、本当に負けるゲームじゃなかったというか、勝てるチャンスはいくらでもあったし、そのなかで僕が決めていればというのが何回もあった。そこに尽きると思います」

もっとも、前半31分に喫した失点を取り戻し、ヴォルティスに勇気と活力を与えたのも渡だった。後半開始早々の4分。今シーズンの戦いで大きく花開いた、点取り屋の嗅覚が体を突き動かした。

左サイドからキャプテンのMF岩尾憲が送ったクロスが、MF安西幸輝に跳ね返された。高い位置でセカンドボールを拾ったのは、ポジションを前へ上げていたDF藤原広太朗だった。

すかさず藤原が右サイドへ開いていたDF馬渡和彰へパスを送る。この瞬間に、脳裏にはゴールまでの青写真が鮮明に描かれていたのだろう。ペナルティーエリアのなかへ向けて、渡が一気にスピードをあげて走り込んでくる。

あうんの呼吸で、馬渡がニアサイドへ低いクロスを入れる。ボールウォッチャー気味になっているDF畠中慎之輔の死角で気配を消していた渡は、スプリントを駆けるコースを小さく右へ変えて、畠中の右側から突然現れるかたちで右足を伸ばした。

クロスの落ち際を的確にとらえた強烈なボレーが、ゴールネットを揺らす。虚を突かれた畠中はその場にひざまずき、ゲームキャプテンのDF田村直也が天を仰ぐかたわらで、ボールを拾い上げた渡はセンターサークルへと再びダッシュしていた。

J2日本人得点王になるも「本当にチームに申し訳なくて」

試合を振り出しに戻す技ありの一撃は、渡にとって今シーズンで23個目のゴール。J2得点王となったFWイバ(横浜FC)には2つ及ばなかったものの、日本人のなかで断トツの数字だ。

J2が22チームによる2回戦総当たりの42試合制となった2012シーズン以降で、年間20ゴールを超えた日本人選手は、26ゴールをあげた2014シーズンのFW大黒将志(京都サンガ)しかいない。

各チームの実力差が縮まり、戦国状態のリーグと化したいま、J2の舞台で20ゴール以上を決めるのは決して安易な仕事ではない。

それでも渡は満足するどころか、自らを責め続けた。その後もチャンスがありながら、決めきれなかった。ストライカーのプライドが、渡自身が描く独特の哲学が、それらを許せなかった。

たとえば後半13分。左コーナーキックの流れから、岩尾が緩やかなクロスを入れる。これをMF杉本太郎が巧みにスルー。ボールはファーサイドでフリーだった渡の目の前に飛んできた。

あまりにも絶好のシチュエーションだったからか。トラップが乱れ、ボールを自らの腹部に当ててしまう。それでも必死に右足を伸ばし、こぼれ球をとらえたが、一瞬のロスのうちに間合いを詰めてきたヴェルディのGK柴崎貴広にセーブされてしまった。

3分後にはFW山崎凌吾とのワンツーで抜け出し、ペナルティーエリアの外から左足を一閃する。強烈なミドルシュートはしかし、柴崎のほぼ真正面に飛んでしまった。

「僕はチームに(点を)取らせてもらっているフォワードで、チームに感謝しながらプレーしていますけど、今日みたいに大事なときに点が取れないようじゃ本当にチームに申し訳なくて。決して綺麗ごとを言うわけじゃないけど、このチームでもうサッカーができないのがすごく悲しいし、寂しい」

リカルド・ロドリゲス監督が就任し、進化したヴォルティス

渡が決めた23ゴールのうち、ペナルティーエリアの外から決めたのはひとつだけ。相手ゴール前で異能と呼んでもいい嗅覚を発揮しながら、泥臭いゴールを積み重ねてきた。
右利きだが左足でも5ゴールを決め、頭で決めた8ゴールのなかには、大分トリニータとの前節の後半終了間際に叩き込んで勝利を手繰り寄せた、起死回生のダイビングヘッドも含まれている。

