ニトリのテナントにヨーカドー!?――立場が逆転した流通大手、両者の次の一手とは?

ニトリのテナントにヨーカドー!?――立場が逆転した流通大手、両者の次の一手とは?

  • ハーバー・ビジネス・オンライン
  • 更新日:2016/12/01
No image

「ニトリのテナントとして」ヨーカドーが出店!?

北千住から日光街道(国道4号線)を北に数分行くと、足立区役所を過ぎたあたりに真新しい大きな建物が現れる。

「ここにもニトリができるのか」と思って何の気なしに通り過ぎようとした際に看板をよく見て驚いた人もいるのではないだろうか。「ニトリ」の看板の下にあるのは見慣れた「あの鳩」―そう、この店舗には「ニトリのテナントとして」イトーヨーカドーが初出店することになるのだ。

◆“ニトリにヨーカドー出店”という、従来とは逆のパターン

この12月にグランドオープンを迎える「ニトリ梅島ショッピングセンター」は、「ニトリ環七梅島店」が核店舗となるショッピングセンターだ。足立区梅島の日光街道と環七の交差点という好立地への出店で、建物はニトリが建設、売場面積11,706㎡、1階から3階が売場、4階から屋上階までが立体駐車場となる。

この店舗が一般的なニトリと異なる点は、1階に、テナントとして「食品館イトーヨーカドー」やドラッグストア「サンドラッグ」、クリーニング店など複数のテナントが入居するということ。2階と3階は全てニトリの売場となる。1階の食品館イトーヨーカドー梅島店はニトリの開店よりも一足早い12月2日に、ニトリ環七梅島店は12月8日にグランドオープンする予定だ。

「ニトリが運営するショッピングセンター」と聞いて驚く人もいるかも知れないが、ニトリでは近年こうしたショッピングセンターの展開に力を入れている。

特に、2011年10月から展開を開始した自社開発の大型ショッピングセンター「ニトリモール」は、東大阪、相模原、宮崎に店舗網を拡大。2016年4月に開業したばかりのニトリ最大の店舗「ニトリモール枚方」(枚方市)は売場面積4万㎡級の巨艦店舗で、GUやABC-MARTなどといったショッピングセンターでおなじみのテナントに加えて、セブンアンドアイホールディングス傘下の幼児用品店「アカチャンホンポ」も出店している。

もちろん、イトーヨーカドーの総合スーパーでは、自社でホームファニシングの売場を展開している。これはニトリモール枚方に食品スーパーを出店している平和堂も同様だ。

これまでこれらの総合スーパーが運営するショッピングセンターでは、自社でホームファニシング売場を展開しつつ、ニトリをテナントとして誘致することでお互いの相乗効果を生むことを狙っていた。

しかし、ニトリはこれまでの「ショッピングセンターに出店する」という受け身の姿勢から攻めに転じ、その一方で、これまで総合スーパーの1テナントとしてニトリを迎え入れていたイトーヨーカドーや平和堂は、自社のホームファニシングの売場を捨て、食品スーパーとしてニトリに出店。これまでとは「店子」と「大家」の立場が逆転したことになる。

◆ヨーカドーは「総合スーパー縮小」と「ライバルとの提携」で生き残り図るか

イオン、イトーヨーカドー、ユニー、イズミ、平和堂などといった多くの総合スーパー運営企業が加盟する「日本チェーンストア協会」の販売統計によると、品目別販売額(売上高)のうち、衣料品、住関連品はここ20年間ほぼ一貫して減少傾向にあるのに対し、食料品の売り上げは横ばい~微増傾向にある。その結果、食料品が総販売額に占める割合は、1990年代はじめには4割程度だったのに対し、2010年代には7割ほどにまで拡大している。
そのおもな要因としては、「ユニクロ」、「ファッションセンターしまむら」などのファストファッション店、「ニトリ」、「ヤマダ電機」などの住関連品店、更には100円ショップなど、1990年代の大店法規制緩和以降に出店を加速させた「カテゴリーキラー」と呼ばれる大型専門店との競合があげられる。

