桜井和寿と長谷部誠の共通点は?『日本代表とMr.Children』著者が語る

桜井和寿と長谷部誠の共通点は?『日本代表とMr.Children』著者が語る

  • マイナビニュース
  • 更新日:2019/01/18
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●あまり語られてこなかったMr.Children

昨年発売された書籍『日本代表とMr.Children』(2018年11月28日発売/ソル・メディア)。この本は、1998年のワールドカップ初出場を機に国民的コンテンツとなったサッカー日本代表と、モンスターバンドとして90年代から席巻し桜井和寿が大のサッカー好きでもあるMr.Childrenの関係性を、音楽・映画ジャーナリストの宇野維正氏と音楽ブロガー・ライターのレジー氏が読み解くという内容だ。

共著者の1人であるレジー氏に、桜井和寿とサッカーとの出会いや、ミスチルの楽曲がサッカー選手に支持される理由などについて聞いた。

○■『日本代表とMr.Children』書籍化の経緯は

――まず、書籍化の経緯をお聞かせください。『日本代表とMr.Children』というタイトル通り、サッカー日本代表とMr.Childrenの関係性を分析する内容となっています。

ロシアワールドカップのベルギー戦が終わり、キャプテンを務めてきた長谷部(誠)が代表引退を表明して、あの世代の日本代表が一区切りついた感がありました。そして、大のミスチルファンでもある長谷部がキャプテンに就任した2010年くらいから「自分たちのサッカー」というのが日本代表を取り巻くキーワードになっていて、それがミスチルの歌ってきた「自分らしさ」とつながる部分があるなと。

そんな話をツイッターでつぶやいたところ、共著者の宇野(維正)さんと話が広がり、そのやり取りを見ていたソル・メディアの方からお声がけがあって、結果的に書籍化に至りました。

――本書では、長谷部キャプテンを中心とした日本代表を「ミスチル世代」と呼んでいますね。レジーさんご自身もミスチルがお好きとのことですが、ミスチル好きになったきっかけをお聞かせください。

最初は小学生のときに聴いた「CROSS ROAD」ですね。今まで自分が聴いてきた音楽とは雰囲気の違うことをやっているバンドが出てきたなと思いました。決定的だったのは、「innocent world」です。中学校のクラスの友達もみんな聞いていましたね。それに関連して言うと、今回の本を書く上でのモチベーションとして、90年代に世間の人が最も接しているコンテンツのひとつとしてミスチルがあるはずなのに語られることが少ない、そういう状況に風穴をあけたいという思いが個人的にはありました。

――確かに「小室ファミリー」などについてはよく語られていますが、ミスチルについてはあまり語られてこなかった印象です。

人気が落ちておらず、いまだに"現役"であるがゆえに、振り返られないんでしょうね。今回の本の大きなテーマでもある「自分探し」に関連する文脈だと、『エヴァンゲリオン』が90年代の精神性を語るうえでよく話題に挙がるじゃないですか。でも僕の体感としては、『エヴァ』を見ていた人より、ミスチルを聴いて影響を受けていた人の方がたくさんいるような気がするんです。

○■重要だった桜井和寿とサッカーの出会い

――書籍化にあたり、過去のインタビューなども多く調べたそうですが、なにか発見はありましたか。

桜井(和寿)さんがサッカー好きであることはもちろん知っていましたが、こんなにいろんなところでサッカーの話をしてるんだ!というのは改めて驚きました。本の作業を始めた当初は長谷部や名波(浩)といった代表選手がミスチルから影響を受けている、いう話が中心になるのかなと思っていたんです。でも、今まで思っていた以上に桜井さんのサッカーへの思い入れは強烈でしたね。

桜井さんのインタビューでは、「サッカーをやっているときは色んなことから解放され、普通の人になれる」という話題がたびたび出ていました。周りが考えるよりもずっと、ご本人の中ではサッカーが大事なものなんだなと。アルバム『深海』『BOLERO』を経て、ミスチルが活動休止したタイミング、ある意味で1人の人間としての"桜井和寿"をやり直そうというタイミングでサッカーと出会ったのは、すごく重要だったんだろうなと思います。

