【開発秘話】1万9400個売れているアデランス『リフトアップウィッグ』

【開発秘話】1万9400個売れているアデランス『リフトアップウィッグ』

  • @DIME
  • 更新日:2018/01/13

■連載/ヒット商品開発秘話

アデランスが2015年9月に発売した『リフトアップウィッグ』シリーズが、ウィッグとしては異例のヒットを続けている。同社の公式通販サイトなどを中心に、2017年12月末時点で1万9400個売れているという。特徴は、ウィッグの下に使用するリフトアップネットとウィッグの内側のキャップにリフトアップ機能を施したこと。ヘアスタイルを変えると同時に顔のシワやたるみをなくし、若々しく見せることができる。

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■「どこにもないウィッグ」でない限り、取引は無理

誕生の背景にあったのは、ECサイトの立ち上げ。同社は自社製品を自社製造し、直営店で販売してきたが、時代の流れなどから5年ほど前に通販部門を設立した。サイトを構築し自社製品を並べたが、商品認知のスピードと広告効率を勘案した結果、卸売を並行していく方向に変更。当初は様々な販路の模索を繰り返したが、2013年に、テレビショッピングのQVCジャパン(以下、QVC)にたどり着くことができた。

QVCは、同社のヘアケア商材に対して興味を示さなかった。ウィッグについても、すでに3社の製品が取り扱われており、取り扱いの検討すらされなかった。担当した通信販売部長の徳永輝行氏は行き詰まった。それでも諦めず、手を替え品を替えてアプローチを試みたが、その過程でQVCは同社に対し、「どこにもないウィッグでもない限り、取り扱うことはない」という見解を示した。ただ、違いをつけるといってもQVCから、「『放送を見ただけではわからないものはダメ』と言われた」と徳永氏。難題により、胃の痛む毎日を送ることになった。

だが、2014年に入り転機が訪れる。あるヒントから羽二重(はぶたえ)の存在に着目。そこから『リフトアップウィッグ』シリーズのヒントを得たのである。

羽二重は、顔を引き上げキリッとした表情をつくる、舞台用ウィッグの下地。「羽二重はプロが時間をかけて仕込むものなので、そのときは『一般商品用では無理ですよね』で終わりました。でも、その一言で何となくですが、方向性が見えてきました」と徳永氏は振り返る。

もともと徳永氏は店舗の技術者。現場経験から、女性はヘアスタイルに満足すると次は、顔のシワやたるみを気にし出すことを知っていた。髪に満足すると同時にリフトアップして若々しく見えるようになれば、満足度は上がるはずと睨んだ。

■機能性インナーメーカーとの出会い

だが、ウィッグでリフトアップする方法がわからない。様々な商品を見てヒントを探し求め、「これだ!」と思ったものを生かして試してみるも、どれもうまくいかず。あまりにも空振りが続いたので、QVCとの取引実現も含めてすべてを投げ出したくなるときもあった。

事態はしばらく進展しなかったが、2014年の夏頃、もう一つの転機が訪れた。徳永氏は補正下着の機能に注目していたが、そのことと商品のコンセプトを取引先の社長に話したところ、福井県にある機能性インナーなどを取り扱うエル・ローズ社のヘルスケアビジネス担当と会うことを薦められ、紹介してもらうことになったのだ。

エル・ローズ社と会うことになった徳永氏は、開発コンセプトなどを説明。するとエル・ローズも興味を示し、『リフトアップウィッグ』シリーズの開発に協力することが決まった。ゼロベースでの開発の上に、テレビ通販で衝動買いできる価格帯を考慮しなければならなかったが、徳永氏一人が空回りしていた以前とは違い、アイデアを出し合えるパートナーがいることは心強かった。

■ネットと本体でリフトアップを実現

当初の構想では、ウィッグを装着するだけでリフトアップを実現したかったが、リフトアップ効果や着け心地などに問題があった。そこで、ウィッグ本体とネットの2つを使いリフトアップする構造にした。

ウィッグ本体から分けたネットは、リフトアップネットとした。補正下着でヒップアップ効果を出すパワーネットを使い、目元やあごのラインを引き上げる。また、肌をしっかりホールドするために、補正下着に使われているナノテープを採用した。

しかし、補正下着と同じパワーネットやナノテープだけでは、期待したリフトアップ効果が得られず、上に抜けてしまうなどの問題が発生あった。そのため、縫い方や織り方を変えるなど試行錯誤を重ね、頭を固定しながら上方向に力が働き、なおかつ抜けない構造とした。「こんなことを延々と繰り返していて、『やっぱりできないのでは?』と思ったこともありました」と徳永氏は振り返る。

