日本の航空宇宙産業を支える縁の下の力持ち - 航空宇宙向けプリント基板への設備投資を進めるOTC

日本の航空宇宙産業を支える縁の下の力持ち - 航空宇宙向けプリント基板への設備投資を進めるOTC

  • マイナビニュース
  • 更新日:2017/11/14
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●積極的な設備投資で航空宇宙産業への攻勢を強化

○世界的に市場拡大が続く航空宇宙産業

近年、世界的に宇宙を活用しようという取り組みが進んでおり、市場を牽引する米国では民間ロケットの活用が進み、その周辺産業含め、活況を呈するようになっている。こうした動きは日本でも2017年夏に日本初の民間宇宙ロケット打ち上げをインターステラテクノロジズ(IST)が狙うなど、徐々に盛り上がりを見せるようになってきた。

そうした航空宇宙産業の盛り上がりを影で支えようというのが、OKIグループに属する「OKIサーキットテクノロジー(OTC)」だ。同社は2016年7月に日本アビオニクスのプリント配線板事業を取得すると発表するなど、航空宇宙向け事業の強化をこの数年にわたって積極的に推し進めてきた。

「こうした事業強化の背景には、人工衛星の需要が今後、世界的に増していき、日本でもそうした需要が増していくことが予想されるため」と答えるのはOTCの代表取締役社長を務める西村浩氏。現在の宇宙産業は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が求めるような高機能・高付加価値・高価格だが失敗の確率が低いハイエンド市場と、ISTに代表されるような、民生品などを活用することで安価に宇宙を活用しようという2つの市場が別々に存在している状況だ。しかし、ハイエンド市場ばかりでは、市場の拡大は期待できない一方、宇宙という苛酷な環境に対して民生品を活用した際の故障リスクは減らしたい、という思惑を、宇宙を活用したいという企業が増えれば増えていくこととなり、この両者の距離が将来的に近づいていくことが予想される。「そうした市場が本格的に立ち上がった際に、高い品質を確保しつつ、価格競争力を確保しておく必要がある」(同)というのが現在の同社の宇宙航空産業に向けた戦略となっている。

「航空宇宙産業向けプリント基板のリーディングサプライヤを目指す」というのが現在の同社の目指すところの1つ。具体的には、将来的な話としてではあるが、JAXAが進める人工衛星やロケット開発・製造プロジェクトの多くで、自社のプリント基板を活用してもらうことを目指すとしており、これにより2016年度では4億円程度であった当該事業の規模を2019年度には18億円まで増やしていくという目標を掲げている。

○1億円を投じ、航空宇宙産業向けプリント基板の生産能力を拡大

こうした目標の下、日本アビオニクスが行ってきた宇宙航空分野向けプリント基板事業のほぼ100%引き継ぐなど、事業強化を図っているわけだが、そうした対外的な取り組みのみならず、自社の製造能力の増強に向けた設備投資や品質の向上に向けた取り組みなども忘れていない。

2016年11月より同事業分野向けを中心に約1億円の設備投資を進めており、最先端の画像処理機能などを搭載したパターン検査装置などの導入や、めっきラインの増設などが進められてきた。「毎年、全体としての設備投資の額は売り上げの10%程度を投じている。これくらい設備投資を行わなければ、設備産業であるプリント基板の事業は成り立たない」(同)ということで、もちろん安く手に入ることに越したことはないが、良い製品を作るためには、高くても良い装置を導入するという、メリハリの利いた投資が推し進められているのも同社が高品質などに強みを発揮できる背景にはある。

