残酷すぎる...中国で宅配便配達員の女性を襲った「恐ろしき実態」

残酷すぎる...中国で宅配便配達員の女性を襲った「恐ろしき実態」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/06/28
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宅配便配達員は門前で嗚咽する

2019年6月10日の夜7時50分、山東省北部に位置し渤海湾に面した東営市に属する広饒県(こうじょうけん)の公安機関が、県内の稲庄鎮広小張村の張姓の男(以下「張某」)から「騒ぎを起こしている人がいる」との通報を受けた。

通報を受けた公安機関は最寄りの稲庄派出所に出動を命じ、警官の王海港が広小張村の現場へ駆け付けた。王海港がそこで目撃したのは、通報を行った張某の家の門前で宅配便配達員の女性が嗚咽する姿だった。

不審に思った王海港が女性に事情を尋ねると、女性は圓通速逓公司(以下「圓通速逓」)の聶桂英(じょうけいえい)<48歳>であると名乗り、彼女が張某の家に出向いた目的とその後の顛末を涙ながらに詳述した。

これを聞いて聶桂英に同情した王海港は、聶桂英に対して今回の事態を証明する文書を早急に作成して圓通速逓宛に提出することを約束すると同時に、彼女に自分の尊厳を捨てることなく速やかに現場から退去するよう命じたのだった。

翌6月11日付で王海港が広饒県公安局稲庄派出所の公式書類として作成した証明書の全文は以下の通り。当該証明はメディアに公表されたようだが、本件の概要を要領よく取りまとめている。

証 明
圓通速逓公司

2019年6月10日夜8時頃、公安機関は広饒県稲庄鎮広小張村の張某から騒動を起こしている人がいるとの通報を受けた。現場へ到着した警官が調べたところ、次のような事態が判明した。
(1)少し前に張某の母親がネットのキャンペーンに応募して当選し、賞品として箱入りのベトナムから輸入したマンゴ4個を贈られた。5月某日に賞品のマンゴが入った箱は圓通速逓の配達員である聶桂英(女、48歳)によって張某の家に届けられたが、受領した箱は包装テープが切断されていて、4個あるはずのマンゴは3個しか入っていなかった。このため、張某は圓通速逓にマンゴ1個が不足していたと苦情を入れ、同社の宅配便の荷物は2度と受け取らないと表明した。このままでは自分の業務成績に影響が出ると考えた聶桂英は、張某に連絡を取って同意を得た上で、マンゴ1箱を自腹で購入してお詫びの印として圓通速逓ではなく、郵便速達を使って張某宛に送付した。
(2)張某は聶桂英が送ったマンゴ1箱を受け取ったにもかかわらず、その後も圓通速逓に対し聶桂英に関する苦情を前後4回にわたって申し立てた。張某の申し立てを受けた圓通速逓は、社内規定に基づき聶桂英の給与から2000元(約3万2000円)を罰金として差し引いた。
(3)6月10日当日の夜、聶桂英は電動バイクに乗って張某の家に出向き、再度張某が圓通速逓に苦情を申し立てると、彼女は会社を解雇されると告げて改めて許しを乞い、最後には張某とその家族に土下座までして謝罪した。<これは警官が現場に到着する前の状況>
(4)これに対し、張某は圓通速逓に電話を入れて、聶桂英が当夜張某の家に来て騒ぎを起こしていると伝え、圓通速逓に聶桂英へ電話して張某の家から離れるように命じるように要求した。その上で、張某は110番に電話を入れて聶桂英を自宅から退去させるように依頼した。警官が現場へ到着した時には、聶桂英は張某の家の門前でむせび泣いていた。
警官は聶桂英に対し自分の尊厳を捨ててまで許しを乞う必要はないと告げて、公安警察がこの状況について証明を行う旨を約束した。警官が身体を支えながら現場から退去する時に、聶桂英が最も心配していたのは、公安警察が証明書を発行することによって、張某がさらに怒りを増幅させて苦情申し立てを継続することだった。
この事件に関する証明を文書で与えると同時、貴社に対し以下を提案する。
1.社員の尊厳を犠牲と引き換えにいわゆる悪意の苦情に対して許しを乞うことは全く不必要であると提案する。問題の張某とその家族は貴社のブラックリストに永久登録すべきである。
2.悪意の苦情申し立てにより給与から差し引かれた2000元は聶桂英に返還すべきである。
3.個人の尊厳を犠牲にしてまで会社の名声を守ろうとした優秀な職員である聶桂英に対しては、職員の手本として表彰と褒章を行い、そうした職員の養成に注力すべきである。成語に“以徳報怨(徳を持って恨みに報いる)”というのがあるが、それなら何をもって徳に報いるのか。社会の公平と正義を擁護し、社会のプラスエネルギーを増大させることは我々の共同責任である。
警察官署名:王海港
広饒県公安局稲庄派出所
2019年6月11日
(広饒県公安局稲庄派出所の印影)

