民主主義を破壊するネット右翼を撃退せよ!

民主主義を破壊するネット右翼を撃退せよ!

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  • 更新日:2017/12/06
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ノートパソコンのキーボード、仏パリにて。(c)AFP/LOIC VENANCE〔AFPBB News

ドイツ、ミュンヘン工科大学で国際会議に出ています。「インダストリー4.0」政策の先端的な戦略イノベーションの話が本題ですが、今回はそこで取り上げられた、より即効力のあるトピックスをご提供しましょう。

「ネット右翼撃退法」です。

ネット右翼化は下手をすると全世界の民主主義社会を長期にわたって損ねる可能性のある病という認識で、とりわけ日本とドイツ、20世紀後半の高度成長を支えた両国は手を携えてこの問題に取り組んでいきましょう、と合意した内容のエッセンスを、今回はご紹介しましょう。

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インターネット民主主義の幻想

いま30歳以上の方なら、20世紀最末年の2000年、あるいは21世紀の始まった2001年頃、16年ほど前のことを記憶していると思います。

逆に言えば、20代半ばより若い世代は、この頃の記憶がない。そこでの生活の変化や、これからこんな社会になる、といった「過去の未来像」も知らなくて当然です。

1995年頃に始まったインターネットの民生公開、いわゆる「IT革命」の頃には、すべての人がすべての人に対して情報を発信し、また受信することができる夢の社会がやって来る的な話が喧伝されていました。

それが一段落した2000年頃には、今度はインターネットで音声動画を自由に見ることができる、見るだけではなく発信することもすぐできるようになるというブロードバンド化が、やはりばら色の未来として喧伝されたものです。

果たして、ブロードバンドが定着し始めた2001年、世界を最も席捲したのは、9月11日に米国で発生した同時多発テロ、世界貿易センタービルに突っ込んで行く旅客機と、超高層ビル崩落の映像でした。

その後「第2次湾岸戦争」を皮切りに「イスラム原理主義、テロリストとの戦い」というシナリオが現在に至るまで全面展開され続けています。

この時期、大学で私に「必修情報処理」を学んだ学生諸君は、10年後はこのようになる、としてデジタルビデオカメラで相互に日本語英語のパワーポイント・プレゼンテーションを撮影、講評し合う課題を実習したのを覚えているでしょう。

実際この時期以降、ユーチューブをはじめ、音声動画コンテンツが内外で発信されるようになります。

しかし、このネットオーディオビジュアル初期に、日本人に衝撃を与えたのは2004年10月に発生した出来事でした。

中東紛争地域にボランティアとして入っていた日本人青年(香田証生さん)が「イラクの聖戦アルカイダ」を名乗る組織によって拉致され、身代金要求などののちに星条旗の上で殺害され、その模様を写したビデオ・クリップが全世界に不特定多数公開されます。

少し前から米国人ジャーナリストを狙う、こうした形態の凶悪犯罪が何件か発生していました。

そこで私たちの研究室では、実際に公開されたビデオを見てしまったとき、視聴者の脳でどのような反応が起きるか、例えば恐怖のため虚血が発生し、思考水準が低下するリスクなどを確認、社会発信しました。

私の「さよなら、サイレント・ネイビー」(2005-06) などでこの当時、これをご覧になった方もいるかと思います。

同様の内容を全く違う形で、本連載の原点である日経ビジネスオンラインで「常識の源流探訪 セックスの快感は脳を麻痺させる」(2008年1月15日公開)は長らく最長不倒アクセスビュー記録を保持していたかと思います。

あれからすでに10年が経過しようとしているわけですが、こうした現象全体を冷静に見つめ直すと、よりシンプルなコアが見えてきます。

20世紀まで、音声動画コンテンツは「放射状」の配信状態にありました。「ブロードキャスト」と言われます。

放送局など限られた情報発信源があり、各国政府は放送免許その他の規制を設けて、プロフェッショナルが不特定多数への露出が許される内容を厳選して配信していた。

これに対して、ブロードバンド・インターネットは、放送法も電波法も関係ない「素人」が、政府の監督その他無関係に、どんな内容でも発信できる「マルチキャスト」の無法地帯になってしまったということです。

1995年、インターネット初期、リベラルの人々は「これからはインターネット民主主義だ」と息巻いた。ところが、10年経って現実には、民主主義の原則はおろか、刑事司法も無関係の殺人動画をテロリストが流布できる、荒んだ状況になってしまいました。

「インターネット性善説」は完全に期待を裏切られ、「インターネット性悪説」が21世紀の現実を考える喫水線になってしまった。

座間で先月明らかになったSNSや「自殺サイト」を悪用した犯罪も、まさにこうした「性悪説」状況を実証する、最悪の事例となってしまっています。

民主制対僭主性

これが選挙にまで影響を及ぼし始めたのが、21世紀第2ディケードに現在進行形で進んでいる変質です。日本では2013年から「ネット選挙」が解禁されました。

リアルな選挙活動ではできないことも「ネットワーク匿名性」の影に隠れて、様々に実現可能になっています。

「性善説」では民主主義の進展が期待されたけれど、現実には「有力者」「金持ち」といった勢力が、人を雇って様々なネット工作を展開し始めた。

「ネット右翼」が跋扈し始めるのはこの時期からだと、今回の会合では日本のみならずドイツ側知識層からも、厳しい指摘がなされました。

念のため記しておきますが、ドイツでは去る9月の総選挙で極右政党AfD「ドイツのための選択(Alternative für Deutschland)が12.6%の得票率をえて初めて国会に進出、いきなり第3党に躍進し、穏健な良識層に深い懸念を起こさせています。