――その一方で、サッカー選手をはじめとしたアスリートには、ミスチル好きが多い印象です。レジーさんはその理由をどのように分析されますか。

いろいろ理由はあると思いますが、特にアスリートがよく好きな曲に挙げる「終わりなき旅」の「高ければ高い壁の方が登ったとき気持ちいいもんな」という歌詞への共感が強いんだろうなと思います。実際はミスチルはあの時点で高い壁に登った後であり、上に上に目指していこうという歌ではないのですが、アスリートの多くが競技を極めるうえで必要な上昇志向に読み替えて受け取っているのではないでしょうか。

また、「終わりなき旅」の本来のメッセージは上昇志向というよりも「自分の中にあるものに対して打ち勝っていく」という話だと思うんですが、それもアスリートの「最大の敵は自分」という考え方とリンクして鼓舞されるんでしょうね。

――特にサッカー選手はミスチル好きが多いですよね。これまでの日本代表選手のなかで、桜井さんと似ている面があると感じる方はいますか。

やはり長谷部じゃないですかね。一見すると、良い人そうで真面目そうだけど、強烈なエゴのようなものがあり、どちらも天才的というよりはバランスの良さを感じます。桜井さんもすごいソングライターであり、ボーカリストですけど、たとえば宇多田ヒカルのようなアーティストと比べると“天才”というよりも“普通感”があるなと。長谷部も天才肌のプレーヤーというよりは「バランス」「努力」といった言葉が似合うと思うので、そういう部分が共通しているかなと思います。

○■2010年以降のMr.Children

――確かに桜井さんは、『モヤモヤさまぁ~ず』や『ゴッドタン』を見ていることを明かしたりと、“普通感”がありますよね。そんな長谷部選手は2010年から日本代表キャプテンを務めていましたが、レジーさんは2010年以降のミスチルをどうとらえていますか。

桜井さんはあるインタビューで、「『彩り』はあの歌詞があるからあの曲になるけど、『エソラ』はあの歌詞じゃなくても曲のメッセージが伝わるはずだ」というようなことを言っていました。この発言が象徴的だと思いますが、2010年代のミスチルは言葉と音楽の融合について試行錯誤していたフェーズだと思うんです。歌われるテーマについても、「自分探し」は終わり、大量消費されるスーパーマーケットであっても良い(=アルバム『SUPERMARKET FANTASY』)というレベルまでいった後に震災があったりして、ミスチルとして何を歌うかというピントが定まり切らない時期だったんだろうなと。

――桜井さんも雑誌『MUSICA 2015年1月号』のインタビューでは「(曲を)当てにはいっているが、難しい」「投げてもすり抜けていく感覚がある」と告白していましたね。

そうですね。ただ、10年代の後半の楽曲、「ヒカリノアトリエ」や「himawari」からは何かを掴んだのかなという印象も受けました。今はバンドとして過渡期だと思うので、まだまだもっとすごいのが来るんじゃないかなと期待しています。

――最近、Mr.ChildrenはRADWIMPSやくるりなどと対バンをやったり、ホールツアーを行ったりしましたよね。そういった活動でなにか掴んだものがあったんでしょうね。

きっとそうなんでしょうね。「大会場で弾けるミスチルが見たいのに何で今さらホールツアーなんてやるんだろう?」とか文句を言ったりもしたんですけど(笑)、ミスチルにとって必要なプロセスだったんだなと思います。

●批評することの難しさと重要性

○■プロデューサー・小林武史から離れたMr.Children

――そして2010年以降のミスチルで大きな出来事といえば、ブレイク前からの関係であるプロデューサー・小林武史から離れたことだったと思います。その点についてはいかがでしょうか。

もちろん良し悪しあるんでしょうけど、バンドとして新しい一歩を踏み出すきっかけにはなったんだと思います。個人的には、今のような状況だからこそ「小林武史っぽい曲」をセルフプロデュースでやってみてほしいなと。

ちょっと話が逸れますが、最近サザンオールスターズのアルバムをすべて聴いたんですけど、世の中の人が「サザンっぽい」と思っている音の多くは80年代後半~90年代前半に作られていて、それらの楽曲をプロデュースしていたのが小林武史なんですよね。つまり、世の中の人が「サザンっぽい」と思っている音は「小林武史っぽい音」でもあると言えると思います。

――「真夏の果実」「希望の轍」「涙のキッス」などは小林武史プロデュースですね。

歌謡曲からJ-POPに時代が移り変わるタイミングを小林武史と乗り切ったのは、サザンとしても本当に大きかったんだなと実感しました。小林武史は、桑田佳祐のブルース的というか、土着的な感覚を華やかなものに落とし込むのが得意だったんだと思います。それと同じように、浜田省吾や甲斐バンドに影響を受けていた桜井さんの音楽性をよりポップな方向に開花させたのが小林武史と言えるのかなと。

