シリーズ累計で40万本以上売れたドウシシャのステンレスボトル『mosh!』

シリーズ累計で40万本以上売れたドウシシャのステンレスボトル『mosh!』

  • @DIME
  • 更新日:2016/10/19
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■連載/

■「断トツでカワイイ」と評価された、牛乳瓶をモチーフにした新デザイン

開発が始まったのは2015年に入ってから。その年のはじめ頃、『mosh!』の開発を担当した吉崎雄貴さん(ライフスタイル事業部ハウスウェア商品ディビジョン マネージャー)は「スタイリッシュなものをつくりたい」と考えていた。ユーザー調査でデザインにこだわったものがあれば購入したいということがわかったことなどが、その主な理由だ。ただ、この時点では具体的なことは何一つ決まっておらず、翌年頃にそういう商品が展開できたらと考えていた程度だった。

だがその後、状況が変化。事業本部長が「デザインにこだわった商品づくりをする」という方針を打ち出し、急ピッチで開発することになった。ステンレスボトルは、夏に一番売れる。売り時を逃さないためにも、大急ぎで開発を進めなければならなかった。

吉崎さんにあったのは、下の写真のように指と指の間にくびれている部分を引っ掛けて持ち歩くイメージだけ。このイメージを、デザイナーの増田郁美さん(ライフスタイル事業部ハウスウェア商品ディビジョン アシスタントマネージャー)に伝えた。

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「今思うと、よくこんな指示をしたな」と振り返る吉崎さんだが、増田さんは最初にこのイメージを聞いたときのことを、こう振り返る。
「ずっと一緒に仕事をしてきたので、言いたいことは何となくわかりました。自由にやらせてくれるところは不安でしたが、その反面、やりやすいところがありました」

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ドウシシャ

ライフスタイル事業部

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吉崎雄貴さん

ライフスタイル事業部
ハウスウェア商品ディビジョン
アシスタントマネージャー
増田郁美さん

増田さんの頭の中には、キーワードとして「瓶」があった。「瓶」からイメージしたデザイン案を、複数つくったが、その中の1つに、牛乳瓶をイメージしたものがあった。このデザインが社内で「断トツでカワイイ」と評価され、採用されることになった。

■困難だったデザイン通りの開発

デザインが完全に決まったのは2015年3月。まずは『mosh!ステンレスボトル』の350mlと500mlをつくることにしたが、従来と大きく異なるデザインを忠実に具現化することにこだわったこともあり、大変なことが次々と襲ってきた。

「瓶も大変でしたが、個人的に一番大変だったのがフタでした」と振り返る吉崎さん。例えば、フタでもステンレスを使うことにこだわり、PP(ポリプロピレン)の上にステンレス製のカバーを被せることにしたが、平たく丸みを帯びている形状のため、そもそも被せることが難しかった。被せることができても、取れない構造にしなければならないことから、この構造を万全なものにするために4回つくり直した。一時はどうしてもできず、四角形のフタにしようとしたこともあったが、「かわいさが半減し魅力がなくなる」ということから却下され、デザインを実現するために頭を悩ませた。

また、本体では底にRをつけて丸みを帯びさせたが、溶接したところに丸みをつけることになるため、従来の溶接法では対応不可能だった。そこで、従来とは異なるところを溶接することにして、何とかしてデザインに忠実なものをつくった。

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『mosh!ステンレスボトル』350ml 全11色

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『mosh!ステンレスボトル』500ml 全11色

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■『mosh!ステンレスボトル』450mlを追加した理由

こうして『mosh!ステンレスボトル』の350mlと500mlが完成。発売後、徐々にラインアップを増やしていった。

まず2016年2月に、ジャム瓶をイメージした『mosh!フードポット』を追加。ステンレスボトルの経験もあり簡単に開発できるかと思いきや、直径が大きくなることで溶接が難しくなり、思いのほか苦戦したという。

また、添付するレシピを一からつくり直した。つくり直したのは、トレンドの変化に合わせることはもちろんのこと、今までのフードポットと違うこととクオリティーの高さを示すため。リゾット、冷製スープ、杏仁豆腐、など6種類を添付した。

