本の読み聞かせで親子関係も良好に! 母親は「理性」子どもは「心」の脳が活発に

本の読み聞かせで親子関係も良好に! 母親は「理性」子どもは「心」の脳が活発に

  • HEALTH PRESS
  • 更新日:2018/04/17
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読み聞かせで、母親は「理性の脳」、子どもは「心の脳」が活発に(depositphotos.com)

子どもに本を読み聞かせることは、豊かな感情をはぐくみ、言語能力がアップすることはよく知られている。しかし、効果は一方向のものではない。本を読んであげる大人も、自己肯定感が高まり、社会的スキルも向上するようだ。

ここでは、「本の読み聞かせ」について行われた国内外の研究を紹介しよう。

東京大学大学院教育学研究科・教育学部のサイトでは、「読み聞かせの影響」について情報がまとめられている。その中で、日本大学大学院総合科学研究科教授の泰羅雅登(たいら・まさと)氏(当時)らの研究チームが行った、読み聞かせ中の脳の働きを調べる実験が紹介されていた。

母親は「理性の脳」が、子どもは「心の脳」が活発に

この実験の結果、本を読む母親は大脳の「前頭前野」が活発に働き、聞いている子供の脳では「大脳辺縁系」が活発に働いていることがわかった。

ここで大脳の構造を簡単に説明しよう――。大脳は「大脳新皮質」「大脳辺縁系」「脳幹」の3つで構成されている。大脳新皮質は、大脳の表面部分にある。思考や判断といった、私たちがよりよく生きるための知性に関係することを司る。

大脳辺縁系は、大脳の内側にある。意欲や情緒といった、本能に近い感情に関係することを司る。脳幹は、脳と脊髄をつなぎ、生命維持に関係することを司る。

怒りなどの感情をコントロールする機能や理性的な判断、論理的な思考、コミュニケーションなどを行うのが、大脳新皮質の中の「前頭葉」と呼ばれる場所だ。

前頭葉の前頭前野は、サルよりもヒトのほうが特に大きく発達している。実体のないものを理解したりイメージしたりする抽象的な思考は、前頭前野で行われている。

喜怒哀楽を生み出す大脳辺縁系を、泰羅氏は「心の脳」と呼び、次のように分析している。

「子どもは読み聞かせを通じて、豊かな感情、情動がわき上がっているのだろう。脳は使うことで発達する。読み聞かせは、結果として子どもの豊かな感情を養い、『心の脳』が育つために役立っているのだろう」

加えて、母親は1人で音読をしているときよりも、子どもを相手に本を読んでいるときのほうが、前頭前野の活動がより活発になっていた。特に「コミュニケーションで活動する部分」が働いていることがわかったという。

「子どもも大人も、ともに楽しめることが読み聞かせのよさ。親が子どもの表情を見ながら、そして気持ちを考えながら話す言葉には、大きな力があるのだと思う。読み聞かせは親子の絆をつくるよい機会となるでしょう」(泰羅氏)

読み聞かせは、ただ子どもを喜ばせるだけでなく、私たち大人の側にもコミュニケーション力をアップできる恩恵が受けられるのだ。

親子の双方で社会的スキル・行動スキルによい影響

海外の研究でも「本を読み聞かせることで、子どもの言語や読み書きの能力が向上する」「子どもの脳の発達が促され、学童期の成績も向上する」などの効果が明らかになっている。

最近では、寝る前に本を読み聞かせると、親子双方の社会的スキルや行動スキルにもよい影響を与えることが明らかになっている。

香港大学社会福祉・社会行政学のQian-Wen Xie氏のグループが行った研究結果が、『Pediatrics』(3月27日オンライン版)に掲載された(ちなみに「Pediatrics」は「小児科学」という意味)。

研究グループは、約3300組の親子(子の年齢は0~3歳または3~6歳)を対象に、19件のランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を実施。本の読み聞かせが親子の精神面や感情面、行動面、社会性にどのように影響するのかについて検討した。

RCTでは、対象者を無作為に2つのグループに分け、1つのグループには評価しようとしている治療など(今回のケースでは読み聞かせ)の介入を行い、もう片方には介入群と異なる治療などを行う。

メタ解析については、独立して行われた複数の臨床研究のデータを収集・統合し、統計的方法を用いて解析することだ。

今回の研究で、読み聞かせを行うグループの親には、読み聞かせのトレーニングを実施したり、補助ツールを提供したりするなどの支援を行った。もう片方のグループの親には、こうした支援を行わなかった。

また、心理社会的な能力については、社会的感情の調整や行動面での問題、QOL(生活の質)、読書への関心、ストレスや抑うつ、育児能力、親子関係などの検査に基づき評価した。

心理社会的な能力には、自分自身をケアする能力や、自己肯定感を持ち、他者と有意義な関係を持つことで喜びを感じられる能力が含まれる――とXie氏は説明する。

解析の結果、親が子どもに本を読み聞かせることで、親子双方で心理社会的な能力が向上することが明らかになった。

この結果を踏まえXie氏は、「本の読み聞かせが社会的スキルや行動スキルを向上させると、自信を持って勧めることができる。子どもが賢くなるだけでなく、幸せな気持ちにさせ、親子関係も良好になる」と話している。

本の読み聞かせには、大きな可能性が秘められている。親子ではなくても、身近に小さな子がいるのなら、絵本を開いて読んであげるのはどうだろう。
(文=森真希)

森真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。

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