【なでしこの現状に迫る!|熊谷紗希×岩政大樹#3】若手は早く欧州に渡るべき。必要なのは「タイミングと勇気」

【なでしこの現状に迫る!|熊谷紗希×岩政大樹#3】若手は早く欧州に渡るべき。必要なのは「タイミングと勇気」

  • サッカーダイジェストWeb
  • 更新日:2017/09/15
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キャプテンを務める熊谷は、なでしこジャパンの若手に欧州のスタンダードを伝えている。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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欧州での日本人の評価は高い、と熊谷は言う。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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熊谷が欧州へ渡ったのは2011年。「世界大会に一度も出ていない状態でトライアウトに行きました」。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

岩政大樹 女子サッカーの世界は、海外の代表チームが進化してきたと感じています。日本がワールドカップで優勝した頃は、他のチームがそこまで緻密ではなく、日本が組織的に戦えばリードできました。しかし、他国も組織力をつけてきて、本来持っていた身体能力の差が現れる状況になっている。なでしこが変わらなければいけない時代になっていませんか?

熊谷紗希 組織だけで勝てないのは確かです。なでしこジャパンの生命線である技術面も、各国がすごくレベルアップしています。例えば、フランスは今の代表の主軸がクレールフォンテーヌの一期生で、組織力も高いし、技術もある。U-20ワールドカップでも、日本は準決勝でフランスに負けているんです。巧いし、速いし、強い。日本はどうやって戦うのかと思うことはありますよ。
でも、日本の本当に細かい技術的なこだわりは、絶対になくしてはいけない。そのベースにプラスして、個の力にフォーカスを当てないと勝てないと感じています。

岩政 ヨーロッパと日本の違いも分かっている熊谷選手の、なでしこにおける役割は大きくなっていますね。若手へのアプローチは?

熊谷 思ったことは伝えていますし、それぞれの良さを出せるように意識しています。若い選手は周りを気にするんですが、委縮してプレーして上手く行くわけがない。そこは自分が年長者になった今、本当に自由にやってほしいと思っています。
海外に行ってみたいと言っている選手も何人かいるので協力したいとも考えています。ドイツはふたつくらい、フランスだとみっつくらいはコンタクトがあるから、練習参加を勧めています。普段から海外の選手と対戦していると慣れるじゃないですか。スピードやパワーで劣るなかでどう生きるのかを日常的に考えられますし。

岩政 なでしこジャパンにも好影響を与えるでしょうね。海外組は、なかなか増えないんですか?

熊谷 受け入れ先は結構あると思うので、あとは選手個々の思い切りです。もしかすると、なでしこジャパンに入りたての選手たちは、「日本でまだ何もしてないのに」という気持ちがあるのかもしれません。でも、私個人の意見としては、「そのうち通用するようになるから、まず行っちゃえばいい」ですね。私なんて世界大会に一度も出ていない状態でトライアウトに行きましたから。岩政 思い切りが良い方なんですね。

熊谷 ですね。移籍した当時は20歳だったし、失うものもなかった。大学を卒業してから行こうかなとも思っていたんですけど。

岩政 ご自身の経験からも、早めにヨーロッパに出たほうがいいと?

熊谷 ヨーロッパでは日本人の評価が結構高いんです。細かい巧さを持っているし、周りの状況も見て動けるのは日本人だからできること。受け入れてくれるクラブはたくさんあると思います。必要なのは、タイミングと勇気です。

岩政 前目の選手は特長を出しやすいですが、守備の選手は違いますよね? それでも、6年間もヨーロッパでプレーできているのは、日本時代とは対応の方法を変えたからですか?

熊谷 身体能力では勝てないから、いかに裏のスペースで勝負しないかを考えました。私は読みで生きているところがあるので、ボランチで使われたら攻守の切り替えのところで1本目のパスをカットしたり、奪った瞬間に誰につなぐかを考えたりします。

岩政 読みという言葉は難しいですよね。さわりしか知らない人には、ストレートかカーブかヤマを張っているような感じに思われてしまいます。でも、ちょっと違うじゃないですか。読みといっても、自分でやられちゃいけないところを睨みながら、ギリギリで判断しますよね。

熊谷 そうですね。ヤマは張っていません。いくつかの判断材料を持ちながらプレーしています。アンカーを任される時は、最終ライン前の潰し役として周りにいる敵は見ますし、こぼれ球への反応は絶対に負けないようにしていますね。

岩政 2ボランチの時だと?

熊谷 センターバックにバイタルエリアを任せます。基本的には、私は前で勝負したい。後ろをケアしていて自分のマークしている選手にサイドチェンジされたら私の責任なので。

岩政 まずは、自分の前にいる選手にやらせないことを意識しているわけですか。

熊谷 自分の後ろは「担当じゃない」くらいの割り切りはあります。チームの約束はあまりないから、個人の判断でやっています。岩政 監督には、あまり細かいことを言われないんですね。

熊谷 あまり約束事はなくて、例えばFWが外に追い込むか、中に入れさせるかも決めていないんです。ただ、やられた結果を持って言われますね。怒られるというか「お前のところでやられたな」と。

岩政 戦術的な緻密さは、監督によって変わりますか?

熊谷 ひとによって変わりますが、緻密な監督でも、日本のように守備について細かくは言いません。

岩政 チームの約束事がきっちりしている監督と、あまりない決めない監督では、どちらのほうがやりやすいですか?

熊谷 私はある程度決めてほしいですね。ただ、試合中に出てくるエラーはピッチ内で解決しなければいけないので、ダメだった時にはチームメイトを捕まえて速攻で修正します。監督の言葉を無視して味方を下げることもあります。

岩政 守備が機能しない時の意見交換は、ヨーロッパと日本では違います?

熊谷 違うかもしれません。フランスだと私の聞き方は「今の行ける?」とシンプルですが、日本ではチームメイトが何を考えていたのかまで聞きます。日本のほうが話す内容は細かいですね。

岩政 問題が起こった際のコミュニケーションは、なでしこジャパンのほうがとる?

熊谷 ええ。ディフェンスラインや横の動きは、なでしこのほうが細かいです。

<<#4に続く>>

【プロフィール】
熊谷紗希(くまがい・さき)/1990年10月17日、北海道出身。小学3年次に本格的にサッカーを始め、真駒内中を卒業後は、親元を離れて宮城県の常盤木学高に進学。高校2年次になでしこジャパンに選出され、2011年の女子ワールドカップ優勝、2012年のロンドン五輪準優勝に貢献。クラブレベルでは09年から浦和レッズレディースに所属し、11年にドイツにFFCフランクフルトへ。13年からフランスのリヨンに在籍し、15-16シーズン、16-17シーズンと女子チャンピオンリーグを連覇している。

岩政大樹(いわまさ・だいき)/1982年1月30日、山口県出身。J1通算290試合・35得点。J2通算82試合・10得点。日本代表8試合・0得点/鹿島で不動のCBとして活躍し、2007年からJ1リーグ3連覇を達成。日本代表にも選出され、2010年の南アフリカW杯メンバーに選出された。2014年にはタイのBECテロ・サーサナに新天地を求め、翌2015年にはJ2岡山入り。岡山では2016年のプレーオフ決勝に導いた。今季から在籍する東京ユナイテッドFCでは、選手兼コーチを務める。

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