乾はなぜスペイン・ベティスへの移籍を選択したのか?

乾はなぜスペイン・ベティスへの移籍を選択したのか?

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  • 更新日:2018/07/14
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乾はなぜベティス移籍を選択したのか?

ラ・リーガ1部のSDエイバルから同1部のレアル・ベティスへ移籍した日本代表MF乾貴士(30)が12日、東京・港区の駐日スペイン大使館で行われた入団会見に臨んだ。

契約期間は7月1日からの3年間。会見に同席したベティスのジェネラル・ダイレクター、ラモン・アラルコン氏から、2ゴールを決めたワールドカップ・ロシア大会で背負った「14番」のユニフォームを手渡された乾は「オファーをもらったときは、正直、悩みました」と偽らざる心境を明かした。

「今年で30歳になりましたし、おそらくこれが最後の(海外での)移籍になるんじゃないかと思って。そのなかでベティスのサッカーは、自分自身がすごくやりたかったサッカーだったので、挑戦したいという思いが込みあげてきたので決めました。いまは楽しみでしかありません」

2015年8月末から約3シーズン所属し、89試合に出場して11ゴールをマークしたエイバルからも契約延長のオファーを受けていた。昨シーズンが終盤戦に差しかかっていた今春は、残留するか移籍するかで乾の心は大きく揺れ動いていた。

チームの規模を比較すれば、スペイン第4の都市セビリアに本拠地を置き、1907年に創設された古豪ベティスのほうがはるかに大きい。ホームのエスタディオ・ベニート・ビジャマリンの収容人員は約6万人。黄金時代を迎えた戦前の1934-35シーズンには、ラ・リーガ1部を制している。

翻ってエイバルの本拠地は、スペイン北部の山間にある人口約2万7000人の小さな町。ホームのエスタディオ・ムニシパル・デ・イプルーアの収容人員はわずか6200人で、乾が加入する1年前の2014-15シーズンから初めてラ・リーガ1部を戦っていた。

それでも、乾はエイバルに特別な思いを抱いていた。セレッソ大阪からブンデスリーガ2部のボーフムをへて、同1部のアイントラハト・フランクフルトに移籍したのが2012年6月。胸中に抱いていた希望の二文字は、いつしかストレスへと変わっていた。

「人に何か言われてプレーするときって、楽しくないと思うんですよ。自分から何かをやっていかなきゃいけないし、そのなかで自分のプレーを出せたときが一番楽しいので」

フランクフルト時代をこう振り返ったことがある乾は、2015-16シーズンが開幕した直後に、サッカーを始めた小学生時代から憧憬の思いを抱いてきたスペインへの移籍を直訴。夏の移籍市場が閉じる直前に移ったエイバルで、自身の原点である「楽しさ」を思い出した。

「憧れていた通りだったというか、本当に楽しくプレーできている。スペインのなかでも珍しいと言われるほどファミリー感のある、すごく雰囲気のいいチームだし、チームメイトもいいやつらばかり。何の不満もないし、自分のサッカー人生で一番楽しい時期をすごしていると思う」

笑顔を輝かせた乾は「ここで長くサッカーができたら、自分のサッカー人生のなかで最高の宝物になる」と明言するほどエイバルでの日々に感謝していた。それでも最終的にはベティスへの移籍を決断したのは、難攻不落の強者を倒したいと望む、アスリートの本能にも近い思いが上回ったからだ。

「乾は基本的にはサッカー小僧ですから。だからこそFCバルセロナやレアル・マドリードに勝てるような、より高いレベルのチームであるベティスを最終的には選んだのだと思います。エイバルも非常にいいチームですけれども、乾が2ゴールを決めてもバルセロナには勝てませんでしたから」

乾の関係者が例として挙げたのは2016-17シーズンの最終節。乾の連続ゴールで2‐0として、敵地カンプノウを静まりかえらせた直後からバルセロナの猛反撃を食らい、アルゼンチン代表FWリオネル・メッシの2発を含めた怒涛の4連続ゴールを喫して敗れ去った。

結局、エイバルでプレーした3年間におけるバルセロナ、レアル・マドリードとの対戦成績は1分け11敗。唯一のドローは2016-17シーズンのレアル・マドリード戦で、昨シーズンに限っては両ビッグクラブに4戦4敗、得点2に対して失点13と木っ端微塵に粉砕された。

ならば、昨シーズンのベティスはどうだったか。無類の強さで優勝したバルセロナには2戦2敗だったが、レアル・マドリードからは敵地で1‐0の勝利をゲット。真っ向勝負を挑んだホームでの一戦では3‐5と壮絶な逆転負けを喫したものの、前半を1点リードで折り返している。

現役時代にはスペイン代表MFとしてプレーしていた就任1年目のキケ・セティエン監督に率いられた昨シーズンのベティスは、華麗なパスサッカーでラ・リーガを席巻。終盤戦では破竹の6連勝をマークして6位に食い込み、来シーズンのヨーロッパリーグ出場権も獲得した。

6連勝のなかには、乾が後半途中から出場した4月7日のエイバル戦も含まれている。ちょうどベティスへの移籍が報じられていたときで、敵地のファンやサポーターに温かい拍手で迎えられた光景が、0‐2のスコアで喫した完敗とともに乾の記憶に刻まれている。

「あの試合はパスを回されて、本当に上手いチームだな、という印象を受けました。スタジアムの雰囲気もすごくよかったけど、ファンやサポーターは厳しいとも聞いているので、厳しくされないようにいいプレーをしないと」

移籍が内定したのは昨シーズンの終盤で、この時点でラ・リーガの歴史上で初めて、移籍する選手の母国で入団会見が行われることも決まった。マーケットとしてメキシコの次に日本を重視するラ・リーガと、日本における露出を増やしたいベティスの戦略が一致したからだ。

だからこそ、乾が西野ジャパンに選出され、初めて臨んだワールドカップの舞台で鮮やかな2ゴールをマークし、世界中から脚光を浴びる存在となったなかでの入団会見開催は、ラ・リーガにとってもベティスにとっても望外の喜びとなったはずだ。

もっとも、憧れの地スペインでステップアップを果たした乾自身は「4年後(のワールドカップ)をまだ見ていません」と、冷静沈着に己の足元を見つめている。

「とりあえず1年1年を頑張っていって、そのなかで4年後に(ワールドカップ代表に)選ばれれば一番いいことだと思う。まずはベティスでレギュラーを取れるように。攻撃で違いを見せられればベストですけど、エイバルで学べた守備も無駄にすることなく、チームに貢献していきたい」

ベティスでも乾は単身赴任の形を取る。すでに新体制のもとでキャンプは始まっているが、当面は日本国内で身心を充電しながら、最愛の夫人および長男とすごす時間を満喫。ロシア大会に出場したメキシコ代表MFアンドレス・グアルダードともに、今月26日に新天地へ合流する予定になっている。

(文責・藤江直人/スポーツライター)

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