アレルギーについてわかってきた「常識を覆す意外な事実」

アレルギーについてわかってきた「常識を覆す意外な事実」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/05/27
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厚⽣労働省の推計によると、今、国⺠の2⼈に1⼈が何らかのアレルギーを持っていると⾔われる。⾷物アレルギー、花粉症、アトピー性⽪膚炎、気管⽀喘息……。アレルギー疾患はここ半世紀ほどの間に急増しているというのが各分野の共通認識だ。

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わずか数⼗年から100年程度で、人間が生物として大きく変化したとは考えられない。にもかかわらず明らかな異変が起きている。何らかの環境の変化が、現代病とも呼べるアレルギー症状を誘発していると考える方が自然だ。

変わる⾷物アレルギーの認識

⾷物アレルギーは世界的に増加傾向にあり、ショック症状が重ければ命にも関わる。当時、ピーナッツアレルギーが問題となっていたアメリカでは、2000年頃にアメリカ小児科学会がガイドラインを作成し、乳幼児期にピーナッツを食べると深刻なアレルギーにつながると発表した。

年々増加する子供の食品アレルギーを背景に、加工食品や調理済み食品の販売に対しての⾷品表⽰義務の厳格化が世界的に広まった。鶏卵や⼩⻨、⽜乳、エビ、カニ、ソバやピーナッツなど、多くの⾷品がアレルギーの原因物質=アレルゲンとして、⾷品表⽰義務を課されている。

食品アレルギーの予防には「できるだけアレルゲンの摂取を避けること」というのが、今までの常識であった。しかし近年、その常識を覆す事実が次々と出てきている。

アレルゲンを少量ずつ食べた方が…?

2015年アメリカアレルギー学会で、ロンドン⼤学のギデオン・ラック(Gideon Lack)教授が発表したのは、「アレルギーの原因となる⾷物を避けるより、アレルゲンを少量ずつ⾷べる⽅がアレルギー反応は起きない」という、これまでの常識を覆す衝撃の内容だった。

教授はピーナッツアレルギーに関する研究で、離乳期からピーナッツバターが使われている「バンバ」というおやつをよく⾷べるイスラエルの⼦供と、離乳期から幼少期にピーナッツを含む⾷品を避ける傾向にあるイギリスの⼦供に、アレルギー検査を行った。

その結果、ピーナッツを避けていたイギリスの子供の⽅が、ピーナッツを日常的に摂取していたイスラエルの子供よりも、ピーナッツアレルギーをもつ⼦供の割合が10倍も⾼かったのだ。

アレルゲンを避けている子供に、なぜアレルギー症状が多く出てしまうのか。教授は90年代に、アメリカで研究していた頃のことを思い出した。

それは、マウスの皮膚に卵を塗ると、皮膚を通して卵アレルギーを起こすマウスが現れることだった。そのマウスにその後、卵を食べさせるとアレルギー症状を引き起こすようになってしまうのだ。

そこで、イギリスの子供の生活環境を調べていたギデオン・ラック教授が注⽬したのが「ベビークリーム」だった。

当時イギリスの多くの⺟親が、おむつかぶれや乾燥肌などに使⽤していたベビークリームの中に、ピーナッツオイルを原料に使⽤しているものがあったのだ。

調べてみると、このピーナッツオイルを含んだベビーオイルを使⽤していた⼦供は、使⽤していない⼦供に⽐べて、7倍もの⾼い割合で経口摂取によるピーナッツアレルギーをもっていることが分かったのだった。

なぜこのようなことが起こるのか。

「経⼝寛容」という免疫の性質

私たち動物は、毒物や細菌、ウィルス、寄生虫といったものに対してか弱い。生命を守るために、そうした異物に接触した時に、危険な物質であるかどうかを敏感に見極め、異物であると判断すれば細胞レベルで攻撃する力が備わっている。それが、免疫である。

ただし私たちは、他の⽣命を⾷物として⾷べないと⽣きていけない。その為、⼝から⼊って消化器官を通るものに対しては、免疫は寛容になるという特徴がある。これは「経⼝寛容(免疫寛容)」という性質で、「これは⾷物である」と免疫系が認識すれば、アレルギー反応を起こすことはない。

免疫システムには大きく分けて2種類ある。免疫の働きを「活性化するもの」と「抑制するもの」。この両者のバランスにより、生命活動は維持される。このバランスは、免疫に対する負荷の違いにより変わってくる。

例えば、マラリアなどに感染する地域では、攻撃性の高い免疫を備える一方で、花粉など害のないものには非常に抑制的に働く。幼少期から感染症リスクの高いアジアなどの農村部では、アレルギー疾患の子供は極めて少ない。

