宝物を失くした子供に何を教える? 日常でできる金融教育

宝物を失くした子供に何を教える? 日常でできる金融教育

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2018/10/12
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ある日、我が子が泣きながら私の所にやってきた。どうしたのかと聞くと、お気に入りの物を入れていた袋をなくしてしまったらしい。話を聞いてみると、外で落としたのではなく、家のどこかにはあるようだが、一緒に探しても見つからなかった。

中に入れていたのは、公園で拾ったドングリやキラキラのゴム、指人形や折り紙で作ったメンコなど。宝物を一気に全てなくしてしまったことが大変ショックだったようで、その日はずっと泣いていた。しかしこの出来事は、金融教育という観点でいえば、最高の教材でもあった。

「すべての卵を一つのカゴに盛るな」

投資の世界ではいくつもの格言があるが、その中でも有名なものに「すべての卵を一つのカゴに盛るな(Dont put all your eggs in one basket)」というものがある。

1つのカゴにすべての卵を入れておくと、仮にそのカゴを落としてしまった時にすべて割れてしまうが、いくつかのカゴに分けておけば、仮に1つのカゴを落としてしまっても、他のカゴは影響を受けないというものである。

この格言を投資の世界に当てはめるとこうなる。全財産をA社の株式だけに投資していたとしよう。ある日、A社の不祥事が発覚し、A社が倒産してしまったとする。そうなると、A社に投資していた全てのお金を失ってしまう。

もし、全財産を5等分し、20%をA社の株式、残りの80%も20%ずつB社の株式、C国の債券、D社の運用する投資信託、E社の発行する社債などに分散して投資しておけば、仮に同じようにA社が倒産してしまったとしても、一度に全財産を失うことはないということだ。

今回の出来事は、子供に「分散すること」の重要性を教えるのにはとてもよい出来事だったというわけだ。

我が家にはオモチャの収納スペースはいくつも存在している。子供専用のタンスもあれば、オモチャ箱もある。遊び終わったあとにそれぞれ所定の場所に片づける癖さえ付けておけば、仮にオモチャ袋をなくしてしまったとしても、一度に全てをなくすことはなかったであろう。

モノだけではなく時間も分散せよ

まだ筆者の子供達に教えるのには早いが、分散は「モノ」だけではなく「時間」についても考えることが重要だ。

筆者の持論でもあるが、何人たりとも未来は正確に予測できない。時折、相場を先読みして儲けようというようなセミナーや教材を目にするが、筆者はそれらに対しては懐疑的である。

たとえば、投資をする際に、一度に全ての資産を投資するとしよう。将来は誰にも予測はできないため、投資した翌日に急騰するかもしれないし、はたまた暴落するかもしれない。そうなると、もはやそれは丁半博打になってしまう。相場というものは波を描きながら推移するため、一度に全資産を投資することは運任せということになる。

そこで、時間も分散することで、イチかバチかの賭けにはならなくなる。たとえば、毎月1日に同じ額を定期的に投資する。これにより、相場の上下とは関係なく、機械的な投資行動がとれるため、計画的な資産運用が実現される。

最低限身に付ける金融リテラシー

金融庁の金融経済教育研究会が発行している『最低限身に付けるべき金融リテラシー(知識・判断力)』には4分野・15項目があり、そのうちの1つに「資産形成における分散の効果の理解」という項目がある。

しかしここではまず、リテラシーの横に「知識・判断力」と書かれていることに注目したい。金融教育を語る際、”金融リテラシーの向上”という言葉がよく使われるが、筆者は「知識」を本当の意味で身に付けたり、緊急事態に直面した時に問われる実践的な「判断力」を身に付けるためには、どうしても時間がかかると考えている。

まずは本やメディアから情報を取得し、情報の内容を表面的に理解する。そして、その情報に基づいて行動し、行動に対する結果を受けて本当の意味で情報を体感する。それを繰り返していく中で、耳や目から入った情報は知識に変わっていく。また、緊急事態に直面したり、未知の体験をしたりすることを繰り返すことで、実践的な判断力がついていく。

つまり、「情報」を「知識」に昇華させ、実践的な「判断力」を身に付けるには、時間がかかるものなのだ。子供の頃からお金について学ぶ機会のない日本において、大人になってから金融リテラシーを身に付けようとしては、身に付くまでに何度かの失敗を繰り返すことになってしまう。それが詐欺被害や、不要な金融商品の購入などになって表面化しているのだろう。

分散に限らず、やはり早い段階から情報を与え、大人になるまでに試行錯誤を繰り返すことで、不安なく独立して社会で生きていけるようになるのではないか。

リスク低減の為の分散という考え方

今回の出来事を、もう一歩引いて考えてみよう。モノと時間を分散することで、何が起きたのだろうか。答えは「リスクを低減することができた」である。

リスクという言葉は日常会話の中ではネガティブな意味で使われることが多い。「それはリスクが高いよ」と言えば、何か悪いことが起きる確率が高いことを指しているだろう。しかし、実際の意味は、リターンの幅が狭まることをリスクが低いという。

これまでに使った例で考えてみよう。1つのカゴに全ての卵を盛って運べば、1回で運び終わる(リターンが大きい)が、カゴを落とせば全ての卵を失うことになる。しかし、いくつかのカゴに分けて運べば、運び終わるまでに何度か往復しなくてはいけない(リターンが少ない)代わりに、仮に一つカゴを落としてしまったとしても、全ての卵を失うことはない。オモチャも同じことだ。

このように、子供の日常には大人が学ぶような金融リテラシーのエッセンスが数多く隠されている。子供と一緒に暮らしながら、生活の中で一緒にお金について学んでいってはいかがだろうか。

余談だが、なくしたはずの袋は後日、無事見つかった。

【連載】0歳からの「お金の話」
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