森ゆうこ議員「民間人を犯罪者扱い」してもお咎めナシの異常さ

森ゆうこ議員「民間人を犯罪者扱い」してもお咎めナシの異常さ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/10/23
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慣例の国会質問の内容通告が遅れたと官僚たちにリークされた、国民民主党の森ゆうこ議員の振る舞いが、ネット上でちょっとした話題になっている。

それはそれとして、筆者がより大きな問題として気掛かりなのは、同議員の民間人に対する根拠乏しき誹謗中傷発言だ。日本国憲法は第51条で、国会議員の院内での発言などについて、院外で責任を問われないという「免責特権」を保障している。

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それゆえ、原典となった新聞記事に対する名誉棄損裁判が進行中で、報じた当の新聞社が当該人物のことを書いたわけではないと弁明している記事を根拠に、いち民間人を、森議員が犯罪者扱いしたことが何ら責任に問われない、というのである。しかも問題の発言は、NHKが国会中継として放送している最中に行われたもので、誹謗中傷の対象にされた民間人が受けたダメージは計り知れない。

今週は、国会や国民民主党への信頼を損ないかねない、森発言の是非と善後策について考えてみたい。

森ゆうこ議員の“決め付け”発言

森ゆうこ議員と言えば、あの台風19号が関東に迫っていた10月11日の振る舞いが今、SNSなどネット上で注目されている。森議員は新潟県選出、当選3回の参議院議員だ。自由党を振り出しに民主党、国民の生活が第一、日本未来の党、生活の党、生活の党と山本太郎となかまたち、自由党を経て、現在は国民民主党に所属している。

国会では、閣僚らの正確な答弁を担保するために、質問者が事前に質問内容を政府に通告し、官僚が想定問答を策定することが慣例となっている。一方で、質問通告が遅れると、官僚らが深夜まで勤務を強いられるため、働き方改革の観点で問題視されることもある仕組みだ。

森氏のケースでは、SNS上で、深夜までかかって五月雨式に質問内容が伝達されたため、官僚たちが帰宅困難になったと不満を漏らしているのに対し、森氏自身はツイッターで、11日の「午後4時半に通告済みだ」として、慣例上の締め切りだった「午後5時」以前に通告を済ませており、問題はなかったという立場を採っている。ただ、この時、森氏が示したのは14のテーマが記された箇条書きの質問項目だけだったうえ、質問項目が国民民主・国会対策委員会、参院事務局、内閣総務官室などを経て、各省庁にわたる段取りだったため、どこかで滞り、官僚たちに台風前夜の深夜勤務を強いる結果になった可能性がある。

この件に関しては、国民民主党の玉木雄一郎代表が12日にツイッターで「我が党所属の森ゆうこ議員の質問通告が遅れ、霞ヶ関の皆さんに遅くまで、待機、作業を強いているとの指摘をいただきました。事実であれば、大型の台風が接近している中問題であり、党を代表してお詫び申し上げます。なお、本人は16時半には提出したとしていますが、週明け改めて事実関係を調べます」と謝罪する騒ぎになっている。が、この騒ぎは、筆者が本コラムで今日取り上げたい話ではない。

筆者が取り上げたいのは、国会議員が、議院(国会)で行った演説・討論・表決について、院外で責任を問われないとしている、「免責特権」に関連する問題だ。分かり易く言えば、国会の審議の際に行ったことであれば、“シャバ”では刑法や民法などの規定に照らして責任を問われることはないのである。

そこで、森ゆうこ議員の発言を説明しよう。参議院のインターネット審議中継のアーカイブでチェックしたところ、発言は10月15日の参議院予算委員会で、森議員が国家戦略特区を話題にした際に飛び出した。突然、国家戦略特区ワーキンググループ(WG)の原英史・座長代理が不正行為を行ったかのような発言をしたうえで、「(原氏が)国家公務員だったらあっせん利得、収賄で刑罰を受ける」と決め付けたのだ。

森議員は発言の根拠として、今から4ヵ月以上前の6月11日付の毎日新聞に朝刊の一面トップ記事として掲載された相関図などをパネル化したものを掲示していた。相関図は原氏の顔写真が、ネット中継でもそれと判別できるほど大きく引き伸ばされていた。つまり、森発言は毎日新聞記事の孫引きだったのだ。

不自然な毎日新聞のソース

ここで必要なのは、原典である、記事の信頼性の検証だろう。見出しは、「特区提案者から指導料 WG委員支援会社 200万円、会食も」というものだ。

記事の本文をよくみると、ストレートに原氏がおカネを受け取ったとの表現はしていないものの、原氏の顔写真を掲載し、おカネを受け取ったコンサルティング会社の住所が国家戦略特区ワーキンググループの原英史・座長代理が代表を務める政治団体と同じマンションにあるなど密接な「協力関係」にあると強調し、見出しで「200万円」と「会食も」と並べることで受け手はいずれも委員(原氏)本人と印象づけ、原氏が「公務員なら収賄罪に問われる可能性もある」という大学教授のコメントを載せるなどして、200万円の現金もしくはその一部を原氏が受け取ったとしか読めないものになっている。

