スルガ銀行「謝罪会見」で明かされなかった重大なこと

スルガ銀行「謝罪会見」で明かされなかった重大なこと

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/05/17
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倒産ありきのビジネスモデル

シェアハウス「かぼちゃの馬車」問題に揺れるスルガ銀行が、15日、18年3月期の決算発表後、記者会見を開いて調査結果を公表するとともに、米山明広社長が「顧客や株主など多くのステークホルダーに迷惑をかけた」と謝罪した。

問題発覚後、半年以上が経過。これまで取材窓口の経営企画部が、「不正に関与していない」という公式コメントを繰り返すだけだったが、経営トップが「経過のご報告」という文書で、二重契約の存在や資料の偽造、改ざんを明かし、その事実を「相当数の社員が認識していた」と認めただけに、「懺悔会見」といっていい。

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記者会見で不正を認めたスルガ銀行の米山明広社長

だが、詳細な事実関係については、設置する第三者委員会(委員長・中村直人弁護士)の調査に委ねたいとして、「銀行の不正」に言及することはなかった。

シェアハウスのオーナー側被害弁護団が、スルガ銀行と、「かぼちゃの馬車」運営会社のスマートデイズなどを刑事告発する方針を固めているだけに、現段階で、謝罪はしても不正を認めないのは仕方がない側面があり、マスメディアも「融資の歪み」という指摘にとどまっている。

ただ、忘れてはならないのは、わずか5年で積み上がった顧客数1258名、融資額2035億8700万円というシェアハウス事業が、スルガ銀行の融資なくしては存在しなかったことだ。

そのうちスマートデイズの関連融資は、約6割の約1200億円に達するが、残りは同じ事業形態の不動産業者約10社である。私は、本コラムの前号で、スマートデイズの「黒幕」の存在を明かした。(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55610

事業急拡大の果ての倒産を折り込んだビジネスモデルは、「黒幕」以外にも踏襲され、約10社のなかには、倒産して住所移転、経営陣を入れ替え、連絡がまったく取れないようにした悪質な業者もある。

かぼちゃの馬車案件が集中した横浜東口支店の営業担当者らは、スマートデイズが「頭金ゼロ」「自己資金ゼロ」と宣伝、オーナーを募っていた事実を承知している。スルガ銀行の融資基準は「販売価格の90%まで」なので、明らかに矛盾しているが、危機管理委員会の「調査報告書」には、営業担当者の次のような「本音」が記載されている。

<スルガ銀行のほぼ全社員は、客の提出した売買契約書、自己資金確認書があるので、業者が何かやっているとしても、「それはそれ、これはこれ」と思ってしまっている所があると想う。ある種の割り切りである>

黙認だが、それを「ほぼ全社員」が行なっていたというのだから怖い。さらに、踏み込んだケースも紹介していた。

<(ある営業担当者は)かぼちゃの馬車の販売会社の一つから、複数の案件について、「銀行用」と「実際」の二通りの試算を記載したファイルをメールで受領していたこと、(中略)この営業担当者については、二重契約と自己資金の偽装についての認識があったものと認められる>

その先には、「あの業者なら、審査資料を改ざんしてくれる」という趣旨の発言をしたスルガ銀行員がいる。その音声データは、被害弁護団が、先週、公開している。

完全に「型にハメられた」

2坪強の狭い個室にキッチン、台所、浴室などを共用するシェアハウスは、いずれも1億円内外の投資案件だが、本来、物件に見合う年収のオーナーを探すのは容易ではないハズだ。ところが、販売業者は、楽々と融資基準をクリアするオーナーを用意。それは次のようなカラクリである。

「オーナーを融資基準に合わせるんです。年収700万円の人には8000万円の案件、1000万円の人には1億2000万円の案件とかね。そのうえで利回り計算をして家賃を設定。8%、30年の家賃保証という形で、条件に合ったオーナーに売り込む。

その基準内で、土地売買に絡み、間に入って中抜きをしたり、建設会社にキックバックさせたりする。それで、銀行もオーナーもスマートデイズも販売代理店も満足するというスキームです」(販売代理店関係者)

冗談ではない。「満足する」のは、最初だけである。「逆算の家賃」が高額になるのは自明で、それが入居率の低下につながり、「中抜きやキックバック」といった不労所得での埋め合わせも出来なくなって、やがて倒産に至る。5年で1200億円というスマートデイズの無茶な数字がそれを物語る。

これは、スルガ銀行、スマートデイズなど家賃保証一括借りのサブリース業者、販売代理店が、一体となってオーナーを騙した事件である。

「型にハメる」というのは、事件屋、詐欺師などの典型的な手口。ターゲットに近付き、いい思いをさせて契約を結ばせ、身動きが取れないようにしたうえで収奪する。

シェアハウスで「30年の家賃保証」という夢を見させ、物件を用意、審査書類を偽造、改ざん、融資をつけさせた業者は「型にハメた」詐欺師だが、スルガ銀行はどうか。

偽造や改ざんを、スルガ銀行の幹部や行員が、「黙認」していただけでなく、積極的に「誘導」していれば、詐欺への加担は免れない。また、問題は、スルガ銀行にはシェアハウス以外の事例もあることだ。

アパートローンや中古マンション融資などでも、同じような不正が発覚しているし、かつてはデート商法でマンションを売りつけていたブローカーや業者もスルガ銀行を利用していた。

法人向けから個人向け融資に軸足を移し、融資残高を急激に増やし、他行がうらやむ3・6%の貸出金利回りを実現、三菱UFJ銀行やみずほ銀行を上回る高給与の秘密は、違法を呼び込む「スルガスキーム」にあった。

スルガ銀行といえば、創業家の岡野光喜会長が、30年以上トップに君臨、「前例のないことへの挑戦」を、常々、行員に呼びかけ、それがアグレッシブな姿勢に繋がっているのだが、会長は会見に姿を見せず、「私がマネジメントを担当しているので」と、米山社長が130分にわたって説明、経営責任については、「まずこの問題にケリをつけてから」と、言葉を濁した。

「スルガスキーム」を主導した役員、支店長のなかには、犯罪への積極関与を指摘される幹部もいる。そうなればスルガ銀行は、銀行の融資姿勢だけでなく、刑事罰を問われる可能性があり、銀行自体の存続に関わる問題に発展することになるだろう。

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