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リフトアップネットの構造。肌に触れるナノテープ(下段矢印あたりの濃いコレー部分)がしっかり肌をホールドし、伸縮性のあるパワーネット(上段矢印あたりの薄いグレー部分)が目元やあごのラインを美しく引き上げる。また、えり足部の後部の調整ベルトで、引き上げる強さを自由に調整することが可能

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リフトアップネットを装着した状態

手軽に使えるよう、ウィッグ単体でも、ある程度のリフトアップ効果を持たせることにした。ベースキャップには伸縮性に優れたストレッチネット採用。こめかみ部分に設けたストッパーにより、伸びたストレッチネットが元に戻ろうとしてフェイスラインを引き上げるようにした。また、ベースネットは通常、縦方向には伸びるが、両耳の上と頭頂部を結んだ横方向にもストレッチ機能を持たせ、リフトアップ機能を高めた。通信販売部 リーダーの長島正憲氏は、「ちょっと近所に出かけるときなど手軽に済ませたいときは、ウィッグ本体だけを使った方が便利です」と話す。

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ウィッグ本体のベースキャップに、伸縮性に優れたストレッチネット(薄いグレー部分)を採用。えり足部分のシリコンテープがずれ上がりを防止し、頭全体を心地よく包む。リフトアップネットを使わないときは、こめかみ部のストッパー(矢印下あたりの濃いグレー部分)を使用することで、伸びたストレッチネットが元に戻ろうとしてフェイスラインが引き上げられる

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アデランス

通信販売部長 徳永輝行氏(左)

通信販売部 リーダー 長島正憲氏(右)

■完売したものの心配は尽きず

完成した商品は『リフトアップウィッグ 美ジェンヌ』と名付けられた。QVCも高く評価し取り扱いが決定。同時に、2015年10月7日に放送することが決まった。

放送は1時間の生放送。事前のモニター調査で好感触を得てはいたが、これまでなかったウィッグだけに、売れるかどうは未知数だった。だが、反響は大きく、放送終了時には用意していた分を完売した。

しかし、販売から1か月間であれば返品を受け付けるシステムのため、完売しても安心できなかった。「前例がない商品なので、返品率が読めなかった」と徳永氏。しかし返品率は想定内に収まり、注文のキャンセルも他のウィッグより少なかった。

■開発に終わりはない

商品の評判が高まるにつれて、同社には「現物をお店で見たい」といった声も寄せられるようになった。この声を受けて開発されたのが、2016年10月に発売された『リフトアップウィッグ』。同社が全国に展開する「フォンテーヌショップ」などで取り扱われており、店舗用に仕様を変更している。

また、『リフトアップウィッグ 美ジェンヌ』も、2017年11月に改良版を発売。2つの新しいヘアスタイルを投入したほか、リフトアップネットを見直した。

リフトアップネットの改良は、ナノテープにシリコンラインを入れてずれにくくしたことと、パワーネットの追加によるキープ力アップなどに及んだ。

改良の理由は、ものづくりへのこだわりだった。「開発には終わりがありませんが、これではキリがないので一度区切りをつけ、2015年9月に発売しました。発売から2年経ちましたし、素材の進化もあり、もっとよくなるアイデアもできたので、改良することにしました」と徳永氏は言う。

★★★取材からわかった『リフトアップウィッグ』シリーズのヒット要因3★★★

1.販路に合っていた

QVCはアデランスに対し、「どこにもないウィッグ」という取引の大前提を示した。アデランスはこれに応え、どこにもないウィッグをつくり上げた。

2.見ただけでわかる特徴と新規性

1時間の生放送で商品を紹介するには、視聴者が見ただけでわかる特徴と新規性が不可欠。『リフトアップウィッグ』シリーズには、かぶるだけで顔をリフトアップする効果があり、これを強調することで視聴者に強く訴求することができた。

3.求めやすい価格

通販で売る商品は衝動買いできる価格設定が不可欠。同社公式通販サイトでの販売価格(64,800円、税別)、QVCでの販売価格(49,800円、税別)ともに、特別な機能があるウィッグとしては買い求めやすい価格に設定したことが奏功した。

「どこにもないウィッグ」で「見ただけではわからないものはダメ」と言われたら、普通は頭を抱え退散するだろう。しかし同社は、逃げることなく開発に挑んだ。アデランスのチャレンジ精神と徳永氏の意地が、難題を克服したのである。

製品情報
http://www.aderans-shop.jp/shop/pages/wig_AWM1_brown.aspx

文/大沢裕司

ものづくりに関することを中心に、割と幅広く色々なことを取材するライター。主な取材テーマは商品開発、技術開発、生産、工場、など。当連載のネタ探しに日々奔走中。近著に「バカ売れ法則大全」(共著、SBクリエイティブ)。

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