作業服の「ワークマン」が始めた新業態に若い女性も殺到する理由

作業服の「ワークマン」が始めた新業態に若い女性も殺到する理由

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  • 更新日:2018/09/26
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幹線道路沿いでよく見かける、主に工事関係者や作業員向けの衣服を販売している専門ショップ「ワークマン」。そのワークマンが開業した、アウトドアウェア専門の新業態「ワークマンプラス」1号店(東京・立川)がいま注目を浴びています。なぜ、作業服の大手ショップが、一般人向けのアウトドアウェアを置く専門店を始めたのでしょうか? フリー・エディター&ライターでビジネス分野のジャーナリストとして活躍中の長浜淳之介さんが、現場に直接足を運んで取材を重ね、その人気ぶりと理由について詳しく分析しています。

作業服最大手「ワークマン」の新業態、アウトドアウェア専門店にチャレンジした東京・立川市の「ワークマンプラス」1号店が好調なスタートを切っている。

「ワークマンプラス」は9月5日、多摩都市モノレール・立飛(たちひ)駅に直結するショッピングセンター「ららぽーと立川立飛」3階にオープンし、初日はレジ通過で700人ほどが来店。初日の売上は260万円で、通常のワークマン店舗の初日の約1.9倍と倍増に近く、坪あたりの売上高だと約3倍になったという。

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ワークマンプラス店内

「店頭でアンケートを実施したところ、お客様の4割から5割がワークマンの店に初めて来た人で、想像した以上に新しいお客様がいらっしゃっている」(ワークマン新業態開発部・鈴木俊輔マネジャー)と、同社では大きな手応えを感じている。

年間売上目標の1億2000万円に向け、視界は良好だ。なお、通常のワークマンの平均的な売上は1店舗あたり1億円強となっており、決して無理な目標設定ではない。オープンから2週間を経過して、顧客単価は約3000円。来店者は、近隣の立川市、国分寺市、東久留米市からが多く、交通手段は車とモノレールで9割を占める。既にリピーターも付いてきているそうだ。

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ワークマンプラスの案内板

顧客の男女比は男性55%に対して女性45%。通常の「ワークマン」では男性80%に対して、女性は20%ほどにすぎないので、女性客の比率が非常に高くなっている。また、通常の店では中高年が中心であり、あまり見かけなかった20代の顧客が多く来店していて、同社では顧客層の広がりに喜んでいる。

「作業服」が「アウトドア」に使える。気づいたのはネットユーザーたち

作業服とアウトドアウェア。一見無関係に見えるが、ここ数年SNSなどを通じて、ワークマンの商品が釣りや登山、ランニング、バイクを乗る時に使えると評判になっていた。

ユーチューバーも、体を張って検証する動画を続々とアップしており、例を挙げると「日豪釣りチャンネル」(18年2月6日公開)では氷点下30℃の厳寒のカナダにわざわざ旅行して、ロッキー山脈・バンフ国立公園の山の上でも、ワークマンの防寒着に保温効果があったと報告。「霞ブラザーズ」(18年6月22日公開)でも、ワークマンのレインスーツを着用して、ガーデニング用のホースにストレートのノズルを取り付けた激しい勢いの水を浴びても、撥水機能により体の中が濡れない防水効果が確認されている。

「ワークマンプラス」では、ワークマンの商品群のうちで、アウトドアに対応できる「フィールドコア」、「ファインドアウト」、「イージス」の3ブランドに特化して展開している。

これら3ブランドは、17年3月期に30億円、18年3月期には60億円に達しており、19年には115億円を計画。倍々ゲームで伸びている。

元々作業服なので安価で動きやすく、確かな高機能を有し、街で着ても違和感がないデザイン性を持ち合わせている。これが「ワークマンプラス」の商品が人気の理由である。

「ワークマンプラス」が立ち上がるまで

それでは、どういった経緯で「ワークマンプラス」は立ち上がってきたのだろうか。

4、5年前からワークマンでは、人口密度の低い地方、特に東北で、一般の高齢者の顧客が増えていることに着目。理由を分析したところ、過疎地ではそもそも衣料品を買える店が少ないことに気づき、コンビニやスーパーも出店を嫌がる地域に出店を加速。小商圏の高齢者が普段着としても着られるように、作業着を改良していった。

