三菱商事、東芝、メガバンク...大手企業を辞めた20代若手社員はどこに消えたのか? 先端テクノロジーに惹かれる若者たち

三菱商事、東芝、メガバンク...大手企業を辞めた20代若手社員はどこに消えたのか? 先端テクノロジーに惹かれる若者たち

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2017/11/17
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※写真はイメージです

現在、経営再建中の東芝。先日は同社が約48年続けたアニメ「サザエさん」の番組スポンサーを降板することが話題になったばかりだ。また、今月14日にはついにテレビ事業からの撤退を発表。全額出資小会社の東芝映像ソリューションの株式の95%を、中国の家電メーカー海信集団(ハイセンス)に約129億円で売却することが発表された。

東芝にかぎらず、かつて隆盛を極めた日本の家電メーカーが、2010年代に入り軒並み業績が悪化していることは連日ニュースを賑わせていることからも明らかだ。そうした背景もあり、20代の若手社員の中には、新卒入社から10年以内で転職しているケースも珍しくないという。

実はいま、家電メーカーにかぎらず、大学生の就職人気ランキング上位の総合商社や金融業界においても、若手人材の流出が止まらないのをご存知だろうか。

◆30歳で年収1000円超を捨てて転職

「南米某国の駐在先でかなり実績を残したこともあり、調子にのっていたと言えば確かにそうかもしれません。駐在先のチームの10歳年上の上司にかなり歯向かっていたら、東京の本社に戻ったタイミングで干され部署に異動しました。転職を決めたきっかけです」

そう語るのは、三井物産を3年前に退職した30代男性A氏。三井物産といえば、平均年収1361万円の高年収企業として知られる(四季報調べ)。就活生が選ぶ人気企業ランキングでも毎年上位にランキングする常連企業だ。事実、A氏も30歳の時点で年収は1000万円を突破していた。

「一度別業界の大手企業に転職しましたが、いまはスタートアップで働いています」

A氏のように、日本の大手企業の保守的な体質や不自由さに嫌気が差し、彼らの親世代が好む大手企業を飛び出す若手社員がいま珍しくないのだ。

では、彼らはどこで働いているのか。

転職先の一つが、FinTech系のスタートアップ企業だ。

「うちは簡単にいえばメーカー問屋。大手メーカーが製品していないニッチな部分やloT家電の製品化を得意としています。生活家電の問屋として家具・雑貨大手チェーン店やGMS・HC・家電量販店に商品を卸しています。いわゆる有名企業からの転職組はかなり多いですよ」

そう語るのは、株式会社SKRの流通事業部部長・高島宏行氏。

2014年に創業した同社は、初年度の売上1.8億円から販路を拡大し、今期売上は12億円になる見込み。最近ヒットしたのは、PICというGoProの簡易版のようなカメラだ。ペットの首輪につけたり、赤ちゃんのガラガラにつけると、これまで見れなかった世界を収めることができる。

同社が市場調査を兼ねて、製品購入型で出したクラウドファンディング「Makuake」でのプロジェクトではわずか35日で予算達成率300%を上げた。その後、大手家電量販店やカメラ店など、全国で販売を進め、わずか数か月で企画数全てを完売したという。

先日も、投資型クラウドファンド「FUNDINNO」で3000万円の募集を開始。募集は現在も継続中だが、すでに2900万円以上の出資を集めている。

では、なぜ大手企業出身者がスタートアップに集まるのだろうか。年収以外の大きな魅力がそこにはあるということだろうか。

◆総合商社出身のチームだからできたプロジェクト

現在、SKRの従業員数は16人。そのうち、三菱商事や三井物産などの総合商社やメガバンク出身の社員が10人勤めているという。どれも平均年収800~1000万円の大企業だ。

その背景を、代表の安智憲氏はこう語る。

「彼らが総合商社やメガバンク出身という強みを最大限に活かしてもらっています。もともと大手企業出身のメンバーで起業したこともあり、3年前に会社を立ち上げたときから、大きな組織にいて自由に動けないことに不満を持つ若手社員を説得し続けてきました。ほかにも大手IT企業出身の社員も数名います」

