『民衆の敵』、なぜ豪華キャストなのに盛り上がらない?悔やまれる設定&演出のミス

『民衆の敵』、なぜ豪華キャストなのに盛り上がらない?悔やまれる設定&演出のミス

  • Business Journal
  • 更新日:2017/12/05
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篠原涼子、高橋一生、石田ゆり子ら豪華キャストをそろえ、テーマは昨年の東京都知事選挙以来、話題を集め続ける政治。前期の『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~』が好結果だったこともあって、『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』(フジテレビ系)への期待値は高かったが、平均視聴率は9.0%、7.1%、7.5%、7.6%、6.9%、6.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と低迷している。

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)には「衆院選の影響をモロに受けた」「篠原涼子の演技がいつも同じ」「フジテレビが嫌われているから」などの声が挙がっているが、いずれも最大の理由ではないだろう。視聴者から敬遠されている理由は、もっとほかのところにある。

●フジテレビならではの「極端な主人公」

不振の理由として真っ先に挙げたいのは、主人公のキャラクター設定。「ごく普通の人が市議会議員になる」でいいところを、わざわざ「ダサくて、品がなくて、貧乏な主婦が市議会議員になる」という極端な設定にしているのだ。

この極端な設定は、前期の『セシルのもくろみ』、前々期の『人は見た目が100パーセント』、前々々期の『嫌われる勇気』でも見られた設定で、フジテレビのドラマにありがちなものといえる。視聴者にしてみれば、極端な設定のため、スッと物語に入り込めないのだ。

一方、今期のドラマで共感を集めている『陸王』『コウノドリ』(ともにTBS系)は、「ごく普通の人」が主人公。だから視聴者は主人公のがんばりに感動し、「応援したい」「見守りたい」などと感情移入できる。日常生活における問題という身近なものを扱っているにもかかわらず『民衆の敵』が共感を集められないのは、物語以前の問題があるのだ。

さらに視聴者の感情移入を難しくしているのは、ある演出。これが制作サイドと視聴者の間に高い壁をつくっている。

●「登場人物がカメラ目線で話す」演出に疑問

それは「登場人物がカメラ目線で話す」演出。これはバラエティ番組、情報番組、報道番組などでは普通の演出だが、ドラマでは物語が分断され、視聴者の感情がリセットされてしまうため、ほとんど使用されない。視聴者にしてみれば、「それまで物語を見守っていたはずの登場人物から、いきなり話しかけられる」ことで戸惑ってしまうのだ。

不可解なのは、このイレギュラーな演出が前期の『セシルのもくろみ』でも使用されていたこと。つまり、「女性の共感を集められなかった」という苦い経験を次のクールに生かせていないことになる。

さらに気がかりなのは、『民衆の敵』の脚本を担う黒沢久子の存在。黒沢が今年手がけたばかりのウェブ配信ドラマ『東京女子図鑑』(アマゾンプライム・ビデオ)でも、同様のイレギュラーな演出があったのだ。

『東京女子図鑑』は、同時期に放送されていた同系統の恋愛ドラマと比較して、「『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)、『突然ですが、明日結婚します』(フジテレビ系)よりもおもしろい」という声も多かった知られざる名作。

しかし、もし脚本家と演出をそのまま『民衆の敵』に採り入れたのであれば、疑問を抱かざるを得ない。真偽はわからないが、脚本・演出ともに、本人のスキルを出しきれていないように見えるのだ。

●高橋一生が演じた「あざといシーン」

演出の面では、もう一点、高橋一生の扱いにも迷いが見える。1話、2話では、物語と無関係なヌードシーンを挿入したほか、その後も「指をなめる」などの想像力をかき立てるような演出を多用しているのだ。

いくら人気が沸騰しているからといって、ここまで露骨な演出では高橋一生ファン以外の民衆を敵に回しかねない。それに気づいたからか、回を追うごとにセクシーな演出は軽減されつつあるが、当初のあざといイメージを払拭するのは簡単ではないだろう。

篠原涼子が演じるヒロインは、「それって、おかしくないですか?」を武器に、正論をふりかざす佐藤智子。しかし、6話で市議会のボス・犬崎和久(古田新太)の策略で市長に担ぎ上げられたため、今後はそれが難しくなるだろう。同作が扱うのは、公共事業、税金、環境、介護、子育てなど、視聴者にとって身近な問題ばかりだけに、爽快な解決策を期待している人は多い。

佐藤智子のキャラは徐々に「ダサくて、品がなくて、貧乏な主婦」から「普通の女性」になりつつある。もし終盤に向けて「民衆の味方である政治家」に成長できたら、絶賛の声を集めるかもしれない。その可能性はまだ残されている。
(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

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