日本銀行、いよいよ「ステルス・テーパリング」を始めた可能性

日本銀行、いよいよ「ステルス・テーパリング」を始めた可能性

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/11/22
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教科書とは異なる「中央銀行の現実」

筆者は、銀行に就職してからはディーリング(国内・海外)、経済調査や決済インフラを仕事にして、さらに大学・大学院で金融論などを教えている。大学時代から金融市場を研究し、金融とのかかわりは早37年が経つ。

ところが、「現場」で実際に市場にタッチしていると、金融論の教科書における金融政策の「中央銀行は金融政策を担当し……」という画一的な説明に違和感が強い。

中央銀行や金融政策は各国ごとに「かなり違う」のである。ここでは、特に日本銀行の金融政策の特徴とその予想を解説したい。

当たり前のことであるが、日本銀行は日本の中央銀行である。

先進国の中央銀行であるので、ご多分に漏れず、超金融緩和を行っており、欧州と同様に短期金融市場における政策金利はマイナス域になっている。

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〔photo〕gettyimages

日本では、これ以上の金融緩和(いわゆる「深堀り」)は副作用の方が強い「イメージ」をもっている投資家が多いこともあり、今度の金融緩和が当面の最後となる可能性が高い。

日本銀行の金融政策の本来の大目標は、もちろん他の先進国と一緒に取り決めた「物価の安定的(2%)の上昇」である。もっとも、この安定的な2%というのも、各国の経済・金融状況が違うので一律決めるのは如何なものかと考えるが。

「円高防止」のための金融緩和

その上で、解説すると日本銀行の金融政策には2つの特徴がある。

(1)日本銀行の金融緩和は円高防止のために行う

日本経済が潜在的に最も嫌いな経済現象が「円高」である。

以前、日本政府は日常的に為替介入を行っていた。為替の介入というものは、財務省(財務官)が判断し、事務担当の日本銀行に指示して通貨の売買を実行していた。

日本銀行が判断しているわけではないので、マスコミが使う用語の1つである「日銀バズーカ」は違う。2004年の溝口財務官の時の介入を最後として、米国の圧力によって、為替レートのレベルを目標とした介入(円高是正)はできなくなってしまった。

米国は、その後も「為替操作国指定」というやり方で、事実上、各国の為替政策への管理を強化している。現在では、為替レートが急激な動きをした時の是正にのみ、直接的な為替介入を使うことを米国は許容している。

現在、為替介入に代わってその役目を担っているのが日銀の金融政策である。為替市場は金利に強い影響を受けるそのため、金利の変更させることによって、事実上の為替の介入を行っている。

実際、10月の金融政策決定会合の時に、さらなる金融緩和(深堀り)を行わなかったのも、ドル円為替レートが108円で安定していたからである。これが100円を切ってくるということであれは、さらなる金融緩和は行われたであろう。

歴史的に見ても、日本銀行の金融緩和は、日本の景気状況あるいはデフレ脱却を主の目的として行われたのではなく、「円高是正」のために行われてきた可能性が高い。無理な「超金融緩和」は次回おそらく最後になるであろうが、今回もドル円為替レートが円高に走っていることが条件になる。

実はマイナス金利は銀行経営に影響なし

(2)政府への配慮(財政政策との協調)

そもそもは、中央銀行は政府からの独立が保証されている(新日銀法)ものである。しかし、黒田総裁が就任してから、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の一角に超金融緩和政策が組み入れられている。もっとも新日銀法にも、金融政策は政府の行う経済政策と相反さないことという条項はあるが。

そのために、財政政策の影響を大きく受ける。次の財政政策の山は、補正予算であり、それは1月中旬には概略が見えてくる。そうするならば、タイミング的には1月20~21日の日本銀行金融政策決定会合がぴったりしたタイミングだ。

現在の金融政策の運営を見てみる。以前にも解説したが、マイナス金利が影響するという銀行の日銀への当座預金の残高には、基礎残高(15年の平均残高)、マクロ経済残高(経済成長した分や復興予算加算枠)、そして、政策金利残高の3つがある。付加している金利はそれぞれ、0.1%、0%、-0.1%となっている。

筆者は銀行全体の金繰りの経験もあるが、コントロールする預金口座は「日本銀行当座預金」である。日銀当座預金に関する縛り、いわゆる「準備預金制度」はあるが、最近では準備率も十分に低く、金融政策の運営のために設定したこの「3つの残高」の運営には影響はない。

銀行の日銀当座預金の金繰り担当者は、目標の残高に限りなく近づけることがその仕事とされる。個人でも法人でも銀行でもそうであるが、金繰りでは支払い(引落し)はコントロール(把握)できるが、問題は突然の入金で、上振れすることが問題となる。

実際には、マイナス金利が掛かる政策金利残高も「上振れ」した金額がその残高であり、ほとんどないのが実際である。つまり、マイナス金利政策は銀行経営にほとんど影響がない。

今回の3つの残高についても同様で、筆者が担当者であったならば、「基礎残高+マクロ経済残高」の金額(残高)に極めて近く操作する。それは裁定取引ともいえる。

しかし、少しでも残高が存在するのは、日本銀行に保有する預金はリスクアセット比率がゼロであること(コール市場の取引は20%)、さらには事務リスクが存在することによる。

具体的な残高でいうと、9月末の時点(合計値)では、基礎残高が約210兆円、マクロ加算残高が約173兆円、政策金利残高は約2兆円である。

さらにいうと、銀行経営に影響を少なくするために「保管当座預金制度」というものがあり、基礎残高とマクロ加算残高をかさ上げしているその比率を「余裕率」といい、現在は37.0%である。この部分は深掘り時にさらに増やす可能性が高い。

イールドカーブを立てる=緩和の終わり

それにしても、今後、予想される「深堀り」、つまり、政策金利を「マイナス0.2%にする」ということはイールドカーブを「正」の傾きにするためである。

グラフ(11月15日終値)にもあるが、3カ月~6カ月の金利(T-BILL:政府短期証券)がマイナス0.3%になっている。これは保有者のほとんどが海外で、日本の金融機関がドルを調達するために為替レートが優遇(プレミアム)されるのが常態化しているからである。

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また、銀行の経営にとってのイールドカーブを考えたとき、10年だと長い。現在それほど長い貸出しは少ないからだ。日本銀行が、今回のイールドカーブ・コントロールの長期金利の指標を10年物国債から5年物国債にしようとしているのも、このことが理由だ。

短期のマイナス金利の「へこみ」を直線化させ、持ち上げるためともいうことができるのである。

さらにいうならば、次回の深堀りが最後の金融緩和になる予兆がある。

日本銀行は中央銀行としては異例のREIT(Real Estate Investment Trust:不動産投資信託)の購入を2016年から行っている。金額は原則年6兆円としている。しかも株式相場(TOPIX)が前日比下落した場合に行っていた。

しかし、現在約1カ月間買い入れを行っていない。これは、筆者はすでに上がり過ぎた資産価格および過度な信用リスクに配慮して、金融緩和の転換に向かっていると考えている。いわゆるステルス・テーパリング(金融政策の変更を伴わない緩和縮小)を始めている可能性が高いのである。

いずれにせよ、為替レート次第であるが、来年1月に日本銀行は、この金融緩和基調の最後の金融緩和(深堀り)を行うが、それは銀行収益にとっては、一般のマスコミと現場を知らない学者がいっているとは違い、実際には銀行収益を増やすことになる。

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