「こうして僕は身を引いた」。男が語る、はいすぺさんとの一筋縄ではいかない恋愛

「こうして僕は身を引いた」。男が語る、はいすぺさんとの一筋縄ではいかない恋愛

  • 東京カレンダー
  • 更新日:2017/12/11

容姿、学歴、収入。男のスペックは高ければ高いほど良い。

が、同じだけのスペックを女が持ち合わせたとき、果たしてそれは本当に幸せなのだろうか。

東大卒・外銀勤めの楓はいわゆる「ハイスペック女子」。

4年ぶりに再会した憧れの人・須藤淡い恋心を抱くも、相手は楓のことを優秀な人材としてしか見ておらず、自身のファンドへ誘ったのだった。

須藤は何故、楓を彼のファンドに誘ったのか?彼の口から語られるはいすぺさんとは。

No image

数か月前、近所のワインバー『Le Caviste』で偶然高野さんに再会した時は、驚いた。

高野さんとは、以前近所にあったワインバーで4~5年前に知り合った。

その店には、昨年妻との別居を決め青山から西麻布へ引っ越して来る前までは毎週のように顔を出していた。

そこで接客全般を担当していた彼女は、いつもどの客にもよく目を配り、接客も気が利いていたから、若いのにしっかりしているなと感心したものだ。

卒業してから、他社とはいえ自分と同じ外資系投資銀行に就職したと聞いた時には、驚くと同時に少し寂しい気持ちになったことを思い出す。

この業界に入ってきて、まるで別人のように変わってしまう人は少なくない。

尋常なレベルを超えて要求水準の高い人々に揉まれ、日々神経を擦り減らすうちに、心を病む人も少なくはない。

そこまでいかずとも「難アリ」な性格に歪められる人は多いため、あの朗らかな笑顔はもう見られないかもな、と一抹の切なさを感じた。

だからこそ、その晩3~4年ぶりに彼女と再会し、以前と変わらず明るく笑う姿を見たときには、心底嬉しく思ったものだ。

しかも、久しぶりに再会した彼女は、社会に揉まれたからか、人としての魅力を数段増していた。

店で話していた時も、一言一言に知性を感じるな、とは思っていたが、その晩の彼女は、若々しい真っすぐさと、少しの憂いとが並存した、不思議な魅力を備えていた。

その晩、彼女の少し熱っぽい目に見つめられ、食事に誘われた時には、仕事以外で久しぶりに気分が高揚するのを感じたのだった。

少しずつ楓に心惹かれていた須藤。しかしある一言が彼の考えを変えさせる

「ねえ須藤さん、あなたの周りの優秀な若手で、誰か引き抜けそうな人知らないかしら?」

一緒にファンドを立ち上げる松井からそう聞かれた時、真っ先に頭に浮かんだのは、高野さんだった。

何度か食事に行くうちに、彼女の仕事観や論理的思考能力、自分自身の考えをきちんと持ってチームに貢献しようとする姿勢はよく分かったし。

それに、彼女の上司である自分の大学の後輩からも、それとなく彼女の仕事ぶりは聞いていた。

―今の会社にずっと居るつもりはあまり無く、次のキャリアとしてファンドも考えていると彼女も言っていたし、良いんじゃないだろうか。

そう思ったものの、彼女と自分の関係をどのように考えるかは、まだ判断がついていなかった。

彼女のことは、控えめに言っても好ましくは思っていたが、現在離婚調停中の妻のことを考えても、男女のあれこれで振り回される可能性は遠ざけておきたいようにも思った。

―まあ、彼女も大人だし、本人の判断に任せようか。

そう思って松井に提案したのだった。

しかし、松井の一言は想定外に厳しいものだった。

No image

「その子には、『個人的な興味』は無いのよね?」

―個人的な、興味。

無いと言えば嘘になるが、とはいえ自分も「個人的な興味」だけで人を推薦したりはしない。

そう思ったのを察したのか、松井は続けた。

「いや、須藤さんが『個人的な興味』だけでその子を推してるんじゃないのは分かるわよ?

