本革ブーツが1万5000円!?インドネシアの伝統皮革職人が手がけたブーツが目指すもの

本革ブーツが1万5000円!?インドネシアの伝統皮革職人が手がけたブーツが目指すもの

  • @DIME
  • 更新日:2017/09/26
No image

日本は経済先進国である。だがそれは、周辺の新興国との関係があってこそだ。

ASEAN諸国の経済発展は目覚ましいものがある。そして日本は、その恩恵を大いに受けている。たとえば、製造業種の企業にとっては生産拠点を人件費の安い東南アジアに移すことが最も手近な「新興国との関係性」だろう。

しかし、それだけでいいのだろうか?

新興国の良し悪しを人件費の安さのみで判断することが、はたして賢明と言えるのだろうか?

■本革ブーツが1万5000円!

インドネシアは、自国産業の育成に多大な努力を割いている新興国である。

それは中央政府の姿勢を見ても分かる。ジョコ・ウィドド大統領はかつて、「我々は外国から自動車を買っている。だが、それを自分たちで製造するようにしなければならない」と公言した。

その姿勢は、たとえばスマートフォン市場を見てもよく分かる。インドネシアでスマホを販売する場合、その構成部品の3割以上を国内で調達しなければならない。それを定めた法律があるのだ。だからこそ中央政府は、Appleに対しても「インドネシア国内の下請け企業に投資を」と促している。

そんな中、国際的クラウドファンディングサービス『Kickstarter』に興味深いプロジェクトが登場した。『Heimdall Footwear』という、革靴の製造販売を手がけるインドネシアのベンチャー企業が製品を出展したのだ。

これが日本人の目から見たら、かなり安い。

No image

Heimdall Footwear公式サイトのECページを見ても、本革のフロンティアブーツが1万5000円ほどである。これがもしレッドウイングの製品ならば、優に2倍以上の値がつくはずだ。

だが、我々日本人はこの値段を見て「安い!」と喜ぶだけでいいのだろうか。

■ジャワ島の皮革産業

No image

Heimdall Footwearの革靴は、西ジャワ州の州都バンドゥンの職人の手にかかったものだという。

インドネシアの中で最も経済規模の大きい島はジャワ島だが、その島内は民族別にいくつかの文化圏に分かれている。西ジャワ州はスンダ民族の土地だ。ちなみに日本でもよく知られている世界遺産ボロブドゥールは、ジャワ民族の建造物。

スンダ地方は皮革産業が盛んである。ガルトという街では、数え切れないほどの皮革製品専門店が軒を連ねている。通なライダーの御用達だ。

しかしじつのところ、「スンダ地方では皮革製品が特産品」ということはジャカルタ在住の日本人駐在員にすらあまり知られていない。そのような状態なのだから、日本国内で「スンダの革靴」などと言ってもまったく相手にされない。

そこに歪みが生じる。スンダの皮革産業は、日本のそれよりも歴史が深い。だから日本には存在しない皮革の匠たちがインドネシアには数多くいるはずなのだが、彼らにはブランド力が欠けているのだ。

この点が、インドネシア製品を国外へ輸出するための巨大な障壁として立ち塞がっている。

■「ブランド力」を育てる

60年前、アメリカ進出をはたしたばかりのSONYが突き当たったのは「メイド・イン・ジャパンの弱さ」だった。

「ジャップの猿真似製品などすぐに壊れる」という評判が、50年代のアメリカには蔓延していた。だから世界に先駆けてトランジスタラジオを製品化したにもかかわらず、当初はまるで見向きもされなかった。

我々現代人は、SONYが大企業であるという常識の上で生活している。だがその常識は、当時の営業担当社員が苦しみに苦しみ抜いた末に悪評を払拭した結果である。

ブランド力を育てるとは、そういうことだ。「いいものを手頃な価格で販売する」というだけでは、製品の付加価値を周知させることにはつながらない。

長い時間をかけて、そのブランドを世界中の人々の傍らに定着させるという工程が求められるのだ。

■「妥当な安さ」を求める

No image

Heimdall FootwearのKickstarterでの資金調達キャンペーンは、決して楽なものではなかった。

キャンペーン終了70時間を切った時点で、ようやく目標調達金額を集めることに成功したのだ。Kickstarterは「オール・オア・ナッシング」というシステムを採用していて、期限内に集まった投資が目標額より1ドルでも少ないとプロジェクト失敗になってしまう。それまでの投資は、当然受け取ることができない。

幸いにもHeimdall Footwearは、ギリギリの線でノルマを達成した。

だが、これはあくまでも「スタートラインが用意された」ということに過ぎない。クラウドファンディングは、今まで脚光を浴びることがなかった製品にチャンスを与えるものではある。しかし、その先を保証するものではない。

筆者はこの記事を書くにあたり、Heimdall Footwearのスタッフから画像を提供していただいた。製品そのものを試供するという話もあったが、さすがにそれはこちらから断った。この記事を単なる製品レビューにするわけにはいかない、という気持ちもある。

安くて良質な製品を、「お買い得な消耗品」ではなく「ひとつのブランド」として認識する。これこそが、我々を含めた先進国の住人がまずやるべきことではないか。

そしてその付加価値を買い手が認識したら、互いにとって妥当な価格で取引をする。安さの追求にも限度がある。もしHeimdall Footwearの靴が日本円で1万円を切るものだったとしたら、その時点で製造工程などを疑うべきである。そもそも、そうしたものを筆者は記事に書かない。

1万5000円は安いには違いないが、それは現地の職人たちの尊厳が保たれるであろう範囲の安価であると認識する。そうした金銭感覚は、先進国と新興国のウィンウィンな関係を築くために、常に備えておかなければならないはずだ。

【参考】Heimdall Footwear

取材・文/澤田真一

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

コラム総合カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
【数秘術】生まれた日でわかる彼とのエッチの相性
一卵性双子に関する15の事実
指原莉乃も納得の「オトしやすい女性の特徴7選」が話題に
  • このエントリーをはてなブックマークに追加