「風疹」にご注意。予防する方法はたったのひとつ!

「風疹」にご注意。予防する方法はたったのひとつ!

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  • 更新日:2018/11/21

■風疹、またの名を「三日ばしか」

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今年の風疹の累積患者数が近く5年ぶりに2千人を超える見通しとなり、首都圏中心の流行が全国に広がり始めています。来年以降も増え続ける恐れもあり、訪日客の減少など、東京五輪・パラリンピックに影響が出かねないとの見方も出ています。これは30代以降の男性にワクチン接種を受けていない人が多いのが原因でしょう。

あと、麻疹の流行も止まりません。麻疹は2015年に国内での排除宣言が出されましたが海外からの輸入により、再び感染が流行しました。2018年3月から沖縄県を中心にたくさんの患者が発生しました(WHO | Measles ? Japan [Internet]. WHO. [cited 2018 Aug 23]. Available from:http://www.who.int/csr/don/20-june-2018-measles-japan/en/)。

風疹は別名「三日ばしか」と呼ばれます。英語では「ドイツの麻疹(German measles)」とも呼ばれます。麻疹と風疹は“熱がでたり”“からだにブツブツがでる”といった割と似たような症状があるのです。どっちかというと風疹のほうが症状が軽いので「三日ばしか」というわけ。

風疹にしても“麻疹にしても熱が出てぶつぶつが出て”しんどい病気なんですが特別な治療薬はありません。よって、自然に治るまで待つしかありません。

で、たいていの人は自然に治ってしまいます、ちょっと年が上の人は、自然に去りゆく災難を「はしかにかかったようなもの」と例えました。はしかとは麻疹のことです。

では、勝手に治る病気だから看過していてもよいのでしょうか。いや、よくないです。

■「勝手に治る病気」は安心か

風疹と麻疹には、それぞれ非常に恐ろしい問題がついて回るのです。決して、甘く見てはいけません。

まずは、風疹。これは妊娠した女性が感染したとき起きる、先天性風疹症候群が問題です。

先天性風疹症候群はCRSとも言います。これはcongenital rubella syndrome の略です。congenital は生まれつきの、という意味。rubella が風疹。るべら、と読み、「べ」にアクセントがあります。syndrome は前にも出てきた「病気」という意味です(辞書的には「症候群」という訳語を当てますが、まあ「病気」でOKです)。

風疹に妊婦が感染すると新生児の先天異常の原因となります。これをCRSというのです。

例えば白内障や緑内障といった目の病気、脳髄膜炎、難聴、心臓の病気の原因になります。特に妊娠初期は要注意で妊娠11週までの感染では先天奇形のリスクは90%と非常に高い。先天奇形を起こす最大の感染症が風疹なのです(Bellini WJ, and Icenogle JP. Measles and Rubella Virus. In Versalovic J et al (ed). Manual of ClinicalMicrobiology 10th ed. 2011. 1372-1387.)。

CRSには治療薬はありません。なってしまえば、一生その異常とつきあっていかねばならないのです。もちろん、心臓の病気は手術できますし、対応方法がゼロってわけではないのですが。

ジャーナリストの岩永直子さんが、妊娠中に風疹にかかって子どもがCRSになった可児佳代さんを取材しています。必読です(先天性風疹症候群で亡くなった娘の宿題 同じ思いをする親子を二度と出さないために [Internet]. BuzzFeed. [cited 2018 Aug 23]. Availablefrom:https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/hand-in-hand-kanimama-taeko)。

麻疹のほうは幸い風疹と違って妊婦に感染して先天異常を起こすという問題はありません。

ですが、妊婦がなってもよいかというともちろんそんなことはありません。

ぼくは昔、妊婦さんが麻疹になり、熱のために早期陣痛が来て往生したことがあります。

早期出産の子どもは集中治療室(NICU)でのケアが必要ですが、麻疹に感染しています。周りはみんないわゆる「未熟児」です。小児科の先生や師長さんに、「そんな子どもをNICUに入れるなんてとんでもない!」と怒られます。お母さんのほうは産科病棟に入院させたいのですが、やはり同じ理由で「そんなお母さんを産科病棟に入院なんてありえない!」と言われます。かといって内科病棟に入れようとすると「うちは妊婦なんて診れない」と言われます。あー、どうしたらいいのよ! と大変でした

(Ohji G, Satoh H, Satoh H, Mizutani K, Iwata K, Tanaka-Taya K. Congenital measles caused by transplacental infection. Pediatr Infect Dis J. 2009 Feb;28(2):166?7.)。

麻疹の最大の問題は、「空気感染」することです。空気感染とはどういうことかというと、とっても遠くまで空気中を飛んでいって感染するってことです。例えば、エイズの原因になるHIVは空気感染しませんから、隣に感染者がいても「絶対に」感染はしません。けれども、麻疹患者が5メートルとか、10メートル先にいるだけでそのウイルスは空中を舞ってあなたに感染するのです。風疹も空気中を飛んで感染しますがその感染飛距離は麻疹ほどではなく、せいぜい数メートルといったところです。

