「これはTVへのエールではない」、『グッドモーニングショー』に託した君塚良一監督の批判と可能性

「これはTVへのエールではない」、『グッドモーニングショー』に託した君塚良一監督の批判と可能性

  • エンタメウィーク
  • 更新日:2016/10/19
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「これはTVへのエールではない」、『グッドモーニングショー』に託した君塚良一監督の批判と可能性

『誰も守ってくれない』では容疑者家族の人権を無視する、過熱報道。『遺体 明日への十日間』ではニュースにならない、震災直後の現実と真実。現代の「マスメディア」を物語の中にまじえてきた君塚良一監督。『グッドモーニングショー』(公開中)では、テレビの中でももっとも下世話な印象がある「ワイドショー番組」をテーマにしている。

芸能人の熱愛、政治ネタ、スイーツ、占い、お天気などあらゆる情報を報道するのが、ワイドショー。特に朝の番組となると、通勤や通学の準備で慌ただしい視聴者の目に飛び込みやすくするため、おもしろおかしく、また分かりやすい報道スタイルになる。それが「くだらない」「低俗」と言われてしまう要因の一つだが、視聴率を稼ぐためなら何でもやる。この映画では、そんなワイドショー番組を制作する出演者、スタッフたちが、葛藤し、決断する様がコメディータッチで描かれている。

テレビ関係者が本作を鑑賞すると、「エールをもらった」との感想が次々と出るそうだ。しかし、1980年代から放送作家としてテレビの第一線で活動してきた君塚監督は、「もちろん、そういった反応は嬉しいですが、僕自身、今のテレビに対するブラックな皮肉をこめたつもりです」と真意を口にする。

「かつてテレビは何でもできるメディアでした。視聴者も、そんな破天荒なモノを楽しんで観てくれていました。でも今は、コンプライアンス…と言うのでしょうか。作る側も観る側も、まず“規制”を第一に考えてしまう。どこか妙な高尚さが生まれてしまって、それが膠着(こうちゃく)へと繋がっているのではないでしょうか」

学生運動が激化した1969年、当時テレビドキュメンタリーを制作していた田原総一朗が、殺気立つ早稲田大学バリケード内へジャズピアニスト・山下洋輔を連れて行き、その緊張感の中で演奏を撮影した『バリケードの中のジャズ』。1963年、映画監督・大島渚が、日本軍兵士として戦地へ向かい、その末に手足を失ったり、失明したりした韓国人たちの活動を追った『忘れられた皇軍』。これらのドキュメンタリー番組にはむき出しの怒りがあった。社会派番組だけではなく、たとえバラエティー番組にも独自性があり、作り手や演者の生々しい感情が伝わり取れた。

「膠着した状況を壊す何かが、今のテレビにはないんです。いや、若い人たちを中心に『何とかしなければ』という努力はきっとあるはず。しかし、僕らの時代は視聴者の意見が電話、ハガキだけだったので、関係性として1対1の気持ちでやっていけたけど、現在はネットがあるから、否が応でも何万人の視聴者が目に入ってしまいます。番組の感想も、すぐに目に見える形として表に出てしまう。もし暴力的や実験的な内容をやってしまうと、視聴者が離れてしまうことがはっきり分かるんです」

中井貴一扮する朝のワイドショー番組のメインキャスター・澄田真吾は、立てこもり事件の犯人から、事件現場に来いと名指しされる。なぜ彼は呼ばれたのか。犯人はどんなことを要求するのか。テレビというメディアに対する、さまざまな思いが絡み合う。

「くだらないことをやる、その美しさ。それがテレビのおもしろさだった。でも、そういう意識が薄らいでいる。だからこの犯人は、本気で『テレビはくだらない』と感じてしまった。テレビとしっかり向き合い過ぎてしまったんです。それら一連のやりとりから、テレビに対するある意味での“批判”を感じ取って欲しいんです。そう考えると、決してこの映画はエールではありませんね」

「結局はいまだにテレビドラマの映画化、というパターンばかり。もっともっとおもしろいことが出来ないのかな」という言葉が、『踊る大捜査線』シリーズの脚本家の口から飛び出したのは驚きだが、それは何より君塚監督自身が大のテレビっ子だからだ。

「“批判”と言いましたが、しかし僕自身はテレビの可能性を捨てていません。今は“街ぶら番組(=出演者が街をぶらぶら歩いて、いろんな発見をしたり、通行人に話しかけたりする)”が増えているけど、あれをタモリさんがやったとき、すごい衝撃を受けました。きっとまた、そんな新しい驚きと出会える気がしています。ほかのメディアの真似事ではなく、テレビだからできること。それを期待しています」

映画『グッドモーニングショー』は全国公開中

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