天下り先をかばっている? 商工中金の不正が罪に問われない可能性も

天下り先をかばっている? 商工中金の不正が罪に問われない可能性も

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  • 更新日:2017/11/14
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不正融資問題の調査結果について、会見で説明する商工中金の安達健祐社長(左列中央)

経理書類を改竄・自作し、国のお金をだまし取っていた政府系金融機関の商工組合中央金庫(商工中金)。国は刑事責任を問うべきだ。

商工中金が自主調査の結果を公表した10月25日。元経済産業省事務次官の安達健祐社長が記者会見で神妙にこう語った。

「トップとして極めて重い責任があり、適切な時期に社長を退く。解体的出直しに全力で取り組むことで責任を果たし、可能な限り早く交代したい」

悪用した制度は「危機対応業務」。急な景気変動で業績が悪化し資金繰りに困る中小企業に融資できるよう、国が利子の一部を補給し、焦げ付いても損失の8割を補償するものだ。

2008年の制度開始以降、商工中金は計12兆円を融資し、国からもらった利子補給金は450億円、補償金は900億円に上る。

だが、商工中金は基準に満たない企業にも経理資料を改竄・自作してじゃんじゃん融資していた。実績を上げて存在意義を示そうと、経営陣が過大なノルマを課したからだ。不正融資は2646億円分で職員444人が関与。疑わしい分も含め36億円を国に返還する。

さらに驚くのは、経営幹部が主導する形で不正をもみ消していたことだ。14年末、不正が最も多かった池袋支店(東京)で経理資料の改竄などが多数発覚。報告を受けた経営幹部らは私文書偽造罪となるのを避けるため、改竄した顧客名義の資料を「商工中金作成の内部資料」と偽り、融資基準を満たさないものも満たすと「判定」。当時の副社長らの指揮のもと、コンプライアンス統括室、監査部、組織金融部などの中枢部門が総出でウソの報告書を作って国に提出していたのだ。

ウソの資料で国のお金をだまし取る行為は、学校法人「森友学園」による国の補助金不正受給事件にも通じる。

前理事長の籠池泰典被告らは工事費などを水増しした契約書で5644万円の補助金をだまし取ったとして、詐欺罪で起訴された。捜査段階では、補助金適正化法(適化法)違反での立件も検討されていたとされる。

詐欺は被害者を誤信させたうえで不法に利益を得た場合に適用される。適化法は「偽りや不正の手段」によって国の補助金を受給した段階で適用される。適化法の法定刑は5年以下の懲役または100万円以下の罰金。詐欺だと10年以下の懲役と重くなる分、だれがどう利益を得たかを具体的に立証することが求められる。

佐久間修・名古屋学院大学教授(刑法)は商工中金について、「不正受給したお金が『国の補助金』にあたれば、適化法違反にあたる可能性が高い」と話す。

だが、経産省によると、危機対応の利子補給金や補償金は複数年度にまたがって使われるため、「出資金」として拠出していた。使途が明確で返すことがない点などで補助金と性格は変わらないが、法律上の「補助金」にはあたらないため、適化法違反に問われることは免れそうなのだという。

元東京地検検事の落合洋司弁護士はこう語る。

「もらえないはずのお金を受け取っており、詐欺などが成立する可能性も十分ある。ただ、本来は『被害者』である国が被害を特定し、被害届を出したり告訴したりするのが筋。被害者の捜査協力を得られないと、捜査機関が動きにくい面もある」

お金をだまし取られた側の国に刑事責任を問う意思はあるのか。経産省にきいてみると、中小企業庁金融課の担当者は「今はとくに議論はしていない。総合的に検討して判断するでしょう」と話すのだった。

元経産官僚の岸博幸・慶應大学教授が言う。

「森友学園はアウトで商工中金がセーフでは、国民は納得しないのではないか。刑事責任を問う姿勢が国にないなら、経産省が元事務次官を歴代社長に送り込んだ天下り先をかばっていると思われても仕方ない」

(朝日新聞記者・藤田知也)

※AERA 2017年11月20日号

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