このAfDが結党されたのも2013年のことです。シリアからの移民大量受け入れが引き金となって、このような結果が、とりわけ旧東ドイツの開発から取り残された地域での集票からもたらされてしまいました。

無理もありません。やはり移民が引き金となって、昨年2016年には英国の国民投票で、誰もがあり得ないといっていた英国がEU離脱を決定してしまいました。

どうみても合理的な選択ではなく、何も良いことがない国益の激減を民意は選択してしまったのです。

加えて秋には、誰もが冗談候補と思っていたドナルド・トランプ氏が米国の大統領に当選し、米国は本格的に危機的状況を自分自身にも、また全世界にも突きつけ始めてしまいます。

こうした「亡国投票」が続発している背景に、「ネット僭主」の支配が指摘され「メディア陶片追放」や、その背骨をなすべき「デジタル撃退力(Digital Competency)」の重要性が指摘されています。

かつてドイツでは、ラジオによるメディア・マインドコントロールによってナチスが異常な高支持率を選挙で得てしまい、欧州全体を破壊する戦争とホロコーストという取り返しのつかない事態を発生させてしまいました。

いま、そうした悪夢を再現させかねないのが「ザッカーバーグの魔術」であり、デジタルメディア・マインドコントロールの罠にほかなりません。

デジタル僭主制としての富裕層トランプ政権

「僭主(tyrant)」とは、古代ギリシャで民主主義を破壊する独裁者を指す言葉で、議会の合議制や民主主義のルールを守らず、賄賂その他の方法で権力、支配力を蓄え、理不尽で不平等、一部の権益だけを護るなど、不法な政治を行う存在です。

例えば、自分のお友達にだけ特権的な公共事業を割り当てる、といった不法は「僭主的」と言ってよいかと思います。日本でもそういう兆候が見え、危険な状態と思いますが、ことは欧州でも米国でも起きています。

その支配の具として濫用され始めているのが21世紀第2ディケードのインターネットである、という認識をもって、正しく「ネット右翼」を撃退根治してゆかないと、とんでもないことになりかねません。

と言うか、現実に「とんでもないこと」は起きているわけです。

不動産王として莫大な不労所得を持つドナルド・トランプ氏は、70歳まで公職と一切無関係だった政治の素人、外交など何の見識もない老人に過ぎませんが、あろうことか米国の政権を取ってしまった。それにおもねる情けない国もある。

これをもってデジタル僭主性という全世界規模での危機、クライシスの最右翼と正確に認識し、冷静な対処を講じる必要があります。

そういう過不足ない危機意識を持つ必要を、日独双方の有識者、また今回はドイツ各政党から政治家も招いて、入念な議論が行われました(いろいろ揉めているSPDドイツ社会民主党からの出席はドタキャンされました)。

細かなことは追って記すとして、ここでは「ネット右翼」の特徴と、典型的な撃退法を記しておきたいと思います。

まず最初に押さえておくべきポイントは「ネット右翼はバカである」ということです。これは誹謗中傷ではなく、以下のような定義に基づくものです。

●論理がない。
●従って論理的な会話が成立しない。対話による議論の発展や合意が成立しない。
●利害に基づく(あるいは利害さえ定かでない)結論ありきで、同じことを繰り返す。
●平気で他者を誹謗中傷する。
●しばしば匿名である。

この5点が揃うものを、ここでは「ネトウヨ」と定義し、簡略化してこういうものをバカと呼ぶことにしましょう。

論理がなければバカみたいだし、議論が成立しなければバカバカしいし、バカの一つ覚えは無意味だし、罵詈雑言は愚かしく、名乗らないのは卑怯ですから、略して「バカ」で十分と思います。

逆にこれらに該当しない方とは、建設的な議論が成立するので、そういう方をバカと切り捨てたりは決してしません。

そう、「ネトウヨ撃退法」は、今まさに記した通り「切り捨てる」ことにあります。ロジカルな筋道を高々1つだけ示してディスコネクトする、が骨法です。

先日聞いた話ですが、経営者時代のドナルド・トランプ氏は自分が気に入らない報道を基本「ウソ」だ、フェイクだと言っていたそうです。もう十分後戻りの利かない年ですから、同じことをしている可能性があります。

今日「フェイクニュース」なる言葉がこれだけ流布したのは、成金でお金だけ持っていて、順法的な感覚を持たない人が、自分に都合の悪い報道などが出ると、まずそれを否定し、バカにするなど軽んじ、財貨を使うなどしてカウンターキャンペーンを張ってきたことの報いと言うべきでしょう。

根拠を示さず、そもそもまともな議論など準備できないことが大半で、下手に対応すると大規模なネネガティブキャンペーンなど張られかねません。

こういうとき、重要なのは、論理的に簡潔なケジメを高々1つつけて、一切情報遮断してしまうこと、プラグオフないしブロックが有効です。

これは、行方不明でどこかに消えてしまう、ということではありません。社会的にごく当たり前のコミュニケーションは普通に確保しつつ、問題のあるノードだけ、完全に断線、ディスコネクトし相手にしない。

「スカンクがガスを発したからといって、それより臭いにおいを自分が出していては、さらに環境を汚染することになるでしょう」

あるバイエルン州議員の口から出たこの表現には大いに感心しました。

ヘイトに対してヘイトで応じるような、同じ低レベルに堕落する応酬は一切しない。

「ケジメ」をしっかりつけていく「デジタル撃退力」の実力養成には、従来言われてきた「メディア・リテラシー」を超えた「デジタル啓蒙」が必要といった、この先の議論は、回を分けてお話したいと思います。

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