というわけで、麻疹は大量の感染者がでやすいのが問題、風疹は麻疹ほどの感染力はないけど妊婦とCRSが問題ってことです。

いくら麻疹が「基本自然に治る病気」だといっても、たくさんの患者が発生すると、なかには死んでしまう人もでてきます。インフルエンザもそうです。

インフルエンザも基本自然に治りますが、何千万という患者が発生すると少なからぬ数の死亡者が出ます。ちょうど、この原稿を書いているときにヨーロッパでは麻疹が流行しています。4万人以上の患者が発生し、数十人が亡くなっています(KmietowiczZ. Measles: Europe sees record number of cases and 37 deaths so far this year. BMJ. 2018 Aug20;362:k3596.)。麻疹、侮りがたし、なのです。

■風疹・麻疹の予防法

麻疹や風疹には治療薬がない、と申し上げました。しかし、予防法はあります。

それは予防接種、ワクチンです。逆に言えば、「ワクチンだけ」がほぼ唯一の決定的な麻疹・風疹に対する予防法とも言えます。

2008年、ぼくが神戸大学に赴任したとき、大学のキャンパスで麻疹が流行しました。

対策会議が開かれたのですが、ぼくは耳を疑いました。

「2007年にも麻疹が流行した。そのときは大学を休校にして対応した。というわけで、今回も休校措置をとりたいのだが」

この発言にぼくは待ってくれ、と言いました。2007年に麻疹が流行し、大学は休校措置をとった。そして翌年も麻疹が流行している。同じ対策をとれば、また来年以降も同じ問題が起きるのではないか。

感染症に限らず、世の中にはいろいろな問題が起きます。それは仕方がありません。

しかし、大切なのは問題が起きること「そのもの」や問題に対応することだけではなく「前回の反省を踏まえてベターな対策をとること」なのです。一番やってはいけないのは、みんなが納得するための「対策を立てたフリ」です。

というわけで、神戸大学ではそれ以来、入職者・学生の麻疹ワクチン接種か抗体検査を必須にし、その後感染が流行しないようにしたのです。それはそれは、神戸大学すごいですね、と思ってはダメで、諸外国の大学は昔からこのくらいの感染対策はやっています。

昨今、大学はグローバルにしろとかなんとかいろいろ言われてますが、国際化するというのはこういうことをきちっと国際基準に基づいてやることなんですよ。

麻疹と風疹のワクチンは、MRワクチンとしてまとめられています。子どものときにこれを2回接種すると、かなりの確度で麻疹と風疹から身を守ることができます。

日本ではこのMRワクチンは定期予防接種に入っています。けれど、この仕組みが定着したのは比較的最近で、大人の中にはワクチンを打っていない人もたくさんいます。

また、様々な理由でワクチンをスケジュール通りに打てない人もいます。ですから繰り返し麻疹と風疹が流行しているのです。

では、どうすればよいのか。

対策は簡単です。なにしろワクチン以外に麻疹・風疹から身を守り、流行を防ぐ方法はないのです。これを徹底するしかありません。

■必要な「キャッチアップ」

そこで、キャッチアップです。

日本では、決められた年齢でないと定期接種としてワクチンが打てません。例えば、MRワクチンだと1歳のときと小学校入学前の2回しか無料のワクチン接種のチャンスがないのです。しかし、アレヤコレヤの事情でワクチン接種のチャンスを逃す人だっています。例えば、風邪で熱が出ていたとか、お母さんが仕事で忙しくて小児科に連れていけなかったとか。

ぼくが以前診た風疹患者は10代の妊婦でした。暗澹たる気持ちで彼女の診療をしたのですが、やはり子どものときにMRワクチンを打つチャンスを逃していました。

キャッチアップは定期予防接種のスケジュールの外であっても必要な人に無料でワクチンを提供する制度です。例えば、アメリカの疾病対策予防センターCDCはちゃんとキャッチアップに特化した情報提供をしています(https://www.cdc.gov/vaccines/schedules/hcp/imz/catchup.html)。

アメリカではいつだって予防接種を無料で受けられるのです。移民が多いアメリカではスケジュールを逃してしまう人も多いわけで。

予防接種制度は、頭の回転の速い、けれども本当の意味では頭の悪い官僚たちが、ちょこざいな小知恵を使って面倒くさくスケジュリングをしています。でも、これこそが机上の空論です。世の中も人々も、霞が関の官僚が部屋の中で考えるようには振る舞ってはくれないのです。

厚労省も麻疹・風疹対策をしたがっています。例えば厚労省は永井豪の『マジンガーZ』を使った麻疹のポスターを出したりして、悪しき官僚っぽさを脱却しようとしました。多くの人は「厚労省なかなかやるじゃないか」と褒めたのですがぼくはむしろがっかりしました。というのは、「ワクチン接種を検討してください」と書いてあるだけで「接種すべきです」とはしていなかったからです(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/dl/poster_z.pdf)。

「検討」なんていかにもお役所的じゃないですか。

アメリカのCDCは例えば麻疹の免疫がはっきりしない人には麻疹ワクチンが必要(need)だとかワクチン接種を受けるべき(should)と強く勧めています(https://www.cdc.gov/vaccines/vpd/mmr/public/index.html)。そこには、断固として麻疹をなくすぞ、増やさないぞ、というプロの決意が感じられます。

2013年にやはり風疹が流行したとき、ぼくは『もやしもん』で有名な漫画家の石川雅之さんと一緒に風疹ワクチン打ちましょう、の啓発活動をしました(http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1305/15/news152.html)でこのときも「やっぱ必要なのはキャッチアップだよね!」と意見していたのですが未だ進歩なし。

同じ話を何度もさせんなよなー。

『インフルエンザ なぜ毎年流行するのか』より構成)

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