将来の競争力は「丁寧な取り組み」から生まれる

将来の競争力は「丁寧な取り組み」から生まれる

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2017/11/14
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「夢を持つ、スピーディーに挑戦する、壁を打ち破る。期せずして僕が言っている行動指針が全て入っているんだよ」アイシン精機社長の伊原保守が紹介したのは、創立50周年の2015年につくった社歌。トヨタ副社長として、系列の部品メーカーの競争力強化のため事業再編を進め、15年6月にグループの中心的存在である同社の社長に就任し、改革に取り組んできた。

同社は200社を超えるグループ会社を持ち、自動車を構成する部品のほとんどをカバーするほか、住生活やエネルギー関連の商品まで幅広い事業領域を持つ。これまでは、各グループ会社の独自判断によるスピーディーな事業推進を強みとしてきた。

しかし、激変する環境の中で、将来にわたり競争力を維持していくためには、グループの結束力の強化が求められる。そのための改革とは。

─社長就任から今まで、どのように改革を進めてきたのか。

当初から、アイシングループとしての総合力を高め、次世代技術への対応や、自動車業界の外からのプレイヤー参入に対抗できる新たなビジネスモデルの創出など、将来に向けた種まきの必要性を感じていた。ただ、私はトヨタ出身でアイシンの幅広い事業領域に精通しているわけではない。そのため、社長就任の2カ月前から主要拠点を視察した。すると、さまざまな問題が見えてきた。

そこで、1年目は各現場から課題を出してもらい、350個挙がったうちの50〜60個を重点課題として、解決に取り組むとともに、以前から進めてきた事業再編をやり遂げることで、足下を固めることに注力した。

その上で、2年目から次世代技術の開発に着手した。これまでもそれぞれの会社で取り組まれてはいたが、本格的な動きになっていなかったため、垣根を取り払い、各社の幹部を集めて次世代の開発テーマを検討させた。その結果、「ゼロエミッション」「自動運転」「コネクティッド」の3領域で6つのプロジェクトが立ち上がり、検討が進んでいる。

改革を進める中で、大事にしているのは、アイシンのDNAだ。プロ集団が集い、スピーディーに意思決定をし、挑戦していく。そして分社化する。自動車部品に加え、ベッドやトイレ、レーザーなどの先端技術まで展開する部品メーカーは他にない。大好きなDNAだ。

─2017年4月には、パワートレイン、走行安全、車体、情報・電子の4つの事業軸で、グループ会社の枠を超えて連携する「バーチャルカンパニー(VC)体制」がスタートした。

例えば変速機の場合、これまで種類別に3つの会社で別々に扱ってきたが、一緒にやった方が効率がいいし、競争力も高まる。とはいえ、グループ会社を現実に統合すると、アイシンのよいDNAが失われる恐れがあり、統合のためのコストもかかる。そこでVCを選んだ。注意したのは、リアルな会社とVCでやることのすみ分けだ。VCでやることを、方向合わせ、効率化、高度化、新たな価値創造の4つに明確化することで、うまく進んでいる。

─グループ内の意思統一を、どのように図ったのか。

就任当初からグループの方向性を1つにしたいと感じていたが、すぐには難しい。最初に「好きなことをやって、いい明日をつくろう」というスローガンをつくった。「細かいことは言わないが、せめて同じ方向を見よう」という意味を込めた。グループ歌(社歌)も一体感醸成に役立てている。

また、経営の方向性を合わせるため、グループ主要14社の役員SNSをつくり、日常的に情報共有できるようにした。14社の社長とは、懇談会や経営会議などを通じてほぼ毎週顔を合わせ、意思疎通を図っている。グループの一体化のため、管理を強めるのではなく、「同じ土俵でやっていこう」という姿勢で取り組んでいる。

もともとトヨタ時代から、従業員とのコミュニケーションを最も重視してきた。トヨタ輸送の社長時は、1100人の従業員全員と面談し、現場の課題とその対応策を聞き、解決していった。取り組みを丁寧にやると、風通しもよくなる。こうした取り組みこそ「現地現物」だと思う。

─足下の業績は好調だ。

好調だが、危機感がある。今後EV(電気自動車)化が進みエンジンや変速機が不要になれば、現在の連結売上高3.5兆円のうち2兆円近くを失う。私が社長の間にやらなければいけないのは、将来のための「次の手」。足下の業績に満足している社長ではよくない。私の最大のミッションは「将来の競争力をつける」ことだ。

いはら・やすもり◎1951年生まれ。75年京都大学法学部卒業、トヨタ自動車販売(現・トヨタ自動車)入社。2009年トヨタ自動車専務。11年取締役兼専務役員。13年副社長。15年4月取締役。15年6月より現職。

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