――確かに小林武史はミスチルの初期には、桜井さんに楽曲制作のイロハをマンツーマンで教えていたそうですしね。

はい。今のミスチルはそういう「小林武史的なもの」ではない、より生々しいバンドサウンドをやりたいんだと思うんですけど、桜井さんの根底には小林武史とともに培ってきた「ポップソングを作るセンス」みたいなものが今もあると思います。バンドとして身軽になった今だからこそ、僕としては「エソラ」とか「Marshmallow day」のような、ストリングスやホーンががっつり入ってメロディも派手な曲、いわゆる「小林武史っぽい曲」であり「ミスチルっぽい曲」をやったらどうなるのか聴いてみたいです。

――色んな経験を積んだ今、改めての「ミスチルっぽい」ですね。

そうですね。きっとまたこれまでのミスチルとは違う、でもミスチルらしい、素晴らしい曲ができるんじゃないかなと。桜井さんは『MUSICA』(2018年11月号)のインタビューで、「2020年の東京オリンピックの時に日本を代表するミュージシャンとしてもし僕らの名前が挙がった時に…」と、東京オリンピックに関する話をしていました。五輪のことを挙げるということは、時代の真ん中で色んなものを背負うことに対して自覚的なはずなので、またそういうモードが前面に出てきたときにミスチルがどういう曲を生み出すのか楽しみです。

○■ワールドカップ直前に監督交代したサッカー日本代表

――2月にミスチルは台湾で初の海外単独公演も予定していますし、新たなステージに進もうとしているのではという感じはありますよね。そして本書のもう1つのテーマ、日本代表の話題でいいますと、今年はワールドカップ直前で監督が交代するというゴタゴタがありました。しかし決勝トーナメント進出を果たしたことで「結果良ければすべて良し」となっている感もありますが、こちらについてはいかがでしょうか。

一言でいうと、ちゃんと引き継いでほしいなと思っています。ポジティブな面では、森保一監督は西野ジャパンでコーチをしていた人なので、ワールドカップ後の監督人事としては今までで一番継続性がある人選になっていると思います。ロシアワールドカップでは結果を残して、日本はこういうサッカーをやれば良いんだと見えたものもあったので、それを森保監督がさらに発展させてくれるといいなと思っています。

その一方で、大会直前という意味の分からないタイミングでハリルホジッチをクビにして、本来は監督を評価すべき西野(朗)技術委員長が監督になるというおかしなことが起きました。にもかかわらず、16強に進出したことで、そういった経緯が不問になってしまっているようにも思います。その点については、「森保ジャパンいいよね」という話とは別に、引き続きウォッチして何かあれば声をあげなければ、また同じことが起きてもおかしくないなと思います。

――「声をあげる」ということはすなわち、「批評する」ということだと思います。しかし、レジーさんは宇野さんとの対談で、「(世の中が)批評が機能しない構造にどんどんなっている」と話していました。

「批評が機能しない構造」というのをもう少しかみ砕くと、「本人の発言以外は興味ない」というような風潮、そして何かについて掘り下げて語ること自体への忌避感ということになると思います。前者については、当事者がSNS等で直接発信できるから、当事者の言葉が教典化してしまう。後者は脊髄反射的に反応しがちなツイッターと考察という行為の相性の悪さを感じます。「何難しいこと言ってるの、感じることが一番だよね」とか「本人が話してないから考えても仕方ないよね」というような意見はよく目にしますし、一方でそういうことを言う人たちのことを考察する側の人たちがバカにするような構造もあると思います。そういった分断を少しでもつなぐことはできないものか、というのは文章を書くうえでいつも考えていることです。

テーマがメジャーで多くの人にとって自分ごと化しやすい本書を通して、いくつかの出来事を結びつけて考察を深めることって面白いんだなと感じてくれる人が1人でもいればいいなと思っています。いわゆる「批評」を読んだことがなかった人が、論じるって楽しいと思ってくれたらうれしいですね。

■レジー1981年生まれ。会社員兼音楽ブロガー・ライター。2012年に立ち上げた「レジーのブログ」での音楽シーン分析が話題となり、その後は一般企業勤めと並行して複数の雑誌やウェブメディアに寄稿。著書に『夏フェス革命 ー音楽が変わる、社会が変わるー』。

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