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従来のワークマン店舗

ワークマンの店は全国に827店あるが、その結果、口コミでバイクに乗る人たちにも購買層が広がり、既存店に一般の消費者が普通に来店するようになってきた。さらには、ストレッチ素材のレインウェアが、釣り、登山、ハイキングのようなアウトドアにも使えるということで、スポーツ全般にユーザーが広がりを見せてきた。

一方で、市場の流れとして、従来の地味な作業服を好んで着る人が、特に若い人では少なくなってきた。そうでなくても3K(きつい、汚い、危険)と言われ、若い人が集まりにくい建設などの現場では、機能性を備えていればおしゃれな色や柄の服装を容認しようという方向に変わってきている。

これを、“作業服のスタイリッッシュ化”と作業服メーカーでは呼んでいて、従来型のユニホームにこだわってきた現場監督も、服装自由化のトレンドに抗えなくなってきている。国の事業のような大きな現場では今でも従来型ユニホームが根強いが、それ以外では若い人を集めるためにスタイリッッシュ化した作業服が認められてきた。

デニムの上下セットなど、かつての作業服では考えられなかったが、今のファッショナブルな作業服では、一番の売れ筋である。作業服とカジュアルウェアの間にあった垣根が、溶解してきたのだ。

浮上した「一般向けブランド」出店のアイデア

そこで、一般ユーザーに人気の高い、3ブランドに絞ってアウトドアウェア専門店を出店してみてはどうかというアイデアが浮上してきた。

1号店を設けた東京郊外の立川は周囲に団地も多く、モノレール沿線には大学、高校、専門学校など学校も数多くあって部活などにスポーツ用品の需要が見込める。近くの国営昭和記念公園はジョギングやサイクリングのメッカにもなっており、泉と柴崎の市民体育館はモノレールの駅名にもなっていて容易にアクセスできる。さらに、集客力の高い「ららぽーと」に入居しておりアウトドアウェアを販売するには好立地と見受けられた。

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ららぽーと立川立飛

「アウトドアやスポーツのブランド、バイク用品は機能性が高いので、値段も高いのです。スポーツを始めてみたいと思っても、いきなり高いウェアを買うのはハードルが高い。そういった時に、ワークマンプラスなら安価で買えます。アウトドア入門着として、使っていただければと提案しました」(前出、鈴木氏)。

要は、運動不足なのでちょっと走ってみたい、本格的な登山までは難しいけれどまずはハイキングに行ってみたいと考えているような、アウトドア、スポーツのライトユーザー向けに、低価格で機能性ウェアを売る専門店が意外にも存在していないというのが、「ワークマンプラス」の着眼点なのである。

ゴールドウイン、ミズノ、デサントのようなアウトドアやスポーツの専門メーカーより、半額以下の価格を目指す。

まず「ワークマンプラス」の商品を着てアウトドアにチャレンジしてもらい、スポーツ人口の裾野を広げる。

これから2020年の東京オリンピックに向けて、健康増進が日本の国家的課題であり、東京都の課題でもある。そうした時流にまさにマッチした提案ではないだろうか。

「3ブランド」の売れ筋商品は?

「ワークマンプラス」で販売されている3ブランドの売れ筋を見ていこう。

「フィールドコア」では、アウトドアにもタウンユースにも使える商品が揃っている。

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フィールドコア エアロストレッチジャンパー

最も売れるのは防寒機能に優れた「エアロストレッチジャンパー」。ストレッチ素材で生地が伸びるので動きやすい。保温効果のある中綿入り、裏側に風を通しにくいようにウレタン加工を施したポリエステルのジャンパーである。