「でも、決勝ゴールというのは少ないんです。そこが本当に弱いところだと思っていて……」

ヴォルティスを勝利に導いた、いわゆる決勝点は6つ。同点に追いつき、勝ち点1をもたらしたゴールも5つを数える。前半戦を終えた段階で、それまでの昨シーズンの12ゴールを超える14ゴールを量産し、キャリアハイを更新しても常にさらに上を目指してきた。

「チームの勝利が一番の優先順位なので。自分のなかでいろいろと試合に対する基準があって、そこに対していつもアプローチとインセンティブをしているので。僕個人というよりもチームをいかにして勝たせるか、というのはずっと僕のなかにあるので。だからこそ、今日は悔しいだけです」

渡自身にとっては、J1昇格プレーオフ進出を逃すのは3度目になる。広島皆実高校から2012シーズンにギラヴァンツ北九州へ加入。柱谷幸一監督に率いられた2014シーズンには、チームは5位に食い込む大健闘を演じた。

しかし、ギラヴァンツがJ1ライセンスをもっていなかったために、規定によってプレーオフそのものの出場がかなわなかった。状況が改善されないまま臨んだ翌2015シーズンを7位で終えたところへ届いたのが、ヴォルティスからの完全移籍のオファーだった。

「どんなかたちでも上へ行ける自信はあったけど、そのなかで徳島が僕を拾ってくれた。何をもっていいサッカーと呼ぶのかはわからないけど、今年は見ている人もやっている僕たちもすごく充実したサッカーができたと思ったので、それに対して(J1昇格プレーオフへ)行けなかったがすごく悔しい」

スペイン人のロドリゲス監督を迎えた今シーズン。ボールをしっかりつなぐスタイルを標榜したヴォルティスは、前線により多くの選手を配置するシステムを採用したことと相まって、相手ゴール前におけるチャンスが飛躍的に増えた。

総得点71は、名古屋グランパスの85に次ぐリーグ2位。ロドリゲス体制下で急成長を遂げ、その約3分の1を叩き出す存在になっても、渡は決して満足していない。ゴールを決めた試合で負けたのは、ヴェルディ戦が今シーズンで2度目だったにもかかわらず、だ。

「もともと勝ち切れる試合で、僕が点を取っていなかったので。今シーズンずっと言っていることですけど、勝ち切れるフォワードになれなかった。そこは本当にチームに対して申し訳なくて。結果として20ゴールは超えましたけど、その倍以上は外しているので」

2017シーズン限りで切れる契約。24歳で迎えた分岐点

もっとも、周囲からの評価は別だ。レベルが上がったJ2で23ゴールをあげ、しかもまだ24歳と伸びる余地を残したフォワードは、シーズンオフの移籍市場でおのずと注目される存在になる。

「本人にとっても、地方の中規模クラブにとってもよかったことですし、そういったことで(渡が)市場にあがってくるのは普通のことだと思っています」

ヴォルティスの岡田明彦強化部長は、クラブの躍進ととともに急成長した渡に表情を崩しながら、続投が決まったロドリゲス監督のもとで捲土重来を期す来シーズンへ向けて、今シーズン限りで契約が切れる渡を引き留めたいと今後の方針を語った。

「攻撃的で躍動感のあるサッカーを継続して、この悔しい思いとともにしっかりと上へ行けるようにやっていくなかで重要な選手なので、そこは引き続き話をしていきたい」

仮定の話ながら、もしJ1クラブからオファーが届けば――夢半ばで戦いが終わったいまは、何も考えられないとしながら渡は声を振り絞った。

「いまはなかなか先のビジョンというのは考えられる状況じゃないので……ただ、今年やってきたことが新しいステップへつながる可能性があるのならば、そこはひとつの優先順位として選択肢のなかに増やしますけど、本当に今日は『悔しい』のひと言なので」

大学への進学を考えていたところへ、ギラヴァンツからオファーを受けたことで幕を開けたプロへの挑戦。絶対に上へ行ける、はいあがってみせると誓いながら己を磨き上げ、6年目で強烈なインパクトを残した異能のストライカーが、サッカー人生のターニングポイントを迎えようとしている。

(取材・文:藤江直人)

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