カナダで発生した中国人美少女「失踪」事件の真相

カナダで発生した中国人美少女「失踪」事件の真相

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  • 更新日:2017/11/20
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章鐫文さんが留学していたカナダ・トロント

近年になり中国人観光客の激増が報じられて久しいが、増えているのは旅行者だけではなく留学生も同様だ。昨年12月に発表された『中国留学発展報告(2016)』によると、海外留学中の中国人学生は全世界で126万人に達し、国際留学生総数の4分の1を占めるという。留学先としてもっとも人気が高いのは北米。人数が最も多いのは約32.9万人の米国だが、カナダも相当に多い。

現在、カナダの中国人留学生数は日本人学生の約20倍の7万7795人に達し、特に同国の名門校・トロント大学にはなんと6000人の中国人が集中。トロントは中国語で「多倫多」と書くが、「多倫多大学じゃなくて華人多大学だ」というジョークが囁かれる始末である。また、近年は中学生や高校生のうちからカナダに送り込まれる富裕層の子弟も増えた。しかし、それゆえの問題も起きているようで――。

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「中国大使館からお電話です」

今年(2017年)11月9日午後、石油成金が多いことで知られる新疆ウイグル自治区カラマイ市からトロント大学に留学中の20歳の女子学生、大学3年生の章鐫文さん(下の写真)は、“駐トロント中国総領事館”を名乗る電子音声の電話を受けた。いわく「緊急案件」であるという。ひとまず電話を切って掛け直すと再び電子音声のナビ受付があり、その後に領事館員らしき男が電話に出た。

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トロント市内で留学生活をエンジョイしていた章さん。海外生活中に“領事館”から安全確認連絡を受けたことで、すっかり話を信じ込んでしまった。『環球網』より

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の写真をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51641

電子音声も電話口の男性の口調も、いかにも領事館らしいシステマティックな雰囲気。彼女が名前を告げたところ、電話口の男は「ちょっと待って下さい」と名前を検索し始める素振りを見せた。

「・・・ああ、名前が出てきました。ある国際刑事事件に関係する問題ですよ。いまから案件を読み上げましょうか?」

この“領事館員”いわく、ある中国人女性が先日、カナダに入国しようとした際に大量のキャッシュカードを所持していたことから税関で止められた。そのカードのなかに章さんの名前があったという。

彼女が驚いていると、やがて電話は「北京市朝陽区公安局」の“捜査官”に転送された。この“捜査官”による電話越しの尋問や、その情報を手元のパソコンで照会しているらしき様子はいずれも堂に入っており、やはり「公安局っぽかった」という。やがて電話は、公安側の“総本部”という別の男に再び転送される。

「お気の毒ですが、個人情報が流出した疑いが強いようです。現在中国国内では、麻薬売買とマネーロンダリングにかかわる大きな事件を捜査中なのですが、あなたも巻き込まれているようですね。中国に帰国して北京で供述をしていただかないと・・・」

「あの、留学中なのでそれは難しいです」

「では、電話で証言を録音しましょう。あなたは確かに今回の国際犯罪に関わっていないのですね?」

“総本部”もまた、手慣れた様子で尋問と事情説明を開始した。内容はなかなか怖い。大規模なマネロンや麻薬売買が発生している、党中央はこの巨大案件の全容解明を求めている、国家機密であるため両親や友人を含めた第三者に対して今回の案件を決して漏らしてはならない。これらは中華人民共和国の法律××条に規定があり、破れば相応の法的責任を負うことになる。中国国内にいる家族にも累が及ぶであろう――云々。

ものものしい言葉の数々と、“領事館員”や“公安局員”たちの手慣れた仕事ぶりから、すっかり電話を信用してしまった章さんは、尋問にしたがって実家の連絡先や両親の名前などの個人情報を伝えてしまった。

「捜査のため、あなたの名義のすべての個人財産は3年2ヶ月の間、凍結されます」

「あの・・・。それは生活に支障も出ますし、困るんですけど」

「あなた自身も協力してくださるなら、こうした影響を限定的にとどめることができます。公安局のシークレットの電話番号をお伝えしますから、今後はこちらの電話の指示に従ってください。必ず守ってくださいね」

やがてかかってきた別の電話の男は、章さんが国際捜査により中国に強制送還されて尋問されるおそれがあるため、しばらく身を隠すように指示。滞在費の全費用と新しい携帯・電話番号をすべて提供するので、現在の住所を離れて、実家を含む第三者と一切の連絡を取らないように申し伝えた――。