また、「ウォームパンツ」は、裏にマイクロフリースという細かいフリースを張り付けた、デニムの防寒パンツでこちらも人気だ。

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フィールドコア ストレッチマイクロウォームパンツ

「ファンドアウト」はスポーツシーン、トレーニングにも使える商品群。今、一番出ているのは耐久撥水という、50回洗濯しても撥水機能が落ちない「ウォームジャケット」である。裏にフリース(マイクロフリースではない)を張って防寒性を高めている。

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以上の商品は、価格2900円となっている。

「イージス」は防水機能を高めたブランド。一番売れるのは、圧倒的にレインウェア「防水防寒スーツ」(上下)だ。これは中綿入りで防寒の性能が高いうえに、生地の加工技術により、汗をかいても外に放出してくれる細かい孔を散りばめ透湿機能が備わっている。価格は6800円。

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イージス 防水防寒スーツ

現在は冬物が揃っているが、夏のメインとなるのは「コンプレッションウェア」。これは体にピタッとはまるナイロン素材の商品で、自分の汗によって体をひんやりとさせてくれる冷感効果を持つウェアだ。

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コンプレッション・クールウエア

その他にも、妊婦や赤ちゃんをおんぶ、だっこする女性に、「ファイングリップシューズ」が売れている。これは厨房用に、水や油で滑りにくいように開発した靴だが、SNSによる口コミで同社が想定していなかったシーンで使われるようになった。

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ファイングリップシューズ(1900円 税込)

「妊婦さんは足を滑らせて転んだら一大事ですからね。お客様からいろんな使い道を教えてもらっています」(鈴木氏)。

顧客の声を聞いて商品の改良も行っている。「イージス」の「防水防寒スーツ」はバイクに乗る人の用途は考えていなかったが、ここ2年で股から水が浸入しないように生地を二重にしたり、風を受けてパタつかないようにマジックテープで抑えたりするような改良を行った。

当初想定外だった用途に対応した結果、アウトドアウェア専門店「ワークマンプラス」に発展した側面もある。

低価格で商品が提供できる理由と今後の課題

年商797億円(2018年3月期、前年同期比7.3%増、既存店4.7%増)のワークマンは作業服業界のガリバーだが、シェアは市場の3割ほどでまだまだ伸ばせると考えている。しかし、低価格のアウトドアウェアは全く未開拓な市場で、より以上の成長性が見込めるというのが同社の見立てだ。

なぜ、安く高機能の商品が提供できるかというと、人件費、不動産価格の安い海外で自社生産をしているからで、中国はもちろん、カンボジア、インドネシア、ミャンマー、ベトナムに工場が広がっている。

中間流通の卸売、商社を経由していないので、マージンが省かれ、安く提供できる。

商品企画から生産、販売まで一貫して行うSPA(speciality store retailer of private label apparel)=製造小売業の業態は、GAP、ZARA、ユニクロなどが知られるが、“作業服のユニクロ”の異名で呼ばれるワークマンも、これを実践している企業である。

しかし、ファストファッションであるGAP、ZARA、ユニクロとの違いは、基本流行を追うファッション商品ではなく、機能性重視の実用衣料であることだ。どちらかというと下着メーカーのグンゼ、ワコールに近い。

グンゼやワコールにも、デザインが進んだ結果として、アウターとしても着用できる商品群が存在する。

グンゼ、ワコールが下着業界のガリバーで、デイリーに使う商品ゆえに景気に関係なく安定しているのと同様に、職人がデイリーに使うワークマンも安定した企業だ。

しかもワークマンの場合、「ワークマンプラス」により、低価格アウトドアウェアというブルーオーシャンが見えてきた。「ワークマンプラス」は年内にもう1店を出店する予定だが、これも順調に売り上げるようだと、数年以内に100店舗の出店も可能だろう。

現在、ワークマンはデザイナーを雇っていないが、アウトドアの分野で大きく伸ばそうとするなら、もう少しデザイン性を高める必要があるのではないだろうか。優秀なデザイナーを採用すれば、さらに成長は加速する。課題があるとすれば、それくらいだ。

photo by: 長浜淳之介

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