結婚して3年で、離婚届を突きつけた男。夫を思い留まらせた、妻からの意外な提案とは

結婚して3年で、離婚届を突きつけた男。夫を思い留まらせた、妻からの意外な提案とは

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  • 更新日:2019/12/06

—女は、愛されて結婚するほうが幸せ。

その言葉を信じて、愛することよりも愛されることに価値を見出し、結婚を決める女性は数多くいるだろう。

めぐみも、夫からの熱烈なアプローチを受けて結婚を決めた女のひとりだ。

だけど、男女の愛に「絶対」なんて存在しないのだ。

好き放題やってきた美人妻・めぐみ(30)は、夫の様子がおかしいことに気づく。夫を大切にすることを完全に忘れてしまった妻の行く末は…?

◆これまでのあらすじ

弘樹はついに我慢の限界に達し、自宅を飛び出した。そして妻にメッセージを送り、3つの条件をつきつける

決着をつけるべく話し合いに向かうが、めぐみから「正社員として働くことになった」と告げられた。予想外の報告に慌てふためくが…。

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「色々考えたけど、私、やっぱりサインはできない」

めぐみは、固い表情で1枚の紙を差し出した。

それは、先日の話し合いのときに弘樹が渡した離婚届だ。妻の欄を見ると、空白のままになっている。

前回は、お互いがお互いの主張をぶつけ合うだけの堂々巡りで、一旦お開きとなった。弘樹としては、このまま離婚になっても構わない覚悟だったが、何日か経ってめぐみから呼び出されたのだ。

こうして、今日こそ結論を出すべく、再び二人はリビングのテーブルに向かい合って座っていた。

「俺の気持ちは、この前メッセージで送った通りだ。お互いに歩み寄れればベストだと思っていたけれど、あの日、めぐみの話を聞いて関係修復は難しそうだと悟った」

「私の話って、正社員になることとか、家事を外注したり、手伝ってほしいってこと?」

正直、めぐみが正社員で働き始めるなんて予想もしていなかった。さらに前回、彼女は、家事は外注したいし料理もするつもりはないと言ってきたのだ。

夫が大黒柱で、妻は扶養の範囲内で働きながら家を守る。いずれ子どもが産まれたら、めぐみが子育てに専念するものだと思っていた。それなのに…。

「そうだよ。事前に何の相談もなかったわけだし。俺はもう、不要ってことだろう?」

弘樹が声を荒げると、めぐみはこれまで見たこともないような落ち着き払った様子で、ゆっくりと首を横に振った。

離婚届を突き返しためぐみからは、予想外の提案が。しかし、受け入れられないのは弘樹の方だった…。

別人のように変わった妻からの、意外な提案

「そんなことない。私は、これから新たな関係を構築したい。この前は感情的になって、ひどい言い方しか出来なかったけど…。お互いのためにもこれから対等な関係でいられるように、私もちゃんと仕事をしようって決めたの。

私が働くようになったら、ライフスタイルや環境が変わる。それに合わせた二人の新しい関係を作っていきたいの」

普段ならすぐに感情をむき出しにするめぐみだが、今日ばかりは淡々と話をしてくる。

だが弘樹は、めぐみに話の主導権を握られることがどうも気に食わなかった。

“養ってるんだから俺の言うことを聞け、っていうあなたの考え方が嫌だったのよ!”

あの日のめぐみの言葉が、頭の中にフラッシュバックする。

これまで、自分は妻の尻に敷かれていると思いこんでいたが、事実はそうではなかったらしい。むしろかなり亭主関白っぽくて、保守的な考え方だったのだと、今さらながら自覚した。

はっきり言って、めぐみを見下していた。

だから今回のように、彼女が冷静に話し合おうとすればするほど、「なんでお前なんかに言われなくちゃいけないんだ」「指示なんかされたくない」と思ってしまい、自分のプライドが邪魔をするのだ。

「そんなの、俺は嫌だ」

それだけ言った後、本心をすべてぶちまけた。

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「めぐみが働くって言ったって、俺の給料には到底及ばないだろ。それに、働いて家事を外注するなんて本末転倒じゃないか。

それなら、今のまま週3日のアルバイトで、残りの2日で家事をすれば良いじゃないか。

子どもの世話もベビーシッターに任せるなんて、絶対に反対だ」

そして一息おいてから、さらに続ける。

「俺は、バリバリ働く奥さんと結婚したわけじゃない。主婦業第一で、家庭を守ってくれる奥さんと結婚したつもりだ。

それを今さらダブルインカムでいきましょうなんて、話が違う。それなら、離婚した方がお互いのためだろう」

しかしめぐみは、相変わらず冷静な態度を貫く。

「今さら私が偉そうに言えることじゃないのは分かってるけど…。お互い努力したけど結果的にダメだったなら分かる。でも、努力もしないでこのまま離婚しちゃったら、逃げてるだけだと思う」