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『mosh!フードポット』全6色

2016年8月には、『mosh!ボトル シェイク』と『mosh!ステンレスボトル』450mlが追加された。

『mosh!ボトル シェイク』はシェイカーをモチーフにしたステンレスボトル。なかなか獲れなかった(獲得できなかった)大人の男性(顧客層)を中心に、女性も獲れるものとしてつくった。

「このときは『mosh!で男性をターゲットにしたいんだよね』とだけしか言われませんでした。直感的にカッコイイと思えるものを探すために、表参道や青山などを見て歩きき、自分がカッコイイと思ったものをピックアップし、そこから絞り込んでいきシェイカーをモチーフに選びました」と増田さん。誰が見てもシェイカーと思えるものでありながら、ボトルとして持ちやすいものにするため、実際にシェイカーを買って検証するなど手間をかけた。

デザインだけでなく開発も難航。複雑な形状をしていることから、従来のつくり方では製造不可能で、新たなつくり方が求められた。試行錯誤の結果、それまでの溶接法と溶接箇所を変更することで難しい形状の加工を実現した。

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『mosh!ボトル シェイク』全4色

一方、『mosh!ステンレスボトル』では、ほとんど見られない450mlを追加したが、その理由は500mlのデザインと関係があった。500mlも当初、350mlと同じデザインだったが、バランスが崩れたせいか、かわいくなかったことから、デザインを変更。他の瓶をイメージさせるものにした。

ただ発売後、「350mlのデザインで大きなものが欲しい」というレビューが見られるようになった。このような声を受けて開発したのが450mlだった。「前回は500mlという容量から入ったので失敗したかもしれなかったので、外観から入ることにし、350mlのデザインはそのままに、カワイイと思える最大の大きさを増田に指示してもらいました。そのサイズから容量を計測したところ、450mlでした」と吉崎さんは話す。

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『mosh!ステンレスボトル』450ml 全11色

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■専用什器を使い一気に全色展開

『mosh!』シリーズのヒットはユーザー調査の結果を裏付けるものになったが、好成績の裏には、新しい販促法もあった。ステンレスボトルでは珍しい、専用什器をつくって売場に置くことにしたのである。

専用什器は全11色が置ける大型のものと、店頭の棚に載せられる小型のものを用意。什器の設置を小売店に提案をしたところ、「どうぞ置いてください」という好意的な反応が多くを占め、2300店で取り扱われることになった。「過去、ステンレスボトルで一番多く扱ってもらったときは1800店舗ほどでしたが、この記録を抜くことができました」と吉崎さんは言う。

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店頭に設置する専用什器。『mosh!ステンレスボトル』が全色置ける

★★★取材からわかった『mosh!』シリーズのヒット要因3★★★

1.デザイン性の高さ

ステンレスボトルは機能に重きが置かれ、デザインにそれほど違いが見られなかった。しかし、デザインを重視したことで、大きな差別化が図ることに成功した。

2.デザインを壊さなかった

牛乳瓶やジャム瓶、シェイカーをモチーフにデザインされたが、実現にはそれぞれ困難な面があった。デザインを変更してもおかしくない事態もあったが、妥協することなくデザインに忠実に開発した。

3.面で展開する販促

ステンレボトルはこれまで、店頭の棚に置かれるだけだったが、専用什器を用意。一気に全色並べるといった新しい売り方で認知が急速に進んだ。

デザインで勝負するということは、消費者の感性に強く訴えかけるということである。そして、実現困難な点があっても妥協しないことが不可欠で、販売面でも新たなチャレンジが欠かせない。関わった誰もが妥協しなかったことに、ヒットする必然性があった。

製品情報
http://www.mosh-products.com/

文/大沢裕司

ものづくりに関することを中心に、割と幅広く色々なことを取材するライター。主な取材テーマは商品開発、技術開発、生産、工場、など。当連載のネタ探しに日々奔走中。

■連載/ヒット商品開発秘話

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