なぜそんなこと聞いたかって、もし彼女が本当にあなたの言うような人なんだとしたら、須藤さんの『個人的な興味』は、彼女には後々悪影響だな、と思っただけ。

これは別に何も、須藤さんに好かれたら彼女が迷惑に思うでしょうよってことじゃ無くて、それを知った周囲の目が、彼女のキャリアにはネガティブだろうなってこと。」

この業界は人の縁で動いているようなところもあり、「コネ」や「ツテ」が強力に効いてくる。

そして女性の場合確かに、「コネ」や「ツテ」を超えた「個人的な関係」でキャリアを積み上げて行く人も少なくはなかった。

今でこそ門戸は広くなりつつあるものの、今だに外銀や投資ファンドにはある意味特殊な人種が集まる。

その無法地帯っぷりを、アマゾンやジャングルに例えられたのもそう昔の話ではない。

結果主義が徹底されているが故に、業績につながる能力が図抜けていれば人間性や倫理観が多少欠けていても誰も気にはかけない。

「結果が出ることこそが正義」がまかり通ってしまうために、自分について来られない部下は容赦なく使い捨て、「才能・能力が無い」と見なした相手には返事すらしないシニアも珍しくもない。

当然プライベートで何をしていようが誰もお咎め無しだから、この業界の男で「まとも」な結婚生活を送っている者の方が少ないのではないか。

そんな中で、「個人的な関係」でキャリアを積み上げて行くこと自体も、ある程度目を瞑られてきた側面もあった。

しかし、そういった環境は逆に、自分の実力と努力によって実績を積み上げてきた人達には迷惑なものだ。

松井もその一人で、彼女の見た目の華やかさからよく、「女の武器を使ってのし上がった」と揶揄され怒り狂っていたのを思い出す。

―確かに、事実がどうであれ、自分が彼女に「個人的な関心」があると見られれば、彼女の実力自体は評価されにくくなってしまうかもしれない。

彼女の立場に立ってそう考えるのは、初めてだった。

仕事か、女としての人生か。はいすぺさんは何を思うのか。

松井の言っていたことは気にかかったが、その晩、高野さんと西麻布『TSUBAKI』に居た。

先週が彼女の誕生日だったというので、少し良いワインでお祝いするか、ということになったのだ。

「須藤さん、お忙しいのにありがとうございます!」

生まれ年ヴィンテージには拘りが無いと言うので、美味しさだけで選んだボトルワインに目を輝かせる彼女を見ていると、松井の言っていたことなどどうでも良いか、という気にもなってしまう。

No image

「じゃあ、25歳の抱負は?」

「えー、抱負、ですか?そうだなぁ・・・」

少し飲み足りないなと、『TSUBAKI』からすぐ近くのワインバー『Elevage』に移動して、シメのワインを飲み切ろうとする頃。

「・・・友達を大切にすること、ですかね。」

「いやいや、今だってしてるでしょう?何かこれをしたい!みたいなことはないの?」

普段の高野さんはいくら飲んでもほとんど顔色が変わらないのだが、今日はふんわりと頬が上気していた。

「実は私『何をしたい』っていうの、あんまり無いんです。それよりも『どう在りたい』の方が、私には大事かもしれません。」

少し照れた様子で、彼女はグラスをくるくると回した。

「先週誕生日で、普段そんなに連絡を取らない人たちからも沢山お祝いのメッセージを頂いて、本当に有難いなあと、思ったんです。例えが変かも知れないですけど、オリンピック選手がいくら結果を出したって、ドーピングしてたら皆がっかりしますよね?

私達が彼らを応援したり、結果に感動したりするのは、その努力や真剣さを知っているからこそなんだと思います。自分がそんなにすごい人だとは思いませんけど、それでもたまにこうやって連絡くれる人たちに、いつ見せても恥じない人で居たいなって。」

彼女の言葉に、ふわふわと酒が回り始めていた頭が急に冴えた。

努力すること、前に進むこと。

彼女のような人種にとっては、「ゴール」なんていうものは存在せず、ひたすら前に進み続けることこそが人生の目的なのかもしれない。

―彼女のためにも、これ以上個人的な関係を深めるのは止めよう。

一緒に仕事をするなら、こういう人が良いと思ったからこそ、今度こそ心に決めたのだった。

▶NEXT:12月13日 水曜更新予定
楓、美里という2人のはいすぺさん。それぞれ違った理由で人生の転機を迎える彼女達の未来は。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

コラム総合カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
眞子さまも知らない小室圭さん母の“金銭トラブル”
「和式便器は金隠し側を後ろに座るのが正解」Twitterで拡散 TOTOに聞いて真偽を確かめてみた
【ネトゲの嫁が】男子がネットで美女と大恋愛 → オフで会ってみた結果...嫁の姿にネットユーザー同情「2017年最大の悲劇だ」
【衝撃】元ネットカフェ店員が語る「マジで迷惑な客」ベスト5がカオスすぎてヤバイ! 本当にそんな客いるのかよ!?
【衝撃】油性マジックだけで全塗装した車を「洗車機」に通してみた結果
  • このエントリーをはてなブックマークに追加