『スター・ウォーズ』ヲタの市川紗椰がハマった神話の世界

『スター・ウォーズ』ヲタの市川紗椰がハマった神話の世界

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/01/12
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モデルの市川紗椰さんが、毎月数冊刊行される講談社現代新書の中から特に読みたい本を一冊を選び、読んでもらう新連載「市川紗椰が現代新書を読んでみる」。

2017年12月刊は、西部邁『保守の真髄』・山本譲治『炎の牛肉教室!』・後藤明『世界神話学入門』・鈴木達治郎『核兵器と原発』の計4冊。連載第1回目となる今回、市川紗椰さんが選んだのは『世界神話学入門』でした。

私が神話に魅かれる理由

第1回目ということで、どのタイトルを選ぶか結構悩みました。牛肉がとても好きなので『炎の牛肉教室!』にしようかとも思ったのですが、最終的にテーマに惹かれて『世界神話学入門』を選びました。帯が知的で素敵ですよね。ちなみに『炎の牛肉教室!』の方も楽しく読んでます(笑)。

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ジョーゼフ・キャンベルの『神話の力』という本がありますが、この本を中学生の時に読んでいて、2~3年前にも再読しました。中学で流行ってたんですよね。たしか『スター・ウォーズ』エピソード1~3の映画が上映されていた頃だと思うんですけど、この本の中に『スター・ウォーズ』と神話の関係に触れている部分があるんです。とても興味を持ったことを覚えています。

小・中学生の頃はアメリカに住んでいたのですが、アメリカは18世紀になって建国された新しい国なので、いわゆる「太古の神話」みたいなものがないんです。ネイティブ・アメリカンの神話はいっぱいあるんですけどね。日本には『古事記』や『日本書紀』に書かれているような神話があり、そこがアメリカとの大きな違いですね。

『世界神話学入門』の主要なテーマである「世界中の神話には共通点がある」という指摘にはとても興味を持ちました。たとえばギリシャ神話だったら物語やキャラクターにも馴染みがありますが、世界中の地域でそれぞれ少しずつ異なった神話が語られている。具体的なエピソードもたくさん記されていて面白かったです。

冒頭の1~2章で、人類の移動と神話の類型の相関関係を科学的に追跡しているのですが、ここは読んでいてとても新鮮でした。神話は科学的に説明できないものを説明するものじゃないですか。それを、遺伝子やDNAの技術を使ってその起源を解析しようとする。神話に対するイメージとは対極的な話から本書は始まっているんですね。

その後の3章以降で、この本の大きな軸になる「古層ゴンドワナ型神話」と「新層ローラシア型神話」の2つの類型について説明がされています。ゴンドワナ型は、ストーリー性がなくて人類の原型的な思考が反映されている神話。ローラシア型は、世界や人類の究極の起源を問い、全体的に物語性の強いものが多い神話です。

ゴンドワナ型は脈絡がない話が多いと書かれているものの、シンプルで面白い話が多くて「へ~!」って思いながら読み進めました。たとえば、太陽が子供を食べるみたいな神話の紹介があって、ここが印象に残ったのか本に折り目をつけてます(笑)。太陽の暴力的な感じが気になったのかな。神話って、割と暴力的な話が多いですよね。

ほかにも、人間が土中から出てきたとする神話が世界中にあるという話に「?」と思ったり。奇妙な内容のものが多くて、答えになってないなと感じるものもありますね。でも、月とか動物とか、多様なキャラクターが出てくるのは面白かったです。

神話は物語として普通に面白い

一方のローラシア型は、ストーリーがしっかりしていて入り込みやすいものが多いです。原初巨人や世界卵、釣針神話などが紹介されていますね。そして改めて思ったのですが、同じキャラクターが別の神話に出てくるとスピンオフみたいな感覚で読めて、楽しいですね。「マーベル・コミック」みたい、というか(笑)。

ローラシア型の神話には社会の不平等を正当化する目的があった、という指摘も本書の中にありました。当時の人は、「死」とか「不平等」に対して、何かストーリーを紡ぎだして納得しないと辛かったのでしょうね。そして、どの神話にも「不死」である神との対比の中で、人間は人間として分をわきまえていこうというメッセージがありますよね。私もわきまえなきゃ、と思って(笑)。

世界中の神話で広範囲に見られるのが「洪水神話」だと書かれていて、読んでいて思い出したのは「ネットのデマ」についてです。仮にその情報が嘘でも、別の3つの場所でその情報が流れると真実になるという話を聞いたことがあって。洪水が本当にあったかどうかはどうでも良くて、複数の場所でその神話が語られていることに価値があるんですよね。

あと、最後の章のまとめが面白かったです。今の時代に神話は必要なのかというと、エンターテインメントとして面白いということはあるのかもしれませんが、そもそも現代は神話に答えを求めていないですよね。

そんな中、神話を通じて世界中が繋がっていると思うことで、許せるものがいっぱい増えるなということは感じました。排外主義的な考え方が台頭している今の時代には、「元をたどれば一緒」という考えはシンプルですけど大事ですよね。

一方で、たしかフロイトが言っていたと思いますが、「類似しているからこそちょっとした違いが許せない」というのが人間の性。隣の国の人ほど仲良くできない。「一部の人間の判断で他――それが動物でも人間集団でも――を抹殺することは自らの破滅につながる」(p270)というのは同感で、だからこそ、人類が真の意味で繋がりあうにはどうすれば良いか、その先の答えも知りたいなって思いました。

神話は物語として普通に面白いんですよ。最近ではゲームやアニメにも神話をベースにしたものが増えてますね。私が好きな『スター・ウォーズ』にも神話的な要素があって、普遍的な物語が背景にあるからすんなりと設定に入り込めるというのはあるでしょうね。

『スター・ウォーズ』について取材を受けることも多いのですが、何が好きかというと、ほどよく設定に穴があるところ。妄想を膨らませる余白があるというか。「”同人”の余地がある」という表現を良くするんですよ。

自分の中で「この話のサイドストーリーはなんだろう」とか「この人はどういう種族でどんな過去があって……」というのを考えて遊べるのが『スター・ウォーズ』なんです。世界観の懐が深いんですよね。まぁ、初期の作品に関しては特撮の技術が好きっていうのもあるんですけど。

『スター・ウォーズ』のストーリーはまさに王道で、ルーク・スカイウォーカーの英雄譚。そして、レイア姫が出てきたら男子が「可愛い!」と思うとか、ベタなお約束がしっかりしている。世界観がちゃんとしている作品は安心して楽しめますね。

やっぱり、人類共通の感性や考え方みたいなものがあると信じたいです。たとえば、月にはウサギがいるって言いますよね。日本や韓国、台湾とかもそう。アメリカにはウサギはいないんですけど、おじさんがいるんですよ。「Man in the moon」と言います。多分人間には、月に誰かがいると信じたいっていう共通の思いがあるんじゃないでしょうか。

人は皆そういう心を持っていると信じたいです。科学的には解析できないもの―――神話の魅力は、そういうところにあるのだと思います。

<連載第2回につづく>

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