マーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング部門プリンシパル、佐々木玲子氏 インタビュー(2)

マーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング部門プリンシパル、佐々木玲子氏 インタビュー(2)

  • アゴラ
  • 更新日:2016/10/21
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マーサージャパン 佐々木玲子氏

組織・人事面を中心にクロスボーダーM&Aの支援を行ってきたマーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング部門プリンシパル、佐々木玲子氏が語る、日本企業が目指すM&Aの新たなステージとは何か。連載第2回 は、PMI(買収後の企業統合)をより高次のものにしていくためのアドバイスを伺った。

明確な買収の目的を設定して、高い次元のM&Aを目指す

――課題意識のレベルを高めるために大事なポイントは何でしょうか。

事業や組織の強化・再編という課題は、これまで以上に喫緊の課題として捉えるようになっています。海外買収を担当される方や、海外買収先に派遣される日本 側役員は、本社から、買収先の現行の延長線での事業計画の推進のみならず、より先の取り組みを見据えて、買収後施策を加速させるように命じられていること も多いようです。

ただ、すべての日本企業が、同じスピードでレベルアップしているわけではありませんし、手掛けてこられた買収案件件数イコール課題意識のレベルの底上げという図式でもありません。

PMI(買収後の企業統合)をより高次のものにしていくには、なぜその企業を買収したいのかという目的がどれだけ明確に定義され、具体的な 計画として展開され、徹底して推進されるかいうことにつきると思います。当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、積み上がった手元資金を使いた いとか、よさそうな案件が出てきたからという理由で目的の明確化がきちんとできないまま行われるM&Aが、いまだに見られるのが実情です。また、 当初の目的は明確であったものの、買収担当、PMI担当と案件がわたっていくうちに、だんだんと意識が薄まり、買収後にはそこそこの業績で満足してしまっ ているケースもあるのではないでしょうか。

――単なる事業の継続から、明確な目的に沿った事業の再編・強化へと、PMIを進化させるには、どのようなことに取り組んだらいいでしょうか。

明確な目的にそった事業の再編、強化という大命題がある場合、それを誰が実行し、結果責任を持つのかをはっきりとさせることは特に重要で す。日本企業の場合、海外買収後の事業計画の達成責任は、既存の買収先の経営者に持たせることが一般的かと思います。ところが、せっかく留任(リテイン) できた、買収先の現地経営陣を相手に、できるだけ波風を立てたくないという気持ちが先に立ち、従来通りを所与として〝お任せ〟してしまうのでは、企業を改 革することはできないでしょう。現地経営陣と向き合い、親会社として今回の買収を通じて何を実現したいのか、そのためには彼らに何を実現してもらう必要が あるのかという点を縷々と説得し、腹落ちしてもらう必要があります。そして、彼らに買収後計画のオーナーシップを持ってもらうよう腹をくくってもらわなく てはなりません。また、彼らが達成意欲を高めることができるような報酬やインセンティブをセットで提供することも極めて重要です。

現地経営陣と向き合う過程では、交渉やコンフリクトが発生しますが、そこを避けてはM&Aの進化は望めません。真剣な議論の結果、 残念ながら現地経営陣が新たな事業段階に取り組む意思・能力に欠けることが分かった場合は、退いてもらって、新たな経営体制を敷くという決断も求められます。

――M&Aの高度化に向け、交渉の段階から注意すべき点はありますか。

これまでのM&Aは、ディール専門チームが交渉を行い、契約締結後に事業部門や管理部門に引き継いでPMIを進めるという流れが 一般的であったように思います。ディールに求められるスピード感、情報流出のリスク等を考えると、妥当なアプローチです。しかし、M&Aの高度化 を少しでも加速するためには、買収後のカギとなる、買収先経営者に関する検討を深めるべく、より早いタイミングから、人事機能をディールに関与させること は重要と考えます。

――主に買い手側だった日本企業が、売り手になるケースも見られるようになりました。

これまで日本企業の売却案件は、事業承継上の問題を抱えたケースをはじめ、救済や身売りに近い形が多く、売却にはネガティブなイメージがつきまとっていま した。しかし、売却というのは決してネガティブなことではなく、この先事業を組み替えてより強くしていくためには、必須となる取り組みです。売却なくし て、買収のみ進めていくことはできないでしょう。また、自社にとっては不要であっても、買いたい意向を持っている他社にとっては有用なビジネスであり、よ り多くの投資を得られることも珍しくありません。売却される従業員にとってもメリットがあることがも多いのです。

そういった観点からは、現時点では、主に買い手になっている日本企業は、ディールを通じて接点を持つ、海外売り手企業から学ぶことは多いと 思います。彼らがどのように売却の事前検討をし、準備しているか、そのためにどのように社内の情報を集約し、開示しているか、また売却される従業員に対し てコミュニケーションをしているか等を目にすると、気が付くことは多いはずです。

インタビュー・編集:M&A Online編集部

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佐々木 玲子(ささき・れいこ)略歴

マーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング部門プリンシパル

SAP ジャパンを経て現職。国内外の企業のM&Aに伴う組織・人事全般のコンサルティングに従事。 近年のクロスボーダーM&A案件ではデューデリジェンス、経営者報酬・リテンションおよび報酬ガバナンス、従業員コミュニケーションやグローバル 人材マネジメントに関わる支援多数。著書に「人事デューデリジェンスの実務」中央経済社(共著)、「M&Aを成功させる組織・人事マネジメント」 (日本経済新聞社、共著)、「合併・買収の統合実務ハンドブック」(中央経済社、共著)がある。

国際基督教大学教養学部卒、London School of Economics and Political Science (LSE)組織心理学修士(MSc.)

グローバルM&Aコンサルティング マーサージャパン

アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年10月19日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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