メディアが報じたところによれば、聶桂英が張某の家へマンゴの箱を届けた際に、箱の包装テープが切断されていたので、張某は聶桂英の目の前で箱を開け、マンゴが1個不足していることを確認した上で、圓通速逓の誰かが食べたと疑い、圓通速逓へ苦情を申し入れたのだという。

また、聶桂英は1箱52元(約850円)のマンゴを購入して張某宛に送ったが、送付されたマンゴが本来のベトナム産ではないことに不満を示したという。

6月11日の午後3時15分、圓通速逓は“微博(マイクロブログ)”の公式アカウントを通じて、配達先からの苦情により惹起された宅配便配達員の聶桂英に対する罰金はすでに撤回され、聶桂英に対し慰問を行っていると述べると同時に、事実関係を確認した後に、悪意の苦情申立者を“不受歓迎客戸名単(ブラックリスト)”に掲載する権利を保留すると発表したのだった。

死を選ぶほどの仕打ち

この宅配便配達員による土下座事件が報じられたのとほぼ同時期に、江蘇省常州市で宅配業界最大手である順豊速運の宅配便配達員の楊某が辞表を提出した上で“以死護尊厳(死をもって尊厳を守る)”として睡眠薬を40錠飲んだ自殺未遂事件が発生した。幸いにも楊某は家族による発見が早かったので応急手当により一命を取り止め、すでに退院しているという。

メディアが報じたところによれば、楊某が自殺未遂を起こした背景は以下の事情によるものだったという。

(1)楊某は“端午節(旧暦5月5日)”の時期に或る貨物の配達を担当した。しかし、送り状に記載されていた荷受人の電話番号は1桁少なかったために、電話で連絡が取れず、しかたなく荷送人(におくりにん)に電話で問い合わせたところ、口汚く罵(ののし)られた。
荷送人からは送り状の番号を言えと要求されたが、配達の途中で送り状の原本が手元にないので分からないと答えたところ、さらに激しい口調で馬鹿呼ばわりされた。

(2)その後すぐに、荷送人から順豊速運に配達員の楊某は横柄で口汚いなどという苦情がはいったことから、楊某は会社から事情聴取を受け、“行政分(管理ポイント)”を減点されたばかりか、所属区域の配置換えという処罰を受けた。順豊速運の規定によれば、言葉遣いの悪さ(口汚く罵ることも含む)は態度類に属する問題であり、一般には当該配達員が直接訪問して詫びる、報告書を書く、規定を書き写す、担当区域の配置換えなどによって処理するが、順豊速運の社員は入社時点で20点の管理ポイントが与えられ、減点されて20点が無くなった時点で退職することになっている。

(3)従来の担当区域を離れたくなかった楊某は、“為了尊厳可以不要工作(尊厳のためなら働かなくても良い)”旨を記した文書を書き残すと同時に辞職届を会社へ提出し、その上で“以死護尊厳”を選択したのだった。