⇒【画像】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=119193

総合スーパーが「好調である食品の売上に頼らなければならない」状況であることは、最近のイトーヨーカドーの出店方針を見ても明らかだ。

今年4月に建て替え工事が完了したイトーヨーカドー三ノ輪店(荒川区)。都電三ノ輪橋停留所のそばにあるこの店舗は、JR常磐線からも目立つ広告塔屋がシンボルの多層型店舗であったが、建て替え後は平屋・食品売場のみの「食品館イトーヨーカドー三ノ輪店」へと生まれ変わった。

実は、イトーヨーカドーが2016年に新規出店した店舗のうち、総合スーパーとして出店したのはアリオ柏店(柏市)のみ。それ以外の三ノ輪店(荒川区)、湘南平塚店(平塚市)、そして梅島店は、いずれも食品スーパーとなっている。三ノ輪店は旧店の建て替えであるほか、湘南平塚店は「ららぽーと」への出店であるため、どちらも総合スーパーとして出店するという選択肢があったにも関わらず、だ。また、今年4月に閉店したイトーヨーカドー1号店である千住店(足立区)も、跡地に建設されるマンション内に食品スーパーとして復活することを目指している。

業績低迷に陥っているイトーヨーカドーは、総合スーパー業態の店舗やそれらを核としたショッピングセンターの開発を縮小する方針を示しており、今後は新規出店の際の一手段として、ニトリなどカテゴリーキラーとの提携をさらに強化していく可能性も高い。

◆ニトリ―次の一手は?

イトーヨーカドーをはじめとする総合スーパー各社が住関連売場の縮小をおこなう一方で、ニトリの拡大路線は留まるところを知らない。

今年、ニトリは新宿高島屋、東急百貨店東横店(いずれも渋谷区)、港南台高島屋(横浜市港南区)などといった大手百貨店に相次いで出店。今後も百貨店やファッションビルへのテナント出店を行うことで都市部での店舗網拡大を図りつつ、郊外地域では今回の環七梅島店のようなショッピングセンター業態の店舗を増やしていく計画で、これからも流通大手を「ニトリのテナント」として迎え入れる事例が増えていくことは間違いない。

かつて、大手流通企業のなかにはニトリのようにホームファニシングの専門店から店舗規模と取扱品目を拡大していくことで、雑貨店やホームセンター、そして総合スーパーへと大きな成長を遂げたものもある。

カテゴリーキラーの代表格であるヤマダ電機が住宅メーカーのエスバイエルを傘下に収めることで事業の拡大を図ったように、ショッピングセンター展開により店舗規模の拡大を図ることに成功したニトリが、将来的に取扱品目の拡大や、さらには異業種の小売企業を傘下に収めることで事業・業態の拡大をはかる可能性も捨てきれない。

カテゴリーキラーから総合スーパーをも飲み込む存在にまで急成長を遂げた「ニトリ」の、次なる一手が注目される。

<取材・文・撮影/都市商業研究所>

都市商業研究所
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken

※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中
京橋エドグラン、11月25日開業-明治屋京橋ビルもリニューアル
中目黒高架下、11月22日開業-蔦屋書店など28店舗が集う“高架下商店街”
西武百貨店沼津店跡地に「ラブライブ!サンシャイン!!カフェ」、11月8日開店

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

経済カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
47歳、勤続15年でも年収360万円。真面目に働いても年収が上がらない“稼げない病”とは?
マクラーレンの新型スーパーカー、「ハイパー GT」...限定106台はすでに完売
財力がある「全国自治体ランキング」トップ10 浦安、軽井沢......
電通“長時間労働”解消へ1割を人事異動へ
国の借金1062兆円 「国民1人当たり837万円」の誤解
  • このエントリーをはてなブックマークに追加