FT紙が批判するBrexit後の通関取決めの提案

FT紙が批判するBrexit後の通関取決めの提案

  • WEDGE
  • 更新日:2017/09/15
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8月15日に発表された将来の英国とEUの通関取決めに関する英政府のペーパーについて、フィナンシャル・タイムズ紙の8月16日付け社説は、政府が移行協定の必要性を認めたことは評価しつつも、移行期間後の両者間の通関手続きのあり方については政府には依然確たるアイディアがない、と批判しています。社説の要旨は次の通りです。

(iStock.com/Photos.com/BirgitKorber)

メイ首相の政府のBrexit交渉のやり方は滅茶苦茶なので、ちょっとした常識の兆候でもあればブレークスルーだと思わせる。というわけで、8月15日に発表された将来の通関取決めに関するペーパーが移行期の関税協定の必要性を認めたことに幾分かの安心を覚える。しかし、良い知らせはそこまでで、移行期間の後をどうするかについては、政府は希望的観測以外には明確なアイディアは持ち合わせないようである。デイヴィス離脱相は、これを「建設的曖昧さ」と称しているが、閣内の意見対立もあるので、政府のアプローチは破壊的曖昧さのように見える。

2019年3月の離脱以降の移行期間において現状を維持するためには、新たな関税協定を必要とする。それのみならず、摩擦のない貿易のためには単一市場へのアクセスのための取決めも必要となる。

この種のことは何とかなる。問題は移行期間の後をどうするかであるが、政府の計画は実際の世界を離れた良いとこ取りの世界にある。政府がぼんやりと想定するのは次の二つである。

(1)テクノロジーを用いて国境の行政負担を排除するための「高度に合理化された通関取決め」

(2)第3国からの輸入について、それが英国内では国際的なサプライ・チェーンの一部を成すが最終仕向け地がEU市場であるモノについてはEUの制度と同様の通関管理を行うことによって、英国とEUとの間の通関手続きを不要とする「新たな通関パートナーシップ」

こういう新たな体制を数年のうちに構築し得るものかという疑問がある。欧州委員会は関税同盟と単一市場のメンバーシップのみが摩擦のない貿易を可能にするとコメントしている。

政府がやっと提案を始めたことは結構であるが、まだ詳細と実際性を欠いており、ペーパーは決定的というより散漫である。いずれにしろ、英国は最初に解決されねばならない問題、即ち、清算金と市民の権利の問題に未だ適切に対処出来ていない。

現実主義の兆しが見えることは歓迎であるが、閣内の意見対立のために政府は一貫性のある詳細なBrexit計画を提示し得ないで来た。移行期間における通関の混乱を最小化するというコミットメントは良識あるものであるが、それが実質的な将来計画になるわけではない。

出典:‘Britain shows only a glimmer of Brexit sense’(Financial Times, August 16, 2017)
https://www.ft.com/content/5ddea020-81cf-11e7-a4ce-15b2513cb3ff

8月15日、英国政府は将来のEUとの関係に関する英国の立場を取り纏めた一連のペーパーの最初のものとして、通関取決めに関するペーパーを公表しました。

この中で、英国政府は時限的な移行期間のための関税協定をEUと交渉する意図を表明しています。障害のない貿易の現状を維持するには単一市場へのアクセス確保のための手当も必要なはずですが、このことには言及がありません。しかし、英国は移行協定の数多くの側面をEUと共に検討するとの記述があるので、いずれ具体的な方針が示されるのかも知れません。また、英国は2019年3月の離脱後に第3国との貿易協定の交渉を始めますが、移行協定と相容れない協定を発効させることはしないと述べています。

移行期間経過後の通関の問題については、英国政府は、この社説にある2つのオプションを追求したいとしています。それぞれ、ビジネスにとって新たなコストになることは避け得ないでしょう。それはEUを離脱する以上仕方がないことです。ここでも単一市場へのアクセスの問題には言及がありませんが、ペーパーには「深い特別なパートナーシップ」の他の側面についてはいずれ提案を示すとの記述があるので、そこに含まれるのでしょう。関税の問題もそこに含まれるのでしょう。

この社説の論旨には賛成できません。ペーパーが移行協定の必要性を認めたことは評価しつつも、将来の通関手続きに関する提案は、希望的観測だとか良いとこ取り、詳細を欠き散漫だとかと酷評しています。EUがどう反応するかは予測の限りではありませんが、Brexitをなるべくソフトにしようと思えば、この種の可能性を探る努力は必要となります。ビジネスに優しいBrexitを主張して来たフィナンシャル・タイムズ紙は、この種の努力を貶める立場にはないはずです。そもそも、ペーパーはビジネス界との協議のたたき台との位置づけでもあるので、「詳細を欠き散漫」云々の批判は当たらないように思います。

EUは「移行期間と将来の関係に関する希望は承ったが、秩序ある離脱の条件について満足すべき進展があって初めてこれらの問題を検討することになろう」という当然のコメントをしています。EU離脱に伴う清算金の問題の交渉は膠着状態のようですが、8月6日、サンデー・テレグラフおよびロイターは、英国政府では400億ユーロ程度の支払いに応ずる、具体的には離脱後3年間毎年100億ユーロを支払う、残りの正確な額は将来の貿易関係の交渉と並行して交渉するとの提案が検討されている、と報道しています。英国が抜けた後の予算負担の肩代わりはいずれの加盟国も逃れたいに違いありませんから、これが梃として有用と見た英国の作戦かも知れません。社説は政府の交渉振りは滅茶苦茶だといいますが、なかなかの粘り腰の交渉振りかも知れないとの印象を受けます。

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