小池氏が「日本ファ」の代表ではない事情

小池氏が「日本ファ」の代表ではない事情

  • PRESIDENT Online
  • 更新日:2017/08/15
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8月7日、小池百合子東京都知事の側近の若狭勝衆院議員は、記者会見を開き、「日本ファーストの会」の設立を公表した。これは国政進出に向けた動きなのか。そうとらえるのはまだ早い。現状では小池氏らは「全方位外交」を続けており、「国政新党」を立ち上げるには、ステップが必要だからだ。政策コンサルタントの室伏謙一氏が読み解く――。

見た目は「日本維新」とそっくりだが……

8月7日、小池百合子東京都知事の側近の若狭勝衆院議員は、記者会見を開き、「日本(にっぽん)ファーストの会」の設立を公表した。これについて、小池知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」の国政進出に向けた動きとする見方が広がっている。「日本ファーストの会」は「都民ファーストの国政政党版」と評する人までいるようだ。おそらく、かつて大阪維新の会が日本維新の会と銘打って国政に進出したことになぞらえているのだろう。

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2017年東京都議会選挙「都民ファースト」街頭演説(写真=つのだよしお/アフロ)

確かに見た目はそっくりだが、「日本ファーストの会」は、あくまでも若狭議員を代表者とする政治団体である。政治団体とは、政治資金規正法第3条第1項に規定されているように、(1)政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体、(2)特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体、(3)これらの他、a)政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対する活動、b)特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対する活動をその主たる活動として組織的かつ継続的に行う団体、のいずれかのことである。

政党はこれらの条件に加えて、(1)所属国会議員が5人以上又は(2)前回の衆議院議員総選挙(小選挙区・比例代表)、前回又は前々回の参議院議員通常選挙(選挙区・比例代表)のいずれかの全国を通じた得票率が2%以上、のいずれかに当てはまる政治団体である(同法同条第2項)。

あくまでも若狭議員の政治団体にすぎない

当然のことながら「日本ファーストの会」は政党としての要件には当てはまらず、政治資金規正法第3条第1項に規定するいずれかの政治団体ということになる。若狭議員の政治団体としては「わかさ会」と「自由民主党東京都第10選挙区支部」があったが、若狭議員が自民党を離党したため後者は解散している。別に代替の関係にあるわけではないが、自民党の支部の代わりに「日本ファーストの会」が若狭議員の政治団体として加わったと考えれば分かりやすいだろうか。

さて、「日本ファーストの会」が政党ではなく単なる若狭議員の政治団体であるという制度的な解説はこの程度にして、「日本ファーストの会」の中身について考えてみよう。

公式サイトに「輝照塾」とある理由

若狭議員は、「日本ファーストの会」について、政治塾「輝照塾」の開催・運営を行うことを主な目的として設立した、と説明している。確かに、公式サイトには、「日本ファーストの会」の下に大きく「輝照塾」と記載されており、「日本ファーストの会」の設立の主たる目的が政治塾の開催・運営であることがわかる。

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「日本ファーストの会 輝照塾」のウェブサイト(https://nipponfirst.jp/)より。

ちなみに、政治塾の「輝照塾」という名称は、若狭議員の説明によれば、「一燈照隅 万燈照国」という最澄の言葉を参考に決めたとのことである。だが、国立国会図書館が運営する「レファレンス協同データベース」のレファレンス事例によると、これは最澄の言葉ではなく、最澄の『山家学生式』の中に出てくる「照于一隅 此則国宝」という言葉に影響を受けた、安岡正篤氏によって作られた言葉のようだ。

