AIに投資するスタートアップの支援プログラム「AI.Accelerator」登場

AIに投資するスタートアップの支援プログラム「AI.Accelerator」登場

  • @DIME
  • 更新日:2017/08/12

近頃、「AI(artificial intelligence=人工知能)」という言葉にほぼ毎日触れることだろう。AIに関するニュースが増えている。たとえば、AIが将棋・囲碁でプロに勝利したり、AIが自動運転を実現したり、AIスピーカーや女子高生AI「りんな」、など、あらゆる分野でAIが使われ始めている。

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そんな中、AIのスタートアップ企業を支援するという、耳慣れないニュースをキャッチした。「気になるけれどイメージが沸きにくい」……筆者も含め、そう感じる読者も多いのではと思い、実施する企業に直接取材してみることにした。

「AIに取り組む日本の企業は北米に比べて少なく、立ち遅れている」と「ディップ」はいう。ディップは、アルバイト・パート求人情報サイト「バイトル」、人材派遣求人情報サイト「はたらこねっと」などを運営する企業で、2016年6月からAI専門メディア「AINOW」を運営してきた。これらの活動で、国内AI企業の創業数がまだまだ足りないと感じたという。

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ディップが運営するAI専門メディア「AINOW」

そこでディップは、2017年4月から、AIを使ったサービスに取り組むスタートアップ企業を対象とした、新規事業創出を目指す日本初のアクセラレータープログラム「AI.Accelerator」を開始した。AIに特化したアクセラレータープログラムは世界的にも珍しく、香港に同様のコンセプトで「ZerothAI」というプログラムがあるが、その程度だという。

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AI関連事業を企画する企業の支援プログラム「AI.Accelerator」。エントリーもここから行う。

AI.Acceleratorでは、社会意義の高いAI関連事業や優秀な人材に対し、創業前後から投資を行い、世界レベルで活躍できるAIベンチャーの輩出を図るというもの。プログラムはAIを利用したサービスを開発するベンチャー企業やスタートアップ企業を対象にしており、公募による選考を通過し、採択された企業・個人には、メンタリング、データ提供、事業資金、PR、採用支援など、さまざまなリソースを提供するという。

ところで、なぜアルバイトを供給するディップがAIのスタートアップを支援するのか。その背景には少子高齢化による労働力不足への懸念がある。ディップのサービスだけで顧客の人材ニーズに応えるのが難しい時代が来るのでは、と危機感を抱いているというのだ。

ディップの次世代事業準備室 dip AI.Labの室長 進藤 圭氏は、「ディップは、今は人材供給業だが、今後10年くらいで人と技術を組み合わせた“労働力供給業”に切り替わっていくと思っている。その手段のひとつがAIやロボティクス」だと考えている。

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ディップ 次世代事業準備室 dip AI.Labの室長 進藤 圭氏

世の中のAIの利用状況を知ることを目的としてAINOWを立ち上げたが、国内にAIのサービスがほとんどないことに気づいたという。海外ではAIに対する投資が伸びているが、そのほとんどが北米で、日本の投資は2%程度に過ぎない。「AIを売ろうとしても、AIのサービスがないという状態。だったら、自分たちで届けられるようにしよう」(進藤氏)と考えたのが、AI.Acceleratorに取り組むきっかけとなった。

AI.Accelerator第1期目への応募は100社程度。書類選考で40社程度にしぼり、すべて面接を行った。最終的に8社が第1期生となり、3か月間、週に1回のメンタリングを受けている。選定の基準は、ディップの顧客である飲食店や小売店などと親和性があるか、もしくはアルバイトを探す大学生、主婦などが使うサービスかが考慮される。また、競合とのサービス内容の違いや経営者の人となりも重視している。「実績がないスタートアップには判断するものがないので、人を見る」(進藤氏)。もちろん、AIのサービスに育つかどうかが大前提だ。

メンタリングでは事業の目標達成度をチェックし、技術的なアドバイスをするだけでなく、スタートアップに不足しがちな人材と、宣伝や営業についてもサポート。作業場所やデータなどの提供も行う。最終選考はディップの役員とメンター陣に対するプレゼンテーションで行い、これを通過した企業に出資や事業提携を検討するという。ちなみに、第1期企業の中には、人工知能を活用するマッチングサービス「Foxsy」を提供するXpresso.incがあり、出資を行っている。

メンタリングチームは、起業家や大学教授など、AI業界で著名な関係者や専門家からなる。実際に、AIのスタートアップを始め、スケールが大きくなった過程を辿ってきた経営者もアドバイザーとして参加しているので、経験に基づいたアドバイスが可能だ。

また、ディップ自身は「バイトル」「はたらこねっと」「ナースではたらこ」など、日本最大級となる20万以上の企業データ(匿名化したデータ)を提供できる。スタートアップは「AIに食わせるデータがない」(進藤氏)という状態だが、ディップは同社の業務データや企業データを提供できる。また、サービスが形になった場合には、ディップの営業チームを通じて多くの顧客にサービスを使ってもらうこともできる。この点がベンチャーキャピタルにはない、ディップの強みだという。

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ディップはさまざまな企業データや顧客開拓を担う営業チームの支援も提供。

「AI.Acceleratorといっているが、我々は“技術・営業アクセラレータ”の側面が強いと思っている。ディップはリアルな技術や営業という、かなり泥臭い部分を支援できるのが強み。特にテック系スタートアップが弱いのは営業部分。そこに課題を持っている人に利用してほしい」(進藤氏)

AIの活用には日本でもさまざまな企業がトライしているが、サービス内容によっては、AIの役割やAIを採用した効果が見えにくいものもあり、現時点ではAIという言葉だけが先行して広まっているような印象もある。

進藤氏も、支援している企業のサービスについて「このサービスがAIかといったら、正直まだAIではないものある」と認めている。「ただ、我々の役割は、AIにする過程をアクセレートすることだと考えている。人とモノと金がないとAIにはならない。そこを支援する」と前向きだ。

「世の中はAIというより、業務を自動化しているフェーズ。自動化で溜まってきたデータをもとにAI化を図っていくというステップになると思っている。自動化はこの1年くらいで進み、来年はAIや機械学習を使ったサービスが増えてくると思う」(進藤氏)

AI企業のスタートアップを支援する、このアクセラレータープログラムは、いたずらに最先端をうたうのではなく、現実に即した投資を実施していることがわかった。また、投資だけではなく事業の人的な支援も行っている。スタートアップ企業の弱点を補完し、日本のAI企業を育てる……AIに投資する「スタートアップの支援プログラム」が機能することに期待したい。そして、このプロプログラムによって生まれたサービスが、将来、人の暮らしを便利で豊かにしてくれる、そんな日が来るのも近いことだろう。

取材・文/房野麻子

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