日本女性が果敢に挑戦、ロシアの和食レストラン

日本女性が果敢に挑戦、ロシアの和食レストラン

  • JBpress
  • 更新日:2017/10/12
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ラーメン・居酒屋・バー「KU」の店内。ガラスで覆われた店内は、和食店とは思えない明るさで、酒類を飲むのが憚られる。これも、現代ロシア人の求める健康志向にマッチした店舗デザインであり、ノボシビルスクではすでに集客効果は実験済みと経営者のイワノフ氏は語っていた。

ロシア経済が爆発的な右肩上がりを示した時期ははるか昔に過ぎ去ってしまったが、現在においてもインフレ率、失業率、各種商品の価格上昇率など、経済統計数字には国家コントロールが効いていて、ロシア国民の生活にはそれなりの余裕が感じられる。

もちろん、ロシア経済の中心地であるモスクワと地方都市、特にシベリアの諸都市では経済状況は大きく異なる。

とはいえ、筆者自身の印象として、日本政府のウラジーミル・プーチン大統領への協賛策で日本企業が80社も参加した7月のINNOPROM展で訪問したエカテリンブルク、極東案件で9月に出張したウラジオストクなどは、大変な好況を示していて、いろいろな分野に新規民間企業の参入がみられた。

特に諸都市で驚くような発展を遂げているのは高級飲食業であり、今やロシアのどの100万人都市を訪問しても、西欧諸国に負けないレストランに出会うことができる。

本稿では、モスクワの飲食業界を例に取り、和風業態における新規参入2店舗の事業活動をご紹介しようと思う。

この時期に新しい和風業態が誕生するということは、日露関係が安定的に推移しているという証拠でもあり、安倍晋三政権の作り出した大きな対露友好の流れの中で誕生した、日露の結びつきの1つの具体例と言えよう。

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ラーメン・居酒屋「KU」

シベリアの入り口、ノボシビルスクで幅広くレストラン業を営むデニス・イワノフ、白浜千鶴子ご夫妻。

イワノフ氏はシベリアのレストラン王と言われ、各種業態にわたるレストランを30店舗、さらに空港でのVIPラウンジ、ケータリング、料理学校と飲食業のあらゆる方向に進出している。

筆者も何度かノボシビルスクのお店を訪れ、「Beerman」ではインハウスブルワリーで作られたビールを味わい、「SALT」レストランでは本格的なフランス料理に舌鼓を打った。

どの料理も完成した味つけで、ここがノボシビルスクとは信じられなかった(失礼!)

ノボシビルスクではイワノフ氏のレストランにお邪魔しないといけない理由がもう1つある。奥様の白浜さんにお会いするためだ。

モスクワやサンクトペテルブルクと比べ、ノボシビルスクには日本人は少ない。その数少ない日本人の1人が白浜さんである。

彼女からノボシビルスク地区のニュースを聞いたり、飲食業界の傾向をうかがう。これはシベリアで仕事をする場合、非常に役に立つ。

白浜さんは、イワノフ氏と結婚される前、日露青年交流センター派遣の日本語講師や日本センターのスタッフをされていて、日本の公的組織との連絡も密である。まさにノボシビルスクの情報の要と言えよう。

1つ疑問に思っていたのは、白浜さんの存在にもかかわらず、和食業態がイワノフ氏の運営レストランの中にないこと*1。

それをイワノフ氏に聞くと、「時間の問題だよ。 今、モスクワで物件を探している。 見つかれば明日にも和食レストランを始めるよ」とのことであった。

*1=イワノフ氏によると、最近ノボシビルスクに中華風居酒屋を一軒開いたよ、ということで、これは和洋折衷のようである。

そんなイワノフ氏、白浜さんのカップルが満を持してオープンした和食レストランが、「KU」である。KUとは「喰う」という日本語だ。

10月のある日、白浜さんをよく知るモスクワ日本センター所長の浜野氏、ジャパンクラブ(日本商工会)事務局長山田氏と共に、早速開店のお祝いに駆けつけた。

レストランはそのロケーションで顧客の性格が決まり、店の雰囲気が決まっていく。今回、KUが設営された場所、モスクワ・スモレンスカヤという場所は、目の前が1951年に建設されたロシア外務省の巨大な本庁舎になっている。

当然、日本を知る外交官の訪問が期待される。また、レストランに近い第1環状線周辺には、多くの日本企業のモスクワ支店が点在しており、KU訪問にはすこぶる便利である。

また、何よりもKUの入る建物は現在改装工事が行われている「AZIMUT Smolenskayaホテル」であり、ホテルが稼働した時には、宿泊客の入店も期待できる。

言ってみれば、繁華街の和食レストランと言うよりも、官庁街のミーティングスポット、という感じである。

さて、KUの業態だが、ショップカードには「ラーメン・居酒屋・BAR」とある。筆者が知る限り、店に「居酒屋」という名を配した和食店はモスクワで初めてだ。

白木作りのテーブルと椅子、さらには厨房の頭上を飾る木製のオーナメント。「居酒屋」というにはお洒落すぎる、とも感じるが、日本人にもロシア人にも抵抗のない店舗デザインだ。