ハーメルンの笛吹きか? 坊っちゃん嬢ちゃん連続失踪

11月上旬、カナダ国内では多くの中国人留学生が上記の章さんと同様の電話を受けた。電話の内容を信じた華人系の留学生は、章さんのほか16歳の男子学生・許くん、17歳の女子学生・劉さんなど合計5人におよんだ。彼らはいずれも実家や友人・学校と連絡が取れなくなり、完全に失踪してしまったのである。

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現地のテレビ報道を伝える、在加華人メディア『CFC NEWS』。数日間のうちに連続して「失踪」した

一方、留学生たちの中国国内の保護者のもとには、別の怪しい電話がかかってきた。いわく、あなたの息子さんや娘さんを預かった。巨額の身代金を用意しろ。警察には伝えるな――。なかには、失踪した学生の顔写真にヌード写真を合成した脅迫画像まで送ってきた例もあるというから手が込んでいる。

すなわち、領事館や公安局を騙って海外留学中の若者を騙し、一時的に実家との連絡を断絶させ、誘拐を装って実家に身代金を要求するという「エア誘拐」詐欺だったのである。

ターゲットになったのは、故郷で蝶よ花よと育てられて10代後半からカナダに留学できるような「ええとこ」のお坊っちゃんやお嬢ちゃんだ。中国社会の汚い部分とは無縁で育ち、悪やウソに対する免疫がない彼らが親元を離れてピヨピヨと歩いているともなれば、詐欺グループにとっては好餌でしかない。

また、現代の中国の若者は政府のプロパガンダと経済発展の影響で、体制への信頼感がすこぶる強い(在北米留学生には既得権益層の子弟も多く、いっそう同様の傾向が強いと思われる)。領事館や公安局を名乗れば、そんな彼らを騙すことはより容易である。

もっとも、巧妙に準備をしたはずの詐欺グループにも誤算があった。騙した相手の少年少女たちが想像以上に「甘ちゃん」だったのである。

詐欺グループは電話のなかで、今回の事件は国際刑事犯罪で、中国国家と共産党の政治的な問題でもあり、ヘタをすれば母国の両親に対しても深刻な政治的・法律的迫害が及ぶと何度も強く警告したはずだった。しかし、お豆腐のようなメンタルしか持たない当世の留学生たちは、みんな禁則事項を破って自分のスマホで両親と連絡。そこで両親側が詐欺に気づき、事件が発覚してしまったのだ。11月半ばまでにすべての「失踪」学生たちの所在とその無事が確認された。

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ネット上のSNSで無事を報告する章さん。「とにかく、みなさんに感激しています」とのことで、結構ノリが軽いような・・・

詐欺グループはまだ捕まっていないようだが、ひとまず一件落着。カナダ側の警察によれば、今年6月ごろから類似の詐欺事件が報告されていたとのことであり、今回の事件は氷山の一角である模様だ。

変貌する中国人留学生の姿

中国人留学生と言えば、かつては親族に借金をしてでも国外に出て、アルバイトで食いつなぎ苦労の末に学問を修めて――、というイメージが強かった。だが、近年は中国の経済発展と、留学への憧れが強い両親世代の思い入れゆえに、かなり豊かでユルい若者たちの姿が目立ちつつある。ゆえに、中国人留学生がらみの事件も一昔前とは毛色の違うものが増えている。

例えば日本に関係する話だと、昨年11月に都内のアパートで中国人女子大学院生・江歌さんが同じ中国人留学生の男に刺殺される事件が起きた。江さんの友人と犯人男性の間に恋愛関係のもつれによるトラブルがあり、ストーカー化した犯人によって人違いの形で江さんが殺されてしまったのだ。犯人はすでに日本国内で逮捕・起訴されたが、中国国内で同様の罪は死刑に相当することから、中国のネット上では犯人の帰国後に厳罰を加えることを求める声が高まっている。

ほかにも、近ごろ話題になったのは2016年5月にドイツ留学中の中国人女子学生が現地の猟奇的な嗜好を持つドイツ人カップルに監禁・殺害された事件、同年に同じくドイツで中国人女子学生がイラク難民の男性に暴行を受けた事件、今年6月にアメリカ・イリノイ大学に留学中の中国人女子大学院生が現地の白人男性に殺害された事件などだ。むしろ留学生側が被害者になっている例のほうが多いのである。

留学生関連事件の変化もまた、現代の中国の経済力や国際的な影響力の増大を示すものであると言えるだろう。時代が変わったことを感じさせる話だ。

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