東浩紀「リベラルは結局、『歴史』を積み上げられなかった」

東浩紀「リベラルは結局、『歴史』を積み上げられなかった」

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  • 更新日:2017/10/12
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東浩紀(あずま・ひろき)/1971年、東京都生まれ。批評家・作家。株式会社ゲンロン代表。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家としてデビュー、東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任のうえ現職。著書に『動物化するポストモダン』『一般意志2・0』『観光客の哲学』など多数

批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。

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9月28日、民進党が希望の党への合流を決め、事実上解体した。10月3日には合流を拒否するリベラル派が新党を結成した。前身の民主党から数えれば20年以上の歴史をもち、衆院で90人近い議員数を確保していた巨大な野党が消滅したことになる。

たしかに民進党はこの1年迷走を続けていた。もともと野合の性格が強く、いずれ解党は必然だったと言える。とはいえこの崩壊の意味はとてつもなく大きい。それは、現実的なリベラルの結集を目指し、冷戦崩壊後30年にわたり続いてきた試みが水泡に帰したことを意味するからだ。

その失敗を、リベラルは結局、「歴史」を積み上げられなかったと総括することもできるだろう。政党には歴史が必要である。なぜなら、投票とはそもそも、各自の「公」観を、つまり瞬間の私の感情から離れた第三者的意見を聞く場だからだ。目のまえの候補者には疑問もあるが、一歩引いて過去の実績を信頼する、そういう判断の対象にならなければ政党は生き残れない。それができないとポピュリズムに陥る。自民党と共産党が強いのは歴史を積み上げてきたからだ。

民進党にはかろうじてその歴史があった。とにかく20年続いていたし、政権交代の実績もあった。地方組織もあった。ところが今回のドタバタですべて打ち捨てられてしまった。解党するにしてもこれはなかったのではないか。この損失を取り戻すには、また長い時間がかかるだろう。歴史をもった中道左派政党の構築は、日本では失敗に終わったのである。

政局は揺れ動いている。希望の党への評価も目まぐるしく変化している。投票までの2週間でなにがあるかわからない。ただ、選挙結果がどうあれ、今後数年間の日本の政局が、自民党と共産党と、過去のない、歴史を「リセット」するポピュリズム政党の三極で動くのはほぼ確実なように思われる。

ポピュリズムは右にも左にも振れる。そこに過去はないからだ。すがすがしく見える瞬間もあろう。しかし過去のないところには未来もない。有権者はいまこそ慎重に未来を見定めねばならない。

※AERA 2017年10月16日号

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