“科学大国”日本が失速... その裏で“役立つ”研究の増加

“科学大国”日本が失速... その裏で“役立つ”研究の増加

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  • 更新日:2017/10/13
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ごとう・ひでき/1943年、松江市生まれ。神経生理学者、医学博士。現在サイエンスライター。『天才と異才の日本科学史』(ミネルヴァ書房)で2014年第62回日本エッセイスト・クラブ賞受賞(写真:本人提供)

今年もノーベル賞が発表され、その結果が注目されたが、一方で気になるのは日本の研究の今。「天才と異才の日本科学史」の著者であるサイエンスライターの後藤秀機氏に、ノーベル賞や研究を取り巻く日本の現状について聞いた。

──実用的な技術の受賞もあるのですか?

例えば、体内を輪切りに撮影するCT診断装置は真理発見とは無縁な医療技術ですが、1979年度ノーベル生理学・医学賞に輝きました。

──日本人の受賞も古くからありますね。

ノーベル賞は1901年に始まりましたが、サムライも庶民も、西洋文明を迎える準備は十分にできていた。実は江戸時代の日本は、庶民の識字率が西洋列強よりもはるかに高かったんです。湯川秀樹は和歌山藩の漢学者の家柄で、朝永振一郎の祖父も大村藩の学者です。サムライたちも、アヘン戦争がきっかけで漢学を捨て、洋学に熱中する合理主義者になったんです。

例えば福沢諭吉は本来理系で、物理学は武力防衛、そして日本独立の土台にもなる「学問の王者」だと考えました。そこで自分の息子を米マサチューセッツ工科大学に留学させて物理学を勉強させ、後に「日本細菌学の父」と呼ばれる北里柴三郎のために伝染病研究所もつくった。彼こそ、科学大国日本に至る一番の功労者、と言えるかもしれません。

──日本の現状は?

2014年、安倍首相はOECD閣僚理事会で、「学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育を行う。そうした新たな枠組みを、高等教育に取り込みたい」と演説しました。そんな中で今年3月には国際学術誌ネイチャーが、科学大国日本の失速を特集して報じました。さらに、6月に出たわが国の科学技術白書によれば、日本から発表された重要論文数は、24年前は世界3位、14年前には4位だったのに、最近は7位に落ちています。

──失速の理由は何ですか?

実は04年の国立大学の「独立法人化」以来、政府からの運営費交付金が大幅に削られました。国立大学の基礎研究は、この交付金で行われてきた部分が大きい。さらに、一連の立法措置と文部科学省の指導により、教授の雑用が激増して研究時間も減った。45歳以下で短期契約の中堅大学教官が07年から6年間で倍以上に膨れ上がり、博士課程に進む若手も激減しました。

財務省は米国にならって研究資金を科学者が競争で獲得するようにしました。その結果、大学の先生は研究公募の枠組みに合わせて“役に立つ研究”に転向した。アインシュタインは晩年、「偉大な研究は自由な環境から生まれる」という言葉を残しています。この言葉の意味をもう一度考えてみるべきではないでしょうか。

※AERA 2017年10月16日号より抜粋

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