「ZOZOSUIT」を作った謎のスタートアップの正体

「ZOZOSUIT」を作った謎のスタートアップの正体

  • ITmedia NEWS
  • 更新日:2017/12/07
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国内大手のファッションECサイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイは11月22日、身体を瞬時に採寸できるボディースーツ「ZOZOSUIT」の予約受け付けを開始した。

「ZOZOSUIT」

採寸用のボディースーツという目新しさや、スマートフォンとBluetooth通信で接続できる利便性、送料のみ負担の無料配布という同社の戦略を受け、ZOZOSUITは各所で話題を呼んだ。祝日明けの24日には同社の株価が対22日で14%上昇。12月5日には、「想定以上の予約があったため、配送が遅れる」ことを謝罪。予約受け付けから10時間で23万件もの予約があったという。

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同社のプレスリリースには、「ニュージーランドのソフトセンサー開発企業StretchSenseと共同開発した」とあるが、この聞き慣れない名前に首を傾げた人も多かったのではないだろうか。

実は、同社はスタートアップと言えど、28カ国に400社もの顧客を抱える急成長中のウェアラブル企業なのである。詳しくみていこう。

体にピッタリと沿う伸縮型のセンサー

StretchSenseは、ニュージーランドのオークランド大学バイオエンジニアリング研究所バイオミメティックス(生体模倣技術)ラボのスピンアウトとして、2012年11月に誕生。共同創業者兼CEOであるベンジャミン・オブライエン(Benjamin O'Brien)氏と、CTOのトッド・ギスビー(Todd Gisby)氏は同ラボ所属の研究者で、イアン・アンダーソン(Iain Anderson)チーフサイエンティストは、グループリーダーを務めていた。

既にバイオメティックスラボでセンサー技術の研究に取り組んでいたこともあり、創業翌年には、国内の優秀な研究者に対してニュージーランド首相から贈られる「The Prime Minister's Science Prize(MacDiarmid Emerging Scientist部門)」をオブライエンCEOが受賞。その後も国内のさまざまな科学・ビジネス関連の賞を総なめにする。

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伸縮センサー「Stretch Sensing Element」

彼らの主力製品は、シリコン製の伸縮センサー「Stretch Sensing Element」。単に「センサー」と聞くと、人間の動きを感知するモーションセンサーやApple Watchなどのウェアラブル端末に搭載されている心拍センサーを思い浮かべがちだ。

しかし、StrechSenseのセンサーは従来のものと違い、柔らかく伸び縮みするシリコンでできているため、人間の体など曲線の多い対象にもピッタリと張り付き、繊細な動きまで正確に計測できる。

同社のオンラインショップでは、この伸縮センサーに加え、先端にBluetoothの発信機を取り付けた布製のセンサーや、データをとりまとめる小型回路から成るセットが、研究者や企業向けに2種類(「Sports Discovery Kit」と「VR Discovery Kit」)販売されている。

さらに、ウェアラブルデバイス・アプリケーションの開発を目指す企業向けに、同社はプロトタイプ製作サービスも提供している。マーケティング・ディレクターを務めるシン・ジョン・パーク(Shin Jeong Park)氏は、同社の高い技術力とセンサーテクノロジーを併用することで「これまで通常9カ月はかかっていたプロトタイプのプロセスを、最短20日まで短縮できる」とし、「伸縮センサーは特にスポーツや医療、ゲームなどの分野で力を発揮するだろう」と話す。

モーションキャプチャーをより手軽に、正確に

そんな彼らに目をつけた企業の1つが、カナダのモントリオールに拠点を置くHeddokoだ。アスリート向けのモーションキャプチャーソリューションを開発する同社は、正確に人の動きを計測できるボディースーツの開発にあたり、StretchSenseに協力を仰いだ。

Heddokoのボディースーツには、従来のモーションセンサーに加え、StretchSense製の伸縮センサーが張り巡らされており、どんな細かな動きでも正確に計測できるようになっている。スポーツの世界では、これまでにもモーションキャプチャー技術が積極的に活用されていたが、実際に体の動きを測定するには大規模な設備が必要だった。

しかし、同社のシステムはBluetooth経由でモバイル端末にも接続できるようになっているため、誰でも簡単にリアルタイムで体の動きをトラックできる。このシステムを使えば、例えばボールを投げるときの腕の角度や肘の高さなどから、体がどのような状態にあるときにベストパフォーマンスが出せるのかを客観的に割り出せる。

さらに、けがをしたアスリートがリハビリに取り組む際も、けがをする前と後の体の動きを比較することで、回復具合の確認ができる。

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NFL主催イベント「1st&Future」におけるデモの様子(TechCrunchのYouTube動画より)

また、StretchSenseの技術は芸術界からも注目を集めている。世界最大の楽器フェア「NAMM」では、同社のセンサーを搭載したグローブを使い、バーチャル楽器を演奏する様子が披露されたほか、16年2月の「New York Fashion Week」では、ファッションブランド「The Chromat」がStretchSenseと共同制作した、手指の動きに合わせてライトが灯る服がランウェイを飾った。

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「NAMM 2017」におけるバーチャル楽器の演奏風景(StretchSenseのYouTube動画より)

プライベートブランド「ZOZO」構想に欠かせないパートナー

昨年にはLINEと共同でビーコンタグの導入を試みていたのだが、ファッションとテクノロジーの融合に取り組んできたスタートトゥデイは、これを見逃さなかったようだ。

同年6月に行われたStretchSenseのシリーズAラウンドで、スタートトゥデイは単独投資(金額非開示)を行い、現在では同社の株式の39.9%を保有している。しかしZOZOSUITの発表までは、投資家向け資料にもStretchSenseの株式を取得した目的については明記されていなかったため、いつ頃からスタートトゥデイが同社に興味を持ち出したかは分かっていない。

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プライベートブランド「ZOZO」

ただ、16年3月期の決算発表でプライベートブランド構想が明らかになり、17年には前澤友作社長がTwitter上で、プライベートブランドは「世界初の試みになると思います。ICT、IoTをフル活用します。企画開始から6〜7年かかってます。老若男女、広くお楽しみいただけます」と語っていたため、StretchSenseの設立直後から同社の技術に注目していた可能性が高い。

またZOZOSUITの発表と同時に、スタートトゥデイはStretchSenseとコールオプション契約を締結したと発表(コールオプションとは、将来に現在価格で株を買う権利のことを指す)。同社のプレスリリースには、「StretchSenseは当社のプライベートブランド事業のために必要不可欠な開発技術を有しており(中略)当社の裁量で子会社化の意思決定が可能な権利を一定期間に渡り確保しておきたいという背景から、本契約を締結するに至りました」と記載されている。

単に採寸用のボディースーツを販売するだけであれば、Heddokoのように開発パートナーとしてStretchSenseとタッグを組めばいいはずだが、100%子会社化まで視野に入れているとなると、スタートトゥデイはすでにZOZOSUITの先を見据えているのかもしれない。StretchSenseは、アジア・日本地域での事業拡大を視野に入れている。

当然これには、競合企業が同じようなサービスを提供できないようにするけん制の意味が含まれているのかもしれない。しかし、今後は単なるファッションを超え、ZOZOSUIT経由で収集したデータとStretchSenseの技術を融合させ、スポーツや医療の世界に進出していく可能性もある。まだ臆測の域を出ないが、今後も両社の動向からは目が離せない。

執筆:行武温

編集:岡徳之(Livit

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