その輝照塾、規約の前文では、都知事選での小池知事の勝利や、先の都議選での都民ファーストの会の圧勝の背景を、「情報公開や説明責任の軽視に繋がるいわゆる『しがらみ政治』という古き政治手法が依然として残存する中で、山積する政治・経済・社会上の問題点に対して有効な解決策が示されないまま急速な少子高齢化が進展している現状等を打破し、情報公開を力強く進めながら速やかに抜本的大改革を実現していくべき旨の、多数の有権者の切実な願いの顕れである」とし、「国政において、こうした有権者の切実な願いに対して応え、日本の政治・経済・社会上の問題点につき抜本的大改革を立案・断行する有為な人材を育成・輩出し、もって、我が国の輝ける未来を照らし出すことを目指し、ここに『輝照塾』を創設する」と政治塾の設立の趣旨を規定している。

規約では「候補者の擁立」とは一線を引く

要するに、既存の政党ではない、既存の政党には期待できない有権者の新たな受け皿を担う人材を集め、育成しようということである。その旨は、同規約第2条第1項にも「本塾は、若狭勝を塾長とする政治塾であって、日本の政治・経済・社会の抜本的な改革に向けて有為の人材を育成・輩出することを目的とする」と規定されている。

その先には当然、国政があるわけであるが、一方で、同規約の第2条第2項には、「本塾は、日本の政治・経済・社会上の問題点につき有効な政策立案・実現をなし得る人材を育成することに主眼を置いた組織であり、特定選挙において『日本ファーストの会』又は『若狭勝』又は『小池百合子』による公認・推薦・支持・支援を塾生又は卒塾生に対して約する組織ではない。また、本塾は特定選挙において公認・推薦・支持・支援を行わない」と規定し、政治塾という性格を明確にするとともに、将来的に想定される国政政党の設立や国政選挙への候補者の擁立とは一線を引いている。

つまり、これからの政治に必要な人材を育成する以上、国政は念頭に置いているが、それはあくまでも人材の育成および輩出という点においてであって、それが新党や塾生の立候補とは直結しないということである。

「政治塾」に人を集めてから、動き方を考える

無論、若狭議員は国政新党を政治塾の開催期間中、年内のできるだけ早い時期に設立したいと説明している。ただし、政策は政治塾開催の初期から示すことはせず、政治塾での討論を通じて収斂させていくとしている。また、政治塾に集める人材も、志を同じくする人としているものの、政治のプロだけによる政治ではなく幅広い人材による政治を目指し、幅広い層の方を集めたいとしている。そうした点を踏まえると、国政新党という旗は立てつつも、外部状況や人の集まり具合を見ながら、その在り方を考えていくのだろう。

結局のところ、現段階では、自民党でも民進党でもない人材、もっと言えば自民党にも民進党にも嫌気がさしている人材を、まずは政治塾という形式で集め、集まった数や人材の資質に応じて動き方を考える、という程度の話なのだ。

米国以外は多党制下での連立政権が常態

現状では、ある意味で「全方位外交」なのだから、例えば、民進党を離党した細野豪志衆院議員や長島昭久衆院議員、日本維新の会を除名された渡辺喜美参院議員との連携などは、模索や検討の一環に過ぎず、すぐさま新党に向けて具体的に動くという話ではないと考えるべきだろう。

そもそも、若狭議員が「自民党でも民進党でもない」と言いつつ、「二大政党制を前提とした受け皿を作っていく」と言っている時点で、立ち位置がまだ定まっていないことが透けて見える。これは実質的には自民党に替わる勢力を目指すということだろう。さまざまな民意があり、利益があり、それらの全てとは言わないまでも、その多くを2つの政党が代弁することなど不可能である。小池知事がよく使う「ダイバーシティ(多様性)」を考えればなおさらだ。だからこそ米国に代表される一部の例外を除いて、世界の民主主義国家では多党制下での連立政権が常態なのである。

中央政界での野党再編か与党も巻き込んだ政界再編か、そうした動きを横目で見つつ、よく言えば柔軟に、うがった見方をすれば哲学や主義主張もなく、アメーバのように動く政治団体「日本ファーストの会」。しばらくの間は静観したほうがいいだろう。

(写真=つのだよしお/アフロ)

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