【スクープ!】福島原発事故の被災者が米国GEを集団提訴

【スクープ!】福島原発事故の被災者が米国GEを集団提訴

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  • 更新日:2017/12/06
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福島第一原発 (c)朝日新聞社

福島原発事故の責任を問う裁判が全国各地で進む中、日本人の原告が米原子炉メーカーの責任を追及する集団訴訟を米国の裁判所に起こした。米国での裁判では、賠償額が数百億円から1兆円を超えることもある。被災者救済につながるのか。ジャーナリストの桐島瞬氏が調査した。

*  *  *

11月中旬、米マサチューセッツ州ボストンの連邦地方裁判所に一件の訴状が提出された。英文で「集団訴訟訴状と陪審員裁判の要求」と書かれた49ページにわたる訴状の原告欄には、福島県と茨城県に住む3人と六つの法人が名を連ねる。被告は、ボストンに本社を置くゼネラル・エレクトリック社(GE)だ。

【提出された訴状はこちら】

GEは、東京電力福島第一原発の原子炉の設計から製造、設置まで関わったメーカー。2011年3月11日の原発事故では、津波による電源喪失から原子炉の冷却ができなくなり、1、3、4号機が爆発、メルトダウンにつながった。原告は、「GEはメルトダウンを起こした原子炉の設計製造や保守に関わってきたのに、福島原発事故による経済的損失などに対して何の責任も取っていない」と主張。事故で莫大な損害を受けたとして、同社に賠償を求めている。

訴状には賠償請求額が書かれていないが、ボストンの地元紙は「問題のある絶望的な原子炉を設計したGEに対する560億円規模の集団訴訟」と報じた。

具体的な問題点として挙げるのは、原子炉の設計不良と設置上の過失などだ。

原子力産業の黎明期だった1960年代、「GEはコストを抑えるために業界標準よりも小さくて安物の原子炉を設計して福島第一原発に設置した」と言及。

しかも当初は海抜35メートルに建てるはずの原子炉建屋を「GEの海水ポンプがこの高さまで水を汲み上げられないことなどから土地を削り、海抜10メートルに設置した。このことが津波を被る原因となった」と指摘している。

さらに、「独立したバックアップ電源などの安全装置を装備しなかったことが、結果的にメルトダウンと放射能の放出を招いた」として、原発事故の責任はGEにあるとした。

実際に、福島第一原発に設置されたマークI型原子炉が安全性の低いものだったことは知られている。

GEの元エンジニアとして原子炉の設計に関わったデール・ブライデンボー氏は、安全性に疑念を抱いて76年に同僚2人とともにGEを退職し、運転停止を訴えている。

今回、提訴した原告は、福島県内の2人の医師と四つの病院、それに中小企業やその経営者たち。

いずれも福島原発事故の被災者で、事故による影響から営業損害を受けたり、休業や倒産などに追い込まれたとしている。原告の一人は怒りの表情でこう話す。

「6年前の福島原発事故で町の人口が減り、仕事に大きな支障が出ました。東京電力だけでなく、不良品の原子炉を造ったメーカーの責任を追及していきたい気持ちは当然あります。そのために提訴したのです」

原発メーカーを相手取った集団訴訟はすでに日本でも提訴され、進行中だ。

原発メーカー訴訟原告団で世話人共同代表を務める大久保徹夫氏が説明する。

「私たちは2014年1月に日立、東芝、GEを提訴しました。原子力損害賠償法は電力会社に責任を集中させていますが、電力会社と同様にメーカーも責任を追及されるべきと考えます。現在の原告数は35カ国から約3700人。東京高裁で控訴審を係争中です」

この裁判とは原告が違うとはいえ、今回、あえて米国で集団訴訟を提訴したのはなぜなのか。米国の集団訴訟に詳しいライアン・ゴールドスティン弁護士は、「日本と米国の集団訴訟で仕組みが大きく違うから」と解説する。

「米国のクラスアクション(集団訴訟)は、事件や事故で多数の人たちが同じような被害に遭っている場合、被害者の一部が全体を代表して訴訟を起こすことができます。被害者は『訴訟に参加しない』という意思を表示しない限りは自動的に加わるため、当事者が桁違いに増える。判決や和解内容は裁判に加わったすべての人々に適用されるため、被告が負ければ膨大な損害賠償が科せられます」

日本の集団訴訟は一人ひとりが参加の意思を示して原告団を結成するため、確かに米国方式のほうが規模も広がりやすい。

タカタ製の欠陥エアバッグを巡る集団訴訟では今年9月までに主要自動車メーカー各社が総額1300億円に上る和解金を支払うことで合意した。また過去には、たばこメーカーを訴えた集団訴訟で、42兆円という天文学的な和解金も出た。原発事故避難者は15万人以上にのぼるため、賠償金も膨大な額になることが見込まれる。

陪審員による裁判まで進まなくても、数百億円規模の和解金で決着することも珍しくない。原告弁護士には報酬として和解金や賠償金の3割前後が支払われるため、米国には集団訴訟を専門とする法律事務所があり、提訴できそうな案件とそれに合致する原告を常に探しているという。

裁判の最初のハードルは、この訴訟の原告側が、共通点のある一定範囲の人々(クラス)によって構成されていると裁判所に認証されるかどうかだ。

「クラスアクションを提起するには、【1】そのクラスが十分に多数であるか、【2】構成員が共通の争点を持っているか、【3】原告の代表者がそのクラスの典型的な請求をしているかなどが裁判所から認定される必要があります。その作業に要する時間は約1年から2年ぐらい。認証されるのは全提訴の半分にも達しません」(ゴールドスティン氏)

クラスが認証されると、次はGEの原子炉に欠陥があったかどうかを調べるために、膨大な量の文書提示や関係者の証言録取、それに専門家の証言なども米国、もしくは日本の米国大使館で行われる。

その後、ようやく陪審員による審理に入り判決が出るが、ここまで行くのは全体の3%ほど。莫大な賠償判決を出すことを被告が恐れ、ほとんどのケースは和解になるという。米国の集団訴訟を手がけたことのある弁護士がこう言う。

「引っかかるとしたら原告代表に個人と企業が交ざっているところ。両者は損害の中身も違うはずで、『共通の争点を持っていない』と裁判所から判断され、認証の段階で門前払いされてしまう可能性もあります」

また、日米を含む6カ国が締約して15年4月に発効した「原子力損害の補完的な補償に関する条約(CSC)」に抵触しないのかという指摘もある。

CSCでは被害者の迅速、公平な救済の側面から、原子力損害に関する訴訟の裁判管轄権を事故発生国に集中。賠償責任も過失の有無を問わず原子力事業者に集中させている。つまり文字どおりに解釈すると、福島原発事故に関する損害賠償請求裁判は日本で、しかも東京電力を相手にしか起こせないことになる。この点を外務省に取材すると、「コメントは差し控えたい」との回答だった。

前出の大久保氏が言う。

「福島第一原発1号機はGEが着工から運転開始まで全責任を負う方式で造られました。事故の責任もメーカーが当然負うべきです」

※週刊朝日  2017年12月15日号

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