本来安全なものを危険な異物であると認識し、免疫細胞が活性化することで身体の各部で炎症反応が起こることになる。これがアレルギー反応だ。

日本を含め都市化した先進国では、免疫への負荷が低いため、本来の調整機能に不具合が生じ、花粉などの人体に害のないものにも過剰に反応してしまう傾向にある。この傾向が強まれば、まさに免疫が暴走し、自分自身の細胞をも破壊してしまいかねない。将来、自己免疫疾患に分類される重い病気に発展してしまうこともある。

免疫細胞はある物質に対して一度アレルギー反応を示すと、何度も同じ物質に対し反応することになる。アレルゲンに対して、子供がアレルギー反応を起こすかどうかは、先に、これは異物だと”アレルギー認定”するか、これは安全だと”寛容”するのかが大事になる。

そこで先ほどのケースに戻るが、イスラエルの子供は「バンバ」を幼い頃から日常的に食べることで、ピーナッツに対して経口寛容が働いていた。対してイギリスの子供は、口にする前に敏感な肌からピーナッツの成分に感作してしまっていたために、その後、ピーナッツを口から摂取した際にアレルギー反応を起こしまったと考えられる。

こうした事実が判明したことで2008年頃から、アレルゲン除去⾷に⾷物アレルギーの増加を⾷い⽌める効果はなかったとして、現在のガイドラインでは、特定の⾷品の摂取を遅らせるような指導はなくなっている。

⼤⼈になると消えてしまう「胸腺」という臓器の秘密

免疫細胞には「胸腺」という臓器が関わっている。胸腺は、⼼臓の真上にある⼩さな臓器で、⼀般の⼈にとってはあまり馴染みのない臓器だと思うが、その役割はとても重要である。

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⾻髄で作られた幹細胞は、胸腺に集められ、免疫細胞であるT細胞になる(Tは胸腺(thymus)の頭⽂字)。

T細胞は、⼤きく「キラーT細胞」と「ヘルパーT細胞」の2種類に分けられる。キラーT細胞はウイルスやがん細胞などを排除する細胞で、⼀⽅、ヘルパーT細胞は免疫の働きを制御する司令塔のような役割を果たしている。

胸腺では、何百万もの物質に対して安全か危険かを⾒分けられるよう、T細胞に対して何段階にも「教育」がなされる。そして、⾃⼰の細胞を破壊してしまうなどの精度が悪いものは、胸腺の中ですぐに処分される。

その結果、⽣き残れるのは全体のわずか5%程度で、狭き⾨をくぐり抜けた少数精鋭のT細胞だけが、血液に入り全身を巡って実践へと向かうことになるのだ。

胸腺は、⼈間の場合10歳頃にサイズが最も⼤きくなるが、思春期(12歳から17歳ごろ)を過ぎるとどんどん⼩さくなり、30歳前後には役⽬を終え、脂肪組織となり、臓器としては⾒えないくらいに退化してしまう。

⾷物アレルギーの改善が⾒込めるのは、年齢が低い⽅が良いとされるのは、このためである。胸腺の活動が活発な時期は、免疫系が柔軟に学習し、免疫反応が調整される可能性がある。⽣まれてから⼩・中学⽣頃までの成⻑段階は、⾝体の免疫系の発達に⾮常に重要な時期であることがわかる。

ちなみに漆職⼈は⼦供の頃から、漆をごく少量ずつ舐めることで、将来肌に触れてもかぶれなくなるという。これは経⼝寛容の性質と、免疫の学習能力の高い時期をうまく利⽤した昔ながらの方法だと⾔える。

⼀般的な認識では、乳幼児にアレルゲンとなる物質を含む⾷品を積極的に⾷べさせるということはないだろう。すでに体内でアレルギー反応が出ている場合には、その⾷物でアレルギー症状を起こすため、家庭でこの⽅法を試すのは⾮常に危険であり注意してほしい。

ただしその一方で、子供が大きくなるまで、アレルゲンとなる食物を与えることを徹底して避け続けることが、もしかするとアレルギーを引き起こす可能性がある……という事実を知っておいてほしい。

この前提を確認いただいた上で、あくまでも一つの参考として掲示するが、こうした性質を利用した治療法として、経口免疫療法(Oral Immunotherapy, OIT)というものが存在する。

日本小児アレルギー学会による「食物アレルギー診療ガイドライン2016」によれば、経口免疫療法とは、「自然経過では早期に耐性獲得が期待できない症例に対して、事前の食物経口負荷試験で症状誘発閾値を確認した後に原因食物を医師の指導のもとで経口摂取させ、閾値上昇または脱感作状態とした上で、究極的には耐性獲得を目指す治療法」をいう。

