串カツ田中の絶好調で分かった、飲食店「禁煙化待ったなし」の現実

串カツ田中の絶好調で分かった、飲食店「禁煙化待ったなし」の現実

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/02/20
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ほぼ全席の禁煙化に踏み切った「串カツ田中」が決算を迎え、禁煙がビジネスにどのような影響を与えるのか明らかになってきた。

禁煙にしたからといって劇的に業績が向上するわけではないが、もっとも重要な指標である客数は減らず、むしろ増加した。今後、喫煙者の数が激減することを考えると、飲食店は、どこかのタイミングで完全禁煙に舵を切らなければ、ビジネスが立ち行かなくなることは明白である。

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〔PHOTO〕iStock

「全席禁煙化」でも増収増益!

串カツ田中ホールディングスは2019年1月15日、2018年11月期の決算を発表した。売上高は76億6700万円、純利益が4億6900万円だった。同社は今期から連結決算に移行しており、単独決算だった前の期と単純に業績を比較することはできない。

ただ、2017年11月期決算時点における2018年11月期の売上高予想は75億円、純利益は3億9000万円だったので、当初の予想を大きく上回っている。店舗の増加分などについて総合的に考察すると、実質的に増収増益だったと見て差し支えないだろう。前期の決算を増収増益とするならば、東証マザーズに上場して以降、3年連続の増収増益決算を達成したことになる。

しかしながら世間がもっとも注目したのは、やはり全席禁煙化の影響だろう。

串カツ田中は2018年6月、立ち飲み形式の店舗を除く、ほぼすべての店舗における全席禁煙に踏み切った。国内では受動喫煙防止法が骨抜きの状況となっていることもあり、同社の取り組みは大きな話題となった。

もっとも全席禁煙といっても、フロア分煙となっている店舗や、喫煙ブースを設置している店舗が一部、混在するなど、100%禁煙を求める層からは批判の声が上がるという騒動もあった。だが、居酒屋という業態で、ほぼ全席を禁煙にするという試みは、これまでになかったものであり、大きな賭けであったことは間違いない。

6月から禁煙を実施し、約5カ月で決算を迎えるという流れなので、2018年11月期の決算には確実に禁煙化の影響が反映される。市場関係者も注目する中で迎えた決算は増収増益という結果だった。

客単価は下がったが客数が増加

では具体的に禁煙に移行したことでどのような変化が見られたのだろうか。串カツ田中の既存店(直営店)の業績推移を見ると、全席禁煙を実施した6月以降、客単価が前年割れする月が続いており、明らかに客単価が下がったことが分かる。下落幅の平均値は約3.2%である。

喫煙とアルコール消費の関係は必ずしも明確ではないが、喫煙する客が長居する傾向が顕著なのはよく知られた事実である。長居するとアルコールを余分に注文するので、一般的に喫煙者の客単価は高いとされる。喫煙者がいなくなったことでアルコールの注文が減った可能性は高いだろう。

一方、禁煙化したことで家族連れの入店が増えた。家族連れの顧客は過度には長居しないし、アルコールも大量に注文しないので、客単価としてはマイナス要因になる。だが家族連れが牽引したことで、全体の客数は大幅に増える結果となった。

禁煙後、9月を除いてほぼすべての月で入店者数が前年実績を上回っており、平均すると5.7%ほど顧客数が増えた。総合すると、禁煙化で客単価は減少したものの、それを上回る顧客数の増加があり、最終的な業績は増収増益だった。

この結果を経営学的に考えた場合、全面禁煙化には大きな効果があるという結論になるだろう。その理由は客数が大きく伸びたからである。

飲食店の業績は、基本的に客単価と客数で決まる。より高いものを出し、たくさんの来店があれば儲かるという話だが、両者はなかなか両立しない。安くすれば顧客数は増えるが利益が減ってしまい、高くすると利益率は上がるが顧客数が減ってしまう。

飲食チェーンにとっては客数が多い方がよい

客単価と客数のどちらを取るべきか、ということになった場合、大衆店ということに話を限定すれば、客数が増える方がよい。客数が増えたということは、潜在的な顧客がたくさん存在しているということであり、さらに店舗数を増やして業容を拡大する道筋が見えてくる。

一方、単価を上げることができるというのは、ファンを囲い込んだ成果ではあるが、その後の大きな展開は見込めない。いくらその店のファンだからといって、一定以上の単価上昇には限度がある。外食チェーン店は規模のメリットを追求するのが必須であることを考えると、単価ではなく、客数が増える方策について検討するのが経営の王道といってよい。

つまり全席禁煙を実施し、客数を増やす形で業績を拡大した串カツ田中の戦略は、経営学的に見て正しい判断ということになる。

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禁煙化の是非については潜在顧客層の動向からも方向性は明らかである。JT(日本たばこ産業株式会社)の調査によると2018年における喫煙率は男性が27.8%、女性が8.7%、男女計が17.9%だった。高齢者を除くと20代の喫煙率がもっとも低く、過去20年で喫煙率の低下がもっとも大きかったのも20代である。

つまり時代が推移するにつれて、若い人ほどタバコを吸わなくなっているということであり、この傾向は今後、さらに顕著となってくるだろう。現在、喫煙していない若い世代が中高年になって喫煙を開始するとは思えないので、近い将来、喫煙人口は劇的に減少する可能性が高い。

禁煙化できなければ、生き残るのは難しい

現時点においても、すでに全体の18%しかタバコを吸っていないということは、残りの82%が喫煙者に合わせているということであり、この図式はビジネスとして見た場合、どう考えても無理がある。

しかしながら、多くの飲食店では、禁煙化することで喫煙者の来店が減ることを危惧しており、全席禁煙には踏み切れていない。日本で受動喫煙防止法が事実上、骨抜きになったのも同じ理由と考えられる。

串カツ田中のように全席禁煙に踏み切るのはレアケースだろうが、状況を客観的に捉えれば、多くの店舗が同じ決断を迫られるのは確実であり、その決断が早ければ早いほど、最終的な損失は少なくなる。喫煙者が限りなくゼロに近くなり、喫煙者の来店が激減した段階で禁煙に踏み切ったとしても、もはやその店舗に来店する客はいなくなるだろう。

たとえは悪いが、喫煙者の激減がほぼ確実である以上、禁煙化できない店舗は一種のゾンビ企業ということになる。目先の利益を優先したゾンビ企業が、生存できる期間はそれほど長くない。

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