イエメン内戦、サウジにとって絶好の機会到来か

イエメン内戦、サウジにとって絶好の機会到来か

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/12/07
No image
No image

――筆者のヤロスラフ・トロフィモフはWSJ中東担当コラムニスト

***

イエメンのアリ・アブドラ・サレハ前大統領が4日に殺害されたことで、同国の内戦の構図が変化し、サウジアラビアが再び主導権を手にする可能性が出てきた。

問題は、サウジやアラブ首長国連邦(UAE)などがイエメンのサレハ前大統領支持勢力との関係を修復できるかだ。また、これら勢力が、イランを後ろ盾とするフーシ派との戦闘でサウジ側に強力な支援を提供できるかどうかだ。

イエメン内戦は、サウジが2015年3月にフーシ派への攻撃を開始して以降、深刻な人道問題を引き起こしている。また、サウジにとっては自国の安全保障上の問題にもなっている。とりわけ、11月にフーシ派がリヤド近郊の空港に向けて弾道ミサイルを発射してからはなおさらだ。

サレハ氏は、30年以上にわたってイエメンを支配していたが、4日フーシ派が設置した検問所で殺害された。同氏は2015年初め、フーシ派がサヌアを占拠するのと、同氏の後任大統領となったアブドラボ・マンスール・ハディ氏を追放するのに手を貸した。それをきっかけに、ハディ氏を支援するサウジとUAEが軍事介入し、イエメン南部を奪還したが、北部では前進を阻まれている。

当初、サウジ主導の連合軍や欧米外交官は和平合意をとりまとめる上で、フーシ派よりもサレハ氏を大きな障害とみなしていた。サレハ氏は大統領退任後も主要な軍部隊の実権を握り、自らの大統領復帰か、息子アフマド・サレハ氏の大統領選出を画策しているとみられていた。

しかし欧米当局者によれば、レバノンの親イラン武装組織ヒズボラから軍事訓練を受けたこともあるフーシ派は、徐々にサレハ氏支持のイエメン軍部隊を制圧。今年6月には、サレハ氏とフーシ派の連携はほころび始め、殺害直前には同氏はフーシ派との関係を断ち、サウジやUAEとの和平交渉を呼び掛けるまでになっていた。

サレハ氏の殺害で、サウジ連合は潜在的な強力なパートナーを失った。しかし同時に、フーシ派をイエメン国内で政治的に孤立させることにもなった。フーシ派は、シーア派の一派ザイド派に属しており、北部山岳地帯の本拠地以外ではイエメン人の強い支持は得ていない。

「フーシ派はサレハ氏が彼らに政治的な保護を与えていたことで恩恵を受けていた」

以前はサレハ前政権と戦っていたフーシ派は、ヒズボラと同様に侮れない軍事力を誇っている。宗旨は「アメリカに死を、イスラエルに死を、ユダヤ人に呪いを、イスラムに勝利を」である。

フーシ派が、サレハ氏の協力なしでどの程度地歩を固められるのかは、今後数週間のうちにはっきりするだろう。

欧州外交評議会(ECFR)のイエメン問題専門家アダム・バロン氏は「神の業を行っていると心底信じている少数の団結した集団の力を過小評価してはならない」と指摘。その上で「とはいえ、フーシ派は多くの人の怒りを買っている。サウジにとっては絶好の機会が与えられる可能性がある」と述べた。

サレハ氏が率いていた政党「国民全体会議」は依然として、イエメンの政官界の主要勢力だ。同党の幹部がいなければ、フーシ派はサヌアなど支配地域の国家機関を運営する能力はない。

「現実問題としてフーシ派がイエメンを統治できるというのはジョークだ。彼らには技能も、人材も、経験もない」

2010年から13年まで駐イエメン米大使を務め、現在はシンクタンク「中東研究所」の研究員であるジェラルド・フェイアステイン氏はこう語る。「フーシ派にたとえ政治哲学があったとしても、それは多くのイエメン国民にとっては受け入れ難いものであるのは間違いない」

サウジは現在、サレハ氏の息子で、前共和国防衛軍司令官のアフマド氏を押し立てようとしている。アフマド氏はUAEで自宅監禁されていたが、4日に監禁を解かれフーシ派に対する報復を誓った。

しかし、サレハ氏に忠誠を誓っていたイエメン軍部隊のうち、どれほどがサウジ主導の連合軍に参加するのか、またはフーシ派に従うか、もしくは中立を維持し様子を見守るかは今のところはっきりしない。

国際危機グループ(ICG)の中東・北アフリカ担当部長ヨースト・ヒルターマン氏は、次のように予想する。「戦争は続くだろう。サウジ主導の連合軍は空軍を除けば戦えないことをすでに証明しており、それでは戦争に勝てない。近い将来、戦争が終結するとは思えない」

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

国外総合カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
「救急車をタクシー代わりに使うな」助産師に非難された19歳妊婦、数時間後に赤ちゃんを亡くす(英)
中国「国家4大AIプロジェクト」の全ぼうとは 自動運転、都市計画、医療映像、音声認識
日本刀専門家のイギリス人男性、実家の寝室で切腹
  • このエントリーをはてなブックマークに追加