こうした設備を導入し、技術を高め、高品質化を推し進めてきた結果、現在、同社はJAXAが定める宇宙開発用信頼性保証 プリント配線板の区分において、従来の付則B(ファインピッチ用ガラス布基材ポリイミド又はエポキシ樹脂絶縁プリント配線板)ならびに付則E(フレックスリジッドプリント配線板)の一部から範囲を拡張した認定を得ているほか、新たに「付則A(ガラス布基材ポリイミド又はエポキシ樹脂絶縁プリント配線板)」、「付則D(ポリイミドフィルム絶縁フレキシブルプリント配線板)」、「付則F(CIC入りガラス布基材ポリイミド樹脂絶縁プリント配線板)」、「付則G(エリアアレイパッケージ設計対応プリント配線板)」、「付則H(高速信号対応プリント配線板)」の認定取得に向けた試験が続けられており、2018年3月にはそれらの認定試験がすべて完了する見通しだという。

●高品質を高い稼働率で実現することを目指し、IoTを活用

○IoTの活用で、稼働率向上やさらなる高品質化を目指す

ではなぜ、OTCが航空宇宙産業向けプリント基板にここまで注力するのか。最初は航空宇宙産業とは異なる産業分野での成長ももくろんでいたと西村氏は語る。しかし、未開に近い産業分野になれば、そこで用いられている言語や業界そのものの風習・文化が異なり、なれるのに時間がかかるという問題があった。しかし、航空宇宙産業については、すでに参入済みである一方で、求められる品質が高く参入障壁が高いことから、他社に先行して市場を確保できれば、伸びる市場を背景に、売り上げの拡大も期待できる、ということから注力することを決定したとする。

「宇宙のみならず航空分野向け技術を含め、いかに不良率を下げ、高品質なものを作っていくか、ということが重要になる」(同)というのが同社の基本的なスタンスであり、そのために現在は工場内でのIoT(いわゆるIIoT)の活用を積極的に進めようとしている。IoTについては、「航空宇宙産業向け、というだけでなく、高付加価値な製品を製造するためには必要な技術」としており、そのための組織改変を実施。技術本部の下に、IoTを活用した新たな保全を実現する試みとして、マルチホップ技術やセンシング技術の研究・活用を進める部隊を立ち上げるなど、単なる最適ラインの構築といった改革ではなく、最新技術を活用した次世代型とも言うべき生産性向上に向けた改革を推し進めている。

「人を大切にしつつも生産性改革を実現する」と語る西村氏からは、1年ほど前に話を伺った際の、「人を育て、技術を高め、顧客のニーズに愚直に対応していく」という姿勢からのブレはまったく感じられない。そんな同氏がこういった形の生産性の改革を口にするのは、2019年度に掲げている売り上げ目標の実現に向け、必要な数の人員を確保することが、昨今の日本の好景気を踏まえると難しい、という判断がある。「人を雇いたいけど、日本全体での人手不足なので、それも厳しい。自分たちが頑張れる範囲の外の問題であり、忸怩たる思いがある。そうした人員の大幅な増加が見込めないということを踏まえ、事業の拡大を図っていくためには、生産性の改革、工程の自動化、パートナーの活用などの生産拡大に向けた方法がある中でも、自動化を含めた形で生産改革を進めていく必要がある」と同氏は、今回の生産性改革に踏み切った思いを語る。

そんな同氏が率いるOTCだからこそ、闇雲に宇宙航空産業の売り上げ拡大を図っていくということではなく、「まずはJAXAを中心に足場を固めて、その上で民間需要も含めることで、航空宇宙事業の目標を達成する」という地に足をつけた戦略のもと、将来的には規格が異なる米国航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)などの認定の取得も目指していきたいという夢を掲げている。

現在、ISTの取り組みは言うに及ばず、日本国内でも次々と宇宙を目指す民間企業が出てきており、数年後には、同社が見据えるような日本の航空宇宙市場の成長が、現実のものとなる可能性が高いと思われる。そのような中、JAXA、民間企業問わず、すべての国産ロケットや人工衛星に同社のプリント基板が活用される、そんな未来が、近い将来、本当に訪れるかもしれない。

参考

・宇宙航空研究開発機構 宇宙開発用信頼性保証 プリント配線板 共通仕様書

・内閣府宇宙戦略室 新たな宇宙基本計画(案)について

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