中小企業で出世するのは、大企業より簡単か?

中小企業で出世するのは、大企業より簡単か?

  • @DIME
  • 更新日:2017/09/15

■連載/あるあるビジネス処方箋

私は最近、50歳になった。同じ年齢の友人や知人らの中でここ数年、社長や役員になったものが20~40人ほどいる。その9割以上が、中小・ベンチャー企業だ。この場合の中小企業とは、正社員数で言えば300人以下とする。社長や役員になった彼らから聞くと、私なりに感じるものがある。やはり、中小企業は「出世する」ことに限って言えば、大企業よりははるかに「楽」なのだ。

今回は、中小企業では出世するのは、本当に簡単であるか否かを、私のこれまでの取材経験で得た情報をもとに考えてみたい。

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■ライバルが少ない

昇進・昇格をめぐる競争相手は、大企業の場合は入社年次が上下3年ほどの社員が多い。例えば、2000年入社ならば、1997、98、99、2000、01、02、03年入社の社員と競い合う傾向がある。課長、部長、執行役員、役員など、上に上がるにつれて、この傾向が顕著になる。少なくとも、昇進・昇格で競い合うライバルは30~50人はいる。

しかも、新卒として入社した時点では基礎学力や競争意識などが高い社員が多い。定着率も高い。社員教育も、中小企業よりは充実している。上司や先輩社員のレベルも概して高い。こういう環境下では、社員の競争はおのずと「密度の濃い競争」になる。多くの中小企業では、このような環境がなかなか整っていない。つまりは、ライバルが少ないのだ。

■残り続けるほどに、人材としての価値が高くなる

中小企業では競い合う相手が少なく、定着率が低く、辞めていく社員が多い。つまり、会社に残ることそのものが、昇進・昇格していくうえで大切な条件になる。私が取材を通じて観察していると、15年以上残る人は成果や実績に多少の課題があったとしても、課長などの管理職になる可能が高い。40代半ば以降になると、実績に乏しくとも、何らかのポストが与えられる場合は多い。私が取材で行くと、「こんな人でも部長、役員をしているんだな」と思うことがある。

例えば、業界や自社の実情や実態にも精通していないような人が、役員をしている。大企業では、このケースはきわめて少ない。中小企業では会社に残り続けるほどに、人材としての価値が高くなる面があることは否定しがたいのだ。それほどに、人材難が深刻ともいえる。

■競争の質が低い

中小企業では、大企業のような毎年の定期人事異動がほとんどない。大企業の場合は、部署や職種により多少の違いがあるが、多くの社員が通常は3年~5年で他部署へ異動になる。これで全社の業務が大きな問題なく進むのだから、社員の採用・定着・育成が一定のレベルをクリアしていることを意味する。

言い換えると、社員間の競争の質が高い。異動が毎年、大規模にできることは、社員のスキルや技術などの共有ができているとも言える。一方で、中小企業では大規模な異動が毎年はできない。これは、各々の社員が独自のスキルや技術などを持ち、そこに共有するものがあまりないことを意味する。これでは、社員間の競争意識が高くはならず、わずかのスキルを持つだけで「俺はすごい!」と思い込む可能性が高い。スキルや技術などの共有が進むと、実はそれはたいしたものではないことを本人が自覚するはずだ。

中小企業の社長の中には、「常に自分は正しい」と思い込んでいる「お山の大将」のような人がいる。これと似ている社員が、中小企業には目立つ。私が接する出版社の編集者の場合、大手の出版社(3~5社)、中堅(15~20社)、それ以下の中小(30~50社)と規模が小さくなるにつれて、発言の内容や態度が横柄になる傾向がある。例えば、わずか数年の経験で、業界や自社を語り、批判までする人は中堅、中小出版社に目立つ。

特に中堅・中小の出版社の編集者の場合30歳以降になると、少なくとも大手の同世代の編集者よりも、発言内容などがはるかに過激になり、挑戦的になる人が多い。まさに「常に自分は正しい」と思い込んでいる「お山の大将」のようになっている人もいる。つまり、このレベルの競争の中、長く残った人が、やがて役員や社長になる傾向は少なからずあるのだ。

■優れた一面をもっている

それでも、中小企業で役員や社長になるのは苛酷なことではある。周りの社員のレベルが必ずしも高くはない。辞めていく人は多い。賃金をはじめ、労働条件は大企業に比べると見劣りする。オフィス環境なども、大企業には追いつかない。こういう中、毎日、きちんと出社し、ある程度のペースで仕事をし、不満を抱えたとしても長く残ることは全員ができることではない。忍耐や根気、協調性、温厚な性格、心の広さなどを兼ね備えていないと、残ることはできないはずだ。その意味では、中小企業の社長や役員は、優れた一面をもっている。勤務する会社の規模を問わず、会社員が見習うべきではないだろうか。

文/吉田典史

ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。

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