6月13日、順豊速運の“董事長(取締役会長)”である王衛は同社のウェブサイト上で、同社配達員の楊某が自殺未遂を起こしたことに関し、

「昨夜一連の状況を知り、非常に驚くと共に不愉快である。1人の男が自殺未遂を起こしたのは、きっと非常に大きな圧力とつらい思いを背負った結果である。恐らく現在のサービス考課制度に問題があると思うので、速やかに検討して改善する必要がある。これは会社と私の責任であり、短時間内に皆さんへ何らかの説明を行う」

と表明した。

これを受けて、順豊速運は「今回の事件は会社にとって驚愕すると共に非常に残念なことであり、会社はすでに専門チームを組織して調査を行うと同時に職員の考課制度の見直しを行う」と公式の声明を発表した。

世界一の宅配便利用国に

ネットショッピングの隆盛は、商品を迅速かつ確実に配達する宅配便によるところが大きく、全国を網羅する宅配便ネットワークが正しく機能しなければネット通販は成立しない。その宅配便を底辺で支えているのは商品の配達を行う配達員であり、彼らは商品を正しい荷受人(にうけにん)に届ける重要な役割を果たしている。

宅配便の取扱量で世界一は中国である。2019年1月に中国で発表された「2018年全国宅配便企業業務量累計」によれば、中国の宅配便取扱量は前年比26.6%増の507億個で、2014年から18年まで5年連続で宅配便取扱量の世界一に輝いたという。

ちなみに、日本の宅配便取扱量は最新の2017年統計によれば45億個で世界第3位であった。中国の通販最大手である“阿里巴巴(アリババ集団)”を抱える浙江省の宅配便取扱量は100億個を上回っており、浙江省だけで日本の2倍以上の宅配便を取り扱っている。

なお、宅配便取扱量が507億個の中国は人口が約13.95億人であるから、1人当たり年間の宅配便利用回数は36.3回である。これに対して、人口が約1.26億人の日本の宅配便取扱量は45億個であるから、1人当たり年間の宅配便利用回数は35.7回となり、1人当たり年間の利用回数でも中国が日本より若干多いのが実情である。

さて、2018年8月に発表された『2018年“快逓員(宅配便配達員)”集団観察報告』(以下「観察報告」)によれば、2016年から今日までに中国における宅配便配達員の人数は50%増加し、その総数はすでに300万人となり、彼らの平均賃金は月6200元(約10万円)に達しているという。

2019年5月14日に中国政府“国家統計局”が発表した『2018年の一定规模以上企業の就業人員平均年収状況』によれば、2018年における一定規模以上企業に属する全従業員の全国平均年収は6万8380元(約109万4000円)であり、宅配便配達員が属する「社会生産サービスおよび生活サービス人員」(以下「サービス人員」)の全国平均年収は5万4945元(約87万9000円)であった。両者を13(12カ月+ボーナス1カ月)で割って月平均を算出すると、前者が5260元(約8万4000円)、後者が4227元(約6万7632円)となる。

こうして見ると、宅配便配達員の賃金は全国平均より約18%高く、彼らの属する「サービス人員」の平均より約47%高いことになる。宅配便配達員の平均賃金は比較的高く、恵まれた水準にあると言う事ができる。

ただし、宅配便配達員の80%が1日8時間以上の労働をしており、より多くの荷物を配達することにより、高収入を得ているのが実情である。さらに言えば、宅配便企業では基本給が支払われるのは見習い期間だけが通常で、それ以降は基本給なしの出来高給となり、個々人が配達した荷物の個数により給与額が決定されるのが一般的である。

飛躍的発展の影の激化する過当競争

ネット小売市場の発展と宅配便インフラが整備されるのに伴い、中国の宅配便業界は飛躍的な発展を遂げ、「観察報告」によれば、2016年から今日までに、中国の宅配便業務量は57%の増大を果たしている。

宅配便配達員には田舎の小都市から大中都市へ流入した人が多く、「観察報告」によれば、宅配便配達員を輩出する一級行政区(省・自治区・直轄市)は、江蘇省、広東省、山東省、河南省、浙江省などの人口が多い地域である。