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厨房内部の様子。ラーメンという、ロシア人にはまだ馴染みのない料理をどのようにロシア人に紹介していくか。小皿料理を3種注文し、酒類を楽しむ。そして、その最後をラーメンで締める。こんなプレゼンテーションに決まったそうだ。そうなると、ラーメンは男の食事。調理人も全員男性を採用した。

メニューで目を引くのは、やはりラーメンの部だ。何せ、ここはモスクワで初めての本格ラーメンが食べられる店なのだ。

スープは塩、醤油、味噌、豚骨、そして濃厚なスープのつけ麺。これに、自家製麺で作られた中華麺がほどよい茹で具合で提供される。

このあたりの細かな指導は、日本から来られた専門家高橋みつお氏が厨房に入り、厳しく教え込まれている。価格はどのラーメンも580ルーブル(約1200円)。さらに、煮卵、メンマなどのトッピングを別注文することができる。

今回は説明を略すが、居酒屋の小皿メニューも充実している。どの皿も日本人には懐かしさがいっぱいで、とても席を立つ勇気は生まれてこないのではないかと心配する。

イワノフ氏に聞くと、KU2号店を含め、壮大なモスクワ展開計画があるとのこと。お2人の成功を心よりお祈りする。

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経営者白浜氏を囲み、「KU」開店のお祝いに駆けつけた筆者と関係者。経営者のデニス・イワノフ氏は多店舗で名を馳せたレストラン事業家なので、モスクワにも2号店ができるのは時間の問題だろう。調理場のスタッフには、2号店の研修生も含まれているようだった。

和風カラオケバー清水@レストラン青空ラウンジ

本年6月、筆者の友人で、某大学で教授をしているXから連絡があった。「教え子がロシアでバーを開きたいと言っている。君の体験を教えてやってくれないか?」。

筆者は、2006年に「BarHIBINO」という店をモスクワに開き、日本人資本、日本人経営によるバー第1号となった。

事情があって、短期間でこのバーは閉店となったが、ロシアでのバー経営は、本店にあたる銀座3丁目に作った「ワインバーHIBINO1882」とは随分違ったものになった。

Xの希望は、筆者の体験談で、彼女のモスクワ進出計画を諦めさせようという目論見だった。

7月に本件の主人公である清水恵美子さんに東京でお会いした。彼女の決意はすでに固く、外部からの雑音は耳に入らない様子だった。

「すでにカラオケセットも購入し、ハンドキャリーで現地に持ち込むつもりです」

ロシアで貸店舗を契約し、内装を施し、スタッフを雇用して営業に持ち込むのは、本当に大変なことだ、せめて営業中の和食レストランの一部を借りて、経験を積むのがいいのではないか、という筆者のアドバイスに、彼女は大変良いお話しを伺いました、と礼をいい、話は終わった。

それから2か月、9月中旬のモスクワ出張時、清水さんがレストラン青空ラウンジの座敷を借りて、「和風カラオケバー清水」をスタートしたことを聞き、すぐさまお店に急行した。

モスクワに和食レストランはかなりあるが、カラオケを楽しめる店は多分皆無だろう。

モスクワで働く日本人駐在員は、カラオケとなると、レーニン丘にある「コルストンホテル」に出向き、中国製カラオケマシンにある曲を歌う。

清水さんはこれを見て、家族ともども入れて、最新ナンバーが歌える店を目指して店をオープンしたという。

彼女がハンドキャリーして持ち込んだ日本製カラオケ装置には、9万曲が内蔵されているというから、事実として、彼女の狙いは実現したと言えるだろう。

毎晩、清水さんは和服を着て、青空ラウンジのホールに立つ。

カラオケ目当てのお客様だけでなく、レストランに来られる食事客にも、これまでモスクワでは見られなかったママ顔で挨拶を交わす。

これで確実にモスクワの夜は一段アップグレードしたと感じるのは筆者だけではないだろう。ただし、本当にモスクワの難しさ、怖さを知るのはこれからである。清水さん、頑張れ。

政府間の日露経済交渉が停滞気味なこの時期に、筆者が知るだけでも2軒の新規飲食店がモスクワにオープンした。

KUはロシア人による国内投資、カラオケバーは、清水恵美子さんによる日本からの投資と思われるが、ともかく日本をテーマに、民間投資が動き始めた。

リスクに敏感な民間資本が、モスクワという土地への投資を考えるためには、ロシアの経済的安定が何よりも大事である。

その意味では、最近のロシアは「悪くない」と言えるのではないだろうか。新たにロシア進出を狙っている日本企業は、聞いているだけでも複数ある。やっと日露暗黒の時代を終えて、投資の時代に入りつつあるのだと信じたい。

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「カラオケバー清水」の清水恵美子ママと「レストラン青空ラウンジ」料理長沼本氏。モスクワでこんな写真が撮れるようになったこと自体、大変な進歩である。

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