弘樹はどうにか反論しようとするが、言葉が出てこない。沈黙していると、めぐみがゆっくりと口を開いた。

「だから一度だけ、チャンスが欲しいの。まずは半年、頑張ってみない?私が働いたら環境やライフスタイルが変わって、あなたに家事を手伝ってもらうことも増えると思う。

新しい環境で、二人の関係性を築く努力をしてみない?それでもダメなら、離婚を受け入れる」

「そんな簡単なことじゃないだろ…」

弱気になった弘樹にめぐみがピシャリと言った。

「初めから諦めたら、何も変わらない。お互い、変わる努力をしようって話してるの」

「変わる努力…」

弘樹はポツリと呟いた。

これまでめぐみに変わってほしいとばかり思っていたが、自分が変わろうと思ったことは一度もなかった。悪いのはめぐみと決めつけ、彼女に反省を促すことばかり求めてきた。

「私も、弘樹に甘えっぱなしだったし、やりたい放題やってきた。ごめんなさい。

文句ばかりで自分は何も行動してこなかった。でも、相手に何かを求めてばかりじゃダメだって気づいたの」

二人の間に、重苦しい空気が流れた。

「ちょっと、頭冷やして考えてくる」

そう言って弘樹は、寒空の下、ベランダに出たのだった。

あの感情的なめぐみが、ここまで冷静に話し合おうとするなんて。彼女に、一体何があったのか?

ベランダに出てしばらくしても、弘樹の頭の中は混乱していた。

めぐみから諭されるなんて。めぐみに主導権を握られるなんて。

弘樹は、見下していたはずの妻・めぐみから正論を言われ、反論ひとつ出来なかった自分が情けなくて仕方なかった。

彼女の言っていることは間違っていない。だが…。

“そもそも、対等な関係だと思って結婚してないんでしょ?”

少し前に大学時代の友人・実咲に痛烈に批判されたが、今思えば、その通りだと思う。

これまで、妻は論理的に話せない、議論が出来ないと文句を言い続けてきたが、それはつまり、自分の言うことを聞かないことへの苛立ちだったのかもしれない。

今回、めぐみが建設的に話し合う姿勢を見せてきたというのに、自分は「言うことを聞けよ」という思いが捨てられず、妥協点を見つけるとかそういうことが出来なかった。

結局自分は、家庭において立場が上というパワーバランスや、主導権を保ちたかったのかもしれない。

それにしても…。

めぐみからの提案も彼女の態度も、予想もしていないものだった。感情的で自己中心的だった彼女が、同一人物とは思えないほどきちんと話をしてきたのだ。一体彼女に、何があったのだろうか…?

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妻・めぐみの反省

めぐみが冷静に議論しようと思ったのには、理由があった。

それは、数日前にアルバイト先の弁護士・細川凛と『ジーノ ソルビッロ アーティスタ ピッツア ナポレターナ』でランチをしていた時のこと。

「凛さんって、離婚されてから結婚しようと思ったことないんですか?」

バツイチだという凛に、めぐみは恐る恐る聞いてみた。

めぐみは、離婚という最悪の事態を想定して、どんな対策をとっておくべきか頭を悩ませていたのだ。

自分のような美人なら、まだ需要はあるかもしれない。ここはさっさと離婚して次を探した方が良いのかもしれないと、薄々考え始めていた矢先の事だった。

すると、凛はピザを食べようとしていた手を止め、目を丸くした。

「あるわけないわ。別れる時、お互い泣いてわめいて、散々話し合ったの。毎日毎日ね。離婚が成立するまでの間、体力も精神もすり減って…。

不眠にもなったし、食欲も落ちて、体重だって7キロも落ちたんだから。またあんな経験するのかと思うとゾッとする。こりごりよ。

それより…なんでそんなこと聞くの?なに、また旦那さんと喧嘩した?」

見事に言い当てられためぐみは、しょんぼりして俯く。

「はい…。全然うまくいってなくて。もう辛いし、いっそ別れて次の人探した方が良いのかなって思ったり」

すると凛は「あなたって人は…」と呆れた。

「そんなんじゃ、誰ともうまくいかないよ。自分が変わらないと」

「でも、今の私を受け入れてくれる人はいるかもしれないし。無理して相手に合わせる必要ってあるんでしょうか」

「はぁ? そりゃ、無理して窮屈な思いしてまで誰かに合わせる必要ってないと思うけど、最低限の努力は必要でしょう?

さっき言った通り、私は、離婚の時に本当に苦労したから、あんな大変な思いは二度としたくないと思ってる。あなた、そういう苦労をしてないから、易々と“離婚して次の人”なんて思えるのね。

だけど誰と結婚するにしても、夫婦ってそんなに簡単じゃないの。血の繋がらない他人同士が家族として一緒に暮らすんだから、夫婦関係を継続するには、それなりの努力が必要。

なのに、自分は変わりたくない、何の努力もせずに別れましょうなんて、逃げてるだけよ」

そこまで言い終えて、凛はピザにかぶりつく。

「じゃあ、私はどうすれば…」

めぐみがモジモジと答えると、凛はズバッと言い放った。

「自分で考えなさいよ。そうやって他力本願なところが、こういうことを招いてるんでしょ。あなたこのままじゃ、一生幸せになれないわよ」

「分かりました…」

そして最終的に、夫婦が出した結論とは…?