一方、中国における2018年の宅配便配達員の人数ランキングでは、北京市、上海市、広州市、深圳市、南京市がトップ5であった。また、宅配便配達員は毎月平均で生まれ故郷へ5往復するのに十分な距離を走行して配達業務を行っているのが実情である。

宅配便配達員を年齢別で見ると、“80后(1980年代生まれ)”が主力であり、“90后(1990年代生まれ)”が徐々に増加しつつあり、全体的には若返りの傾向にある。性別では男性が大部分だが、女性も少しずつ増加している。彼らの学歴は徐々に高くなっており、“大専(高等専門学校)”、普通高校、職業高校、技術学校の卒業生が主体になっている。

2019年4月11日に中国政府“国家郵政局”が発表した『2018年中国宅配便発展指数報告』は次のように述べている。すなわち、中国人が2018年に発送した宅配便は500億個に上り、年平均で1人当たり36個の貨物を受け取った計算になる。宅配便企業は1日平均で延べ2.8億回の配達を行っているが、これは毎日5人に1人が宅配便を使っていることに相当する。

宅配便業界は飛躍的な発展を遂げているが、発展に比例する形で利潤はますます薄くなっているのが実情である。専門家によれば、宅配便業界の利潤空間は過当競争により絶えず圧縮されており、平均利潤率は3%から5%前後まで下落しているという。

なお、中国のランキングサイト「巴拉排行榜」が報じた「2018年中国宅配便企業ランキング」の上位5社は、1位:順豊速運、 2位:圓通速逓、3位:京東快逓、4位:申通快逓、5位:韻達快逓となっている。判明しているところでは、2018年の各社取扱量は、2位の圓通速逓が約67億個、4位の申通快逓が約51億個、5位の韻達快逓が約70億個であり、1位の順豊速運は取扱量を未公表ということだった。

そして「最弱者」配達人の尊厳が踏みにじられる

ここ数年、中国の宅配便配達員が悪意の苦情申し立てを受けることはしょっちゅうで珍しくないという。多くの宅配便配達員が長期間にわたって多種多様の悪性な苦情に耐えている。

たとえば、配達員に対する罵倒や暴力による身体的負傷、悪意を持った企業やブランドに対する攻撃。さらには、受領時には検品せずに、すこし時間が経過した段階で商品の破損を提起する、あるいは貨物が未着と嘘を言って、賠償を要求する詐欺事件まである。

最近、中国宅配便協会副会長兼秘書長の孫康は、宅配便企業は顧客の合法的権益を擁護するだけでなく、従業員の基本的権益を擁護して、悪意の苦情申し立てを防止せねばならないと呼びかけている。また、彼は同時に現在中国宅配便協会が不良ユーザーの“黒名単制度(ブラックリスト制度)”導入を研究していると表明している。

しかし、中国宅配便業界の専門家によれば、悪意と悪意でない苦情の境界線を確定したり、問題解決の処理機構を設立したり、不良ユーザーのブラックリスト制度の確立には少なからぬ障害があり、容易には問題解決でできないと思われるという。

上述したのは中国メディアが報じた宅配便配達員に関わる事件だが、これはあくまで代表的な例であり、悪意を持った荷送人と荷受人によって提起される宅配員配達員に対する苦情は枚挙のいとまがないほどであるようだ。

ただし、善良な宅配便配達員だけが存在している訳ではなく、苦情が悪意か悪意でないかの判別は非常に困難であるし、その善悪を判定することはより困難と言える。

この2例から言えることは、中国の宅配便企業は顧客第一主義を徹底し、顧客からの苦情に対してはその内容にかかわらず、その原因を配達員の過誤と認定して減点や処罰を行っていることが、配達員を卑屈にし、人間の尊厳を捨てることを強制するのである。

日本の宅配業界が、荷送人や荷受人による配達員に対する苦情に対しどのように対応しているのかは知らないが、土下座までする中国の現状は苛酷なものといえるのではないだろうか。

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