習政権、欧米メディアと手を組む思惑

習政権、欧米メディアと手を組む思惑

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/11/14
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【北京】中国の習近平国家主席は同国についてメディアにもっとうまく伝えてほしいと考えている。最近では外国に協力者を増やしつつあるようだ。

習主席は国営メディアに対し、「世界がより多層的で華やかな中国を見ることができるよう」、また中国を世界平和の貢献者として紹介し、国外における中国の影響力拡大に寄与するよう指示している。

中国は以前から、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)やニューヨークタイムズ(NYT)など外国の新聞に国営メディアの英語版の一部記事を料金を支払って掲載。オーストラリアやインド、英国のメディアにも同様のPR記事を載せている。

中国政府は欧米メディアが描く中国の社会像を不公正だと主張することが多いが、習政権は外国パートナーとの共同制作への支援を強化してきた。中国の文化や技術発展、インフラ開発計画などに焦点を当てたドキュメンタリー番組などを後押ししている。

その中の1つが、米ディスカバリーチャンネルのアジア部門が制作した3部作「中国:習氏の時代(China: Time of Xi)」だ。習氏が指導者として毛沢東以来の権威を固めた共産党大会閉幕直後の10月下旬に中国で放送された。

この番組には習氏や同氏の政策を絶賛する声が散りばめられている。「習近平氏は大きな夢を抱いた指導者」と語るオーストラリアのケビン・ラッド元首相や、中国国営放送でホスト役を務めるロバート・ローレンス・クーン氏らの言葉が紹介される。

エコノミストのダンビサ・モヨ氏は番組の中で、習氏の巨大経済圏構想「一帯一路」を「非常に画期的なアイデアの1つ」だと絶賛している。

このドキュメンタリー番組では、汚染など中国が抱える問題にも言及する。だが習氏の言論統制や独裁への傾倒など、より物議を醸しそうな話題は避けている。

ディスカバリーのカルン・アルヤ氏は「われわれは善や悪についてコメントしたり、それを提供したりする立場にはない」とし、「われわれはインフォテインメント(娯楽情報番組)の業界だ」と述べた。

こうしたプロジェクトの多くは、国営の中国中央テレビ(CCTV)など、政府のプロパガンダ部署関連の機関から支援を受けている。外国メディアとの提携により、中国は番組内容への影響力を高めるとともに、尊敬を集めるメディアやプロデューサーのお墨付きを得ることになる。

外国メディア企業にとっては共同制作により、検閲が厳しく撮影が妨げられることも多い中国で、巨大な視聴者層にアクセスできるようになる。またコストがかさみ、複数の提携先からの支援が必要なドキュメンタリー制作で、新たな資金源を確保することにもなる。

中国との合弁事業に関与するプロデューサーの一部は、中国には海外での地位向上への欲求とそのためのリソースがあり、ドキュメンタリー制作に関心を深めることは歓迎すべき動向だと話す。

ディスカバリーは「習氏の時代」について、社内チームが構想を担当し、中国共産党中央宣伝部傘下の五洲伝播中心(CICC)から調査やアクセスの面で支援を受けたとしている。CICCは中国国内のほか、ディスカバリーが進出していないアジア太平洋地域における配給権を取得した。CICCは外国の制作パートナーに関するコメントを控えた。

中国共産党機関紙の人民日報は、同番組を「中国発展の軌道や思想、世界へのインスピレーションに関する深い解釈」だと評価した。

ディスカバリー・ネットワークスのアジア太平洋の制作・商業パートナーシップ担当バイスプレジデント、ビクラム・チャナ氏は、同社の取り組みはハリウッドと報道の両方の要素を盛り込んでいると説明。「われわれは視覚と感情に訴える語り手」とし、「CICCでもなければ、BBCやCNNでもない。そのまさに中間だ」と話す。

ディスカバリーは1997年以降、中国でドキュメンタリー番組を制作。毎週放送している1時間番組「アワー・チャイナ(Hour China)」では、野生動物や、テクノロジー・エンジニアリング分野における功績や文化について伝えている。

「習氏の時代」撮影後の編集作業に関わったシンガポール在住のプロデューサー、ケニー・プン氏は「われわれと彼らが対立する話は多すぎる」とし、中国の地位が世界で高まるのに伴い、中国と共同制作に関わる人々が「対話を和らげる一助になる」と話す。

中国のパートナーと組む制作会社はコンテンツを慎重に選択し、通常は文化や旅行、歴史といったテーマを選ぶ。例えばパンダを題材にしたディズニーの「ボーン・イン・チャイナ(Born in China)」や、文化やインフラを取り扱ったナショナル・ジオグラフィックの「チャイナ・フロム・アバブ(China From Above)」といった、野生動物や旅行関連の映画だ。

「習氏の時代」は中国の指導者に焦点を当てた点で珍しい。あるプロデューサーは「(共産党支配が始まった)1949年以降の歴史については手を付けないようにした。厄介な事態になるだけだから」と話す。

一見すると無害なテーマがトラブルを巻き起こす場合もある。米公共放送PBSやCCTVのドキュメンタリー放送局が資金を出して共同制作した自然ドキュメンタリー番組「ビッグ・パシフィック(Big Pacific)」では、海洋生物のイメージを巡り問題が生じた、と米国人プロデューサーのジョン・カラム氏は明かす。

中国側はライバル国である日本からの映像が多すぎるとして異を唱えた。プロデューサーらは日本の領海で撮影したクマノミの映像部分に関して、撮影場所に触れないことで中国側の懸念に対応したという。

CCTVはコメントの要請に応じていない。

習氏が唱える「中国についてうまく語る」ことを外国人に促す取り組みは、特に現代版シルクロードと呼ばれる「一帯一路」構想で目立つ。中国は外国ジャーナリスト向けのフォーラムを開催し、習氏の政策ビジョンに基づき「メディア協力の素晴らしい一章」を作り上げるよう誘導する。

国有テレビ、江蘇省広播電視総台(JSBC)の社員は最近のある記事の中で、外国人ホストは信ぴょう性も説得力もあるため、中国について語るのは外国人のほうが優れていると述べた。

同社はBBCが今年放映した「テールズ・フロム・モダン・チャイナ(Tales From Modern China)」シリーズにBBCと共に資金を提供した。番組では中国のスーパーコンピューターなどを取り上げている。

あるJSBC関係者は、外国人スタッフと共同制作することで、「前向きなエネルギーにあふれた中国のイメージを伝える」ことを目指すと述べた。

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