つまり、すでにアレルギー反応が出てしまっている場合の治療法として、アレルゲンをアレルギー反応が出ない程度の少量ずつ経口摂取させることで、アレルギー反応が出ない量を増やすという治療方法があるということだ。食物アレルギーではないが、スギ花粉症を治療するための舌下免疫療法もこれとよく似たアプローチの方法だと言える。

ただし経口免疫療法は、予期せずアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があるなど、複数のリスクから、ガイドラインでは、経口免疫療法を食物アレルギーの一般診療として推奨しないとしていることも付け加えておく。

http://www.jspaci.jp/allergy_2016/chap09.htmlなどを参照のこと)

過去には、神奈川県⽴こども医療センターで、経口免疫療法の療法中に重篤な事象が発⽣しており、⽇本⼩児アレルギー学会から「経⼝免疫療法に対する注意喚起」も出されている。一部の症例には効果があるが、免疫反応に対する治療の難しさが実態としてあることは必ず認識しておかなければならない(安直に行ってはいけない、ということで、専門医の指導相談は必須)。

なぜ兄姉がいる子供の方がアレルギーが少ないのか

アレルギー疾患に関して、兄弟姉妹の⽣まれた順番で、差があることが以前から⾔われていた。イギリスの疫学者デイビッド・ストラッチャン(DavidStrachan)教授が1989年に発表した論⽂の内容が興味深い。

1958年のある1週間に⽣まれた1万7千⼈の記録を調べ、⼤⼈になるまで追跡調査をした。アレルギーの発症において、幼年期の影響を特定しようとしたのだ。

その結果、23歳の時点で、花粉症⼜はアトピー性⽪膚炎を発症している確率と、最も強い関連性が認められた要素は、なんと「11歳の時点で、家庭内に年上の⼦どもが何⼈いたか」だったというのだ。

この兄弟(姉妹)の影響はとても顕著で、第⼀⼦では20%になんらかのアレルギー症状があるのに⽐べ、第三⼦では12%、第五⼦では8%にまで下がるという。

デイビッド・ストラッチャン教授は、この結果を説明する上で考えられることは、幼年期の感染症にかかる確率が⾼いからだろうと推測している。つまりは、家庭内の⼈数が多いほど、様々な細菌やウイルスなどに感染する機会が増え、免疫機能が適切に働くというのだ。

また兄弟姉妹が多いほど、毎⽇の⽣活の中で微⽣物のやり取りが多くなる。このやり取りが、定着する微⽣物の割合を変え、免疫系の発達につながると考えられる。

⾼度成⻑以降、核家族化が進み、その上、現在の⽇本では⻑らく少⼦化が続いている。核家族化や少⼦化の影響が、定着する微⽣物の多様性や、免疫の発達にまで影響を及ぼしているとなると、影響の範囲の広さに驚くばかりだ。

アレルギーを誘発する現代の⽣活

近年、子供でも花粉症が当たり前になった。アレルギー反応を抑制する側の免疫細胞が少ないために、花粉という物質に対して過剰に反応してしまうのだ。幼いうちに調整されるべき免疫系の調整が、現代では難しくなってきている。

ひとつの例として、ベトナム農村部の⼦どもたちを対象にした⼤規模な実験で、寄⽣⾍の駆⾍をしたことで、アレルギー疾患のリスクを⾼めてしまうという結果が出ている。

ベトナムの農村部では、今までほとんどアレルギー疾患はみられなかった。これは寄⽣⾍感染によって、免疫が発達し、免疫の調整機能が適切に働いているからだと言える。そのバランスの取れた状態から寄⽣⾍が突然いなくなると、免疫の調整機能がうまく働かなくなり、⼀気にアレルギー症状を引き起こす⽅向へ向かってしまうのだ。

現代の都市部の⽣活から推測するに、第⼀に多様な微⽣物と接触する機会が減っていることが⾔える。⾃然の中で育った家畜と、清潔で近代的な環境で飼育された家畜とでは、⾃然の中で育った家畜の⽅が、免疫制御に関わる遺伝⼦の発現が多いことが分かっている。

これは⼈間にも当てはまることで、都市部の環境で育てば、制御する側の免疫細胞は少なくなり、アレルギー反応を起こしやすい体質になる。そしてそれが、⼆代三代と都市部で⽣活する親⼦間で進んでいくとなれば、よりその傾向が顕著に表れてきてもおかしくない。

免疫という生命維持に欠かせないシステムの制御不能が、今後私たちの身体にさらなるどんな異変をもたらすのか、次の半世紀、もっと高い壁として立ちはだかるかもしれない。

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