こうして凛から痛烈に批判され、「一生幸せになれない」とまで断言されためぐみは、自分なりに一生懸命考えたのだ。

これまでの人生で、受験の時も就活のときも、こんなに頭を使ったことがないというくらい必死で考えた。

どうして二人がこうなってしまったのか。自分の考え方の何が間違っていたのか。

そもそも自分は、大勢の男性からチヤホヤされて生きてきて、さらに弘樹からの猛烈なアプローチの上で結婚を選択した。

プロポーズ当時に弘樹から言われた「めぐみがそばにいてくれるだけでいいんだ」という言葉を鵜呑みにし、「自分は妻として存在するだけで許される」と本気で思っていた。

だから週3のアルバイトだけして小遣いを稼ぎ、生活費は全て弘樹持ち。苦手な家事も最低限こなせば良いし、夜だって飲みに行きたいときは飲みに行く。それが当然になっていたのだ。

−考えてみたら、私ばっかり美味しいとこ取り…。そんな結婚生活、弘樹が嫌になるのも当然か…。

だけど料理も家事も嫌いな自分が、夫のために完璧な妻になれるのかと考えてみると、現実的ではない。

子どものこともそろそろ真剣に向き合いたいと思ってはいるけれど、弘樹が家のことに非協力的なのは事実だから、こんな状況で子作りを前向きに考えられないのも本音だった。

ここで自分を偽って「完璧な妻になります」なんて宣言して、なんとか取り繕ったところで、すぐにボロが出るのも目に見えている。

離婚を回避するために、彼の要求をのんで大人しくしていればいい、という表面的な話でもないだろう。

−まずはやっぱり、経済的に完全に弘樹に依存してる状況を変えなくちゃ。だけどそうしたら家のことはどうする?弘樹には正直、もっと協力的になってもらいたいし…。子どもが出来たら、余計にそうだし…。

ひとり悶々と悩み苦しんでいたが、めぐみはハッと気がついた。

−私ひとりの問題じゃないんだった…。私だけひとりで変わろうとしたって意味がない。弘樹と話し合って解決しなくちゃいけないことなんだ…。

今までの自分を振り返ってみて、反省するべきところは、夫に愛されている自分は何をしても許されると思い込んでいたことや、養ってもらって当然という他力本願な点。

だけど自分たち夫婦に一番足りなかったのは、「二人で話し合って解決しよう」という姿勢なのかもしれない。

めぐみはようやくそれに気づき、冷静に、そして対等に、夫と話し合おうと思ったのだ。

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まだ、頑張れる

あの話し合いから、一週間後。

弘樹は沈黙を続けていたが、ようやく「分かった。俺も半年頑張ってみる」と、めぐみに告げた。

その言葉を聞いて、めぐみの目から涙があふれ出る。

「ありがとう…。私も頑張るから」

弘樹の答えを聞くまでの一週間は、とてつもなく長く感じたが、めぐみは答えを急かすこともなく待ち続けた。

でも自分が出来ることはちゃんとやろうと決めて、家事も頑張ってこなしたし、夜の予定を詰め込むようなこともしなかった。

しかし、やっぱりめぐみの家事はかなり大雑把だ。細かい性格の弘樹にとっては気になる点も多かったようだが、決して文句を言うようなことはなかった。

「変わらないといけないのは、俺もなんだよな」

弘樹は、少し照れくさそうにそう言った。

この一週間、めぐみが歩み寄る姿勢を見せたことが心を動かしたようだ。こうして、意固地だった弘樹がついにめぐみの提案を受け入れたのだった。

「ねえ、めぐみ。これ知ってる?海外のことわざなんだ」

ふと弘樹がスマホ画面を見せてきて、めぐみはキョトンとする。それは海外のことわざについて書かれたウェブ記事だった。

−A chain is only as strong as its weakest link.

「ううん、知らない。どういう意味?」

英語が苦手なめぐみが首を横に振ると、弘樹が穏やかな笑顔で説明してくれた。

直訳すれば、「クサリは一番弱い輪と同じだけの強さしかない」。つまり、どんなに頑丈なクサリでも、一つでも弱い部分があれば切れてしまうということだ。

チーム全体が強くなるためには、構成するひとりひとりが同じくらい強くなければいけない。他人任せの弱い部分があってはならないのだ。

夫婦関係も同じで、どちらか一方が頑張るだけでは、チームとしては強くなれない。

お互いに努力し、支え合っていく。当たり前のことだが、これこそ夫婦としてあるべき姿なのだ。

二人は今になって、それを痛感したのだった。

−まずは、半年。

めぐみと弘樹は、そう約束を交わした。

半年後にどうなっているかなんて、今は誰にもわからない。だけど二人とも、ようやく夫婦としてのスタート地点につくことができたような、そんな感覚だ。

「…俺たち、まだ頑張れるよな」

「うん。私たちなら大丈夫」

見つめあった二人は、照れ臭そうにハグを交わした。

Fin.

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