行き過ぎた指導で、子供を死なせてしまう「指導死」。横暴な教師はなぜ減らないのか

行き過ぎた指導で、子供を死なせてしまう「指導死」。横暴な教師はなぜ減らないのか

  • ハーバー・ビジネス・オンライン
  • 更新日:2018/01/12
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「指導死」親の会共同代表、大貫隆志氏。大貫氏自身も、「指導死」により息子を失った

◆不適切な生徒指導が招いた子どもの自殺は「指導死」と呼ばれることがある

福井県池田町の中学校で2017年3月、中学2年の男子生徒が校舎から転落した。

自殺と見られている。学校事故等調査委員会は、副担任による叱責がくりかえされていたことを指摘。また、目撃した生徒の話として、担任が「身震いするくらい怒っていた」という。

当時の教務主任が担任に対して「正しいことであっても、男子生徒には伝わらない」として、指導方法を考えるように促していた。

また、他の教員から「そんなに強い口調で言わないといけないのか」と言われていることもわかった。母親は「教師によるいじめ」が自殺の原因だと訴える。

こうした不適切な生徒指導が招いた子どもの自殺は「指導死」と呼ばれることがある。

自らの次男、陵平くん(当時13)を、学校内でお菓子を口にした際の、指導に起因した自殺で亡くし、のちに「指導死親の会」を設立した、共同代表の大貫隆志さん(60)が07年に作った言葉だ。

「当初は団体を4人でやっていましたが、この問題の反応がよくなかったので、言葉と定義を作ったほうがいい、ということになり、考えたものです」

大貫さんによると、児童生徒が死に至るきっかけとして、

1)不適切な言動や暴力等を用いた「指導」を、教員から受けたり見聞きすること
2)妥当性、教育的配慮を欠く中で、教員から独断的、場当たり的な制裁が加えられる
3)長時間の身体の拘束や反省や謝罪、妥当性を欠いたペナルティー等を強要される
4)暴行罪や傷害罪、児童虐待防止法での「虐待」に相当する教員の行為ーがあること

と定義する。

「当初は、定義の1)だけでも説明できていたのですが、情報が集まってくるにつれ、見直しました」

2015年12月、広島県府中町の中学3年の男子生徒(当時15)が誤った万引きの記録に基づいて進路指導を受けた後に自殺した。

調査委員会は、事実誤認に基づいた生徒指導が自殺の要因とする報告書を提出している。万引きをしたのは別の生徒で、対応した教諭から口頭で報告を受け生徒指導部の担当教諭が作成した。そのとき、生徒の名前を入力ミスをしていた。

「このケースでは、もともとは中学3年のときに問題行動があれば高校推薦しないというルールだったものが、1年生のときからも含めると変更されていました。それを生徒には伝えない上、圧迫をかけてきたと言われています」

◆不適切な指導により、生徒の死に繋がったケースは30年間で73件

教育評論家の武田さち子氏の調査によると、平成に入ってから、不適切な指導が児童生徒の自殺に結びついたのは73件。このうち、暴力を伴うケースは18件で、19%のみ。暴力を伴わないほうが81%と多い。前出の2つケースでは暴力をふるってない。

指導が自殺に結びついたケースとしては、2012年12月、大阪市立桜宮高校のバスケットボール部のキャプテンが自殺したことがイメージしやすい。自殺した生徒は恒常的に体罰を受け、自殺前夜にも30~40回殴られていた。体罰を伴う苦痛によって自殺するのは社会問題として訴えやすい。

一方で、多くの人にとっては、暴力が伴わない指導が自殺に結びつくとは想像しにくい。しかし、子どもを精神的に追い詰める。代表例が、してもいないことを責める「冤罪型」だ。

「真っ当な生徒指導が自殺に結びつくのではないのです」

2013年3月、1年生の男子生徒(当時16)が鉄道自殺をした。部活動内でのトラブルが起きた2月に、メールでの言い争いがあったが、亡くなった生徒だけが指導の対象になった。

また、部員が事実と異なることを先輩や顧問に伝えたが、顧問はその話を鵜呑みにし、事実を確認することなく、一方的に指導。顧問は「もう誰とも連絡を取るな、喋るな、行事に参加しなくてもいい」と、理不尽な条件を出した。「見せしめの罰則」だ。

生徒の自殺の後、学校側は在校生を対象にしたアンケートを取ったが、遺族には知らせず、破棄。しかし部活内のアンケートに関しては、粘り強い開示請求の結果、11月、遺族側にアンケートが開示された。

「裁判所が文書提出命令を出したことは画期的です。アンケートの提出を巡って、これまでも行政側と遺族側が対立することがありました。その場合、裁判長が間に入って、公開範囲をさぐり、文書提出命令まではには至りませんでした。なぜ、北海道はそこまでガードしたのか」

また、いじめ自殺の場合は法律もあり、調査委員会が設置される。一方、指導死の場合は、文科省の「子どもの自殺が起きたときの背景調査の指針」があるものの、特段の定めはない。

ただ、平成以降、指導死では22件、16%しか設置されていないが、直近3年では14件中9件、64%で設置されている。

「親の会とつながったり、全国学校事故事件の弁護団と早い段階で連絡ができていいるためです」

指導死。この言葉に拒否的な教育現場もまだある。しかし、遺族による講演会も多くなってきた。また、日体大など大学の教員養成過程の授業にも、遺族たちが話す機会ができている。

<取材・文/渋井哲也>

【渋井哲也】
ジャーナリスト。「生きづらさ」のほか、インターネット・コミュニケーション、少年事件、ネット犯罪、自傷、自殺、援助交際などについて取材。講演活動も行う。近著に『命を救えなかった:釜石・鵜住居防災センターの悲劇』(電子本ピコ第三書館販)。

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