代表の安氏は、先進的な製品を扱える点と意思決定のスピードの早さが彼らを惹きつけたのではないかと分析する。

「先進的な商品の一つとして、今後弊社が力を入れる商品のひとつにWatsonという人工知能ロボットが導入された子供向けおもちゃがあります。ロボットに年齢を尋ねられたときに、使用者の年齢に合わせた会話をしてくれるロボットです。たとえば、『月と地球はどれくらい離れている?』という質問に対し、3歳児には『僕が行けないくらい』と答え、9歳の少年ならば、具体的に『38,440キロメートル』と答える。各年齢ごとに知っている情報量やコミュニケーションの仕方の集合知を使って会話をするのです」

コミュニケーションがデータベース化されていくことで年齢に応じた会話ができるというわけだ。

「膨大な会話のビッグデータ自体が高い商品価値を持ちます。3歳児との会話の情報データはマーケティングの上でとても参考になるので、そのデータ自体を売れるわけです。現在アメリカでIPOを準備しているCogniToysは、まさに”リアルドラえもん”といってよい商品をつくっています。

昨今普及が進みだしたスマホの秘書機能アプリよりも圧倒的に優秀で、ドライブレコーダーを入れてナビと一体化すれば、一人で運転する時の話し相手にもなってくれる。将来的にはドラえもんとかピカチュウのような日本の有名アニメキャラクターを本当にペットのように会話する社会が実現します。こういうイノベーティブな事業は若い方には興味深く映るのではないでしょうか」

まだ見ぬ未来を示す仕事。だが、それはどのスタートアップでも言えることでは? また、家電ならば資本力のある大手家電メーカーでも同じプロジェクトを実行できそうだが?

「たしかにそうです。そのため、彼らのキャリアを活かせる会社がより選ばれるのでしょう。日本の大手家電メーカーは、往々にして行動が遅く、いまだに消費財系のIoTが少ない。特に総合商社出身者は、海外とのパイプラインが多く、現地工場とのやりとりもとてもスムーズです。部品の工場を見つけてくるのが強ければ、こうした先進的な家電の開発が早く進むので、相性がとてもいいです。

事実、日本の大手家電メーカーが発注している中国の製造委託工場は数多くありますが、そこを退職したメンバーが立ち上げたある会社は、日本基準のクオリティをもった製品を作れています。こうしたルートを見つけてこれるのは、大手企業出身者ならではです」

日本の家電業界は、使わなくいいスペックを導入し続けた結果、価格は下がらず、コモデティ化が進行。消費者離れが起きてしまった。

◆ドンキの4Kテレビはなぜ売れたのか

高島氏によると、今年ヒット商品となったドンキホーテの4Kテレビは、「いらない機能を全部外したのであの価格で商品化できた」とブームを振り返る。

「結局、4Kでテレビが見れて、録画ができればいいという消費者のシンプルなニーズに沿った商品だったからヒットしたんです。今だに多くの人は家ではスマホをいじっていて、テレビでネットなんてやらないんです。ドンキのジェネリック家電はそこに目を向けた。機能が増えれば、半導体の価格が高騰し、原価が跳ね上がります。しかし、大手家電メーカーは冬モデル、夏モデルといったようにリニューアルを繰り返すことを前提にしているので、小さな差を常に生み出さなければいけない。結果、不必要な機能がどんどん追加されていったのです。差別化のための差別化ですよ」

そうした旧態依然とした家電業界の慣習と停滞が、若者をスタートアップに向かわせたと考えるのは、不自然ではない。

「いま、韓国の家電メーカーの開発チームは、日本の大手家電メーカー出身者だらけです。これでは仮に誓約書等で縛ったとしても技術の流出は止まらないでしょう。企業は人が創るのに、短期的なコストカットを行ったツケが回ってきて自己の首を絞めている。15~20年前のリストラ蔓延時は、必要に迫られてのことだったのでしょうが、現在は手段が良くなかったという反省に至っている。実はいま、サムスンの開発チームは東芝やSHARP出身の日本人だらけ。LG、美的は特に東芝の家電グループから移った人が多いんです」

有名企業の名前と年収を捨て、自由度の高いスタートアップに進む若手ビジネスパーソンたち。こうしたキャリアコースを歩む若者は、今後さらに増えていくのかもしれない。

<取材・文/牧野俊>

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