毎日新聞自体は、日頃から権力の横暴を果敢に検証するジャーナリスト魂に溢れる記事が多く、新聞記者の勲章である日本新聞協会賞をたくさん受賞している新聞だ。筆者も敬意を払っている新聞の一つである。しかし、一昨年のモリカケ疑惑以降、国家戦略特区と言えば悪いものという思い込みでもあるのか、その後も原氏に関連する記事は、首を傾げざるを得ないものが目立った。

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原氏にとって、こうした記事が堪えがたかったことは想像に難くない。同氏は6月25日、名誉棄損を理由に損害賠償を求める訴訟を提起した。これに対し、毎日新聞社が8月23日付で裁判所に提出した答弁書は、筆者も驚かずにはいられない内容だった。問題の記事はコンサルティング会社がコンサルタント料を受け取ったことを報じたものであり、「原さんが受け取ったことを報じたものではない」と釈明していたからである。

そもそも、コンサルティング会社がコンサルティング料を受け取るのはビジネスのうえで当たり前の話だ。新聞が一面トップで報じるようなニュース性がある案件とは考えられない。いったい「収賄罪に問われる可能性がある」という大学教授のコメントは何だったのか。記事の編集の意図が理解できなくなる不自然な答弁書と言わざるを得ないだろう。

いずれにせよ、公平に見て、毎日新聞の6月11日付の記事を根拠として何かを主張するのは、あまりにも乱暴な行為と言わざるを得ないだろう。

マスメディアの世界では、政府や警察、大企業など権威ある存在をニュースソースとして、そのニュースソースが発信していることだとして、そのニュースの真贋に関する責任をニュースソースに帰属させる報道スタイルを「客観報道」と言う。これに対して、そうした報道ばかりではニュースが偏り、権威の代弁ばかりになりかねないので、別の報道スタイルも必要だということで、対局として「調査報道」というやり方が存在する。「毎日新聞の調査によると」とか「NHKが独自に集計したところ」といったスタイルのニュースソース表示を伴うのがこれである。

毎日新聞社の答弁書の内容が気になって、関係者を取材したところ、原氏報道は毎日新聞が調査報道に拘り過ぎて、何か大きなニュースを調査報道で発信しようとした結果起きたのではないかという見方が存在した。

国民民主党は我関せずを貫くが…

話を戻すと、国会で国会議員が審議に使う資料に、相応の確認・検証作業が不可欠なのは当然のことだ。森発言は、信頼に値しない報道を原典にひいた孫引き発言であり、無責任といわざるを得ない。

報道を引用するならば、その内容を精査し、これまで原氏が毎日新聞の記事を虚偽報道だと繰り返し主張していたことや、原氏が毎日新聞社を相手取って名誉毀損訴訟を提起していること、さらには、その訴訟の答弁書の中で毎日新聞社が「原さんが金銭を受け取ったことを報道したものではない」と主張したことを勘案すべきだった。

国会の信頼性という観点から見ても、国会審議をいい加減な根拠に基づいて展開するなどあってはならないことだ。そのあってはならない行為が、森ゆうこ参議院議員発言であり、森議員は相応のペナルティを受けるべきだろう。

しかし、そこに立ちはだかるのが、前述の国会議員の「免責特権」である。これまでの判例などから見て、原氏が毎日新聞社と同じように、森議員を訴えても、裁判所が取り上げる可能性は乏しい。国会議員の「免責特権」は、憲法に規定されており、非常に重いものだからである。

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では、どうすれば、よいのだろうか。

本当ならば、国民民主党が所属議員の杜撰な議員活動の問題として除名するなど厳しい処分を下すべきである。だが、不可解なことに、国民民主党の議員たちは「本件は個人的問題だ」として、動きがとても鈍い。こうした鈍さは、国民民主党への有権者の信頼を損ねかねず、迅速に対処しようとしないのは理解に苦しむ。

こうなると、目を向けざるを得ないのが、「免責特権」の規定の内容である。「免責特権」は、院内での発言の責任を院外で問われることはないというものなので、院内での処分対象にはなり得るのだ。つまり、議院が処分に動けば、比較的容易にけじめをつけられる可能性があるわけだ。

そこで、今回のケースでは、事情をよく知る有志が集まり、参議院議長に森議員懲罰を求める請願書を出すこととし、そのための署名活動を行う動きがある。及ばずながら筆者も発起人に名を連ねる決心をしたところだ。

免責特権があるからと言って、国会議員が安易に人を犯罪者呼ばわりすることはあってはならないはずである。読者にも知ってもらい、考えて貰いたいと感じて、あえて本コラムで取り上げてみた。興味のある方は署名運動のサイト(http://chng.it/k5rCD2jQKn)をご一読のうえ、賛同したら署名していただきたい。

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