恐怖の「第2次核時代」へ突入した世界

恐怖の「第2次核時代」へ突入した世界

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  • 更新日:2017/10/12
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国連安保理の会合(2017年9月21日撮影)。(c)AFP/DON EMMERT 〔AFPBB News

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北朝鮮が「電磁パルス攻撃」で日本を無力化!?

核ミサイル開発に猛進している北朝鮮は、2017年9月、金正恩朝鮮労働党委員長が視察した、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の核弾頭に搭載する新たな「水爆」について、「電磁パルス(EMP)攻撃」まで加えることができると主張した。

米ミサイル専門家は6月、米紙への寄稿で「2004年、北朝鮮がロシアのEMP技術を獲得した事実が米議会の調査を通じて確認された」と指摘し、金正恩政権が最初の攻撃手段として直接的な核ミサイル攻撃より、EMP弾を使う可能性が高いとの見通しを示していた。

EMP弾は、高高度で爆発させるため、大気圏再突入技術の確立を待たずに使用できると見られている。北朝鮮のICBM完成は、大気圏再突入技術の獲得が「最終関門」の1つとされてきたが、この技術なしに実戦に運用できる可能性が高まったのである。

この件は、一般的に「核による高高度電磁パルス(HEMP;High-altitude Electromagnetic Pulse)攻撃」と呼ばれている。このような脅威について予備知識のなかった多くの日本国民は、驚天動地の大事件として強烈な衝撃を受けたに違いない。

核によるHEMP攻撃とは、「高高度(30~400キロ)で核爆発を起こした場合、それにともなって巨大な電磁パルスが発生し、それによって起こる電気・通信電子システムの損壊・破壊効果を利用するもの。

人員の殺傷や建造物の損壊などを伴わずに広範囲にわたる社会インフラを一気に破壊・損傷する核攻撃の一形態」である。

この攻撃は、使用の兆候が掴み難く、また、直接的には人を殺傷しないクリーンなもので、気づいた時には回復困難かつ逃げ場のないブラックアウトの中に閉じ込められてしまうという、われわれがこれまでに経験したことのない新たな核の脅威である。

「電気が止まればすべてが止まる」。近代文明社会を石器時代へ引き戻すほどの、致命的打撃を与えずにはおかない極めて危険な核の応用的使用なのである。

1発のEMP攻撃の破壊効果は極めて大きく、被害を受ける地域は、地上近くでの同規模の核爆発による人員殺傷・建造物破壊を引き起こす範囲よりはるかに広大となる。

具体的には、地上数十キロにおけるEMPが及ぼす被害地域は半径数100キロ、400キロまで打ち上げれば半径2000キロを超える地域が影響を受けるとみられる。

万一、わが国上空135キロで突然核爆発が起こった場合(下図参照)は、ほぼ日本列島全域の社会インフラを支える電気・通信電子システムが瞬時に機能しなくなる。そうなったら、すべての都市の電力供給は完全に停止し、想像を絶する事態になる。

食料や生活用品の製造・流通は止まり、行政サービス・交通・運輸・金融・通信などのシステムは麻痺し、医療・介護なども行き届かなくなる。

人々の自宅では電気はもちろんのこと、水道、ガスも止まり、食事、入浴、トイレの使用もままならず、頼りとなるはずの市役所などの公共機関・施設等の機能も麻痺し、国民生活は大混乱に陥ることになる。

大量かつ広域に破壊された電気・通信電子システムなどを復旧するには、大量破壊を想定していない通常の故障状態などに備えた現行の復旧要員・資器材では対応困難である。

もし十分な準備がなければ、復旧には数週間~数年間の長期間を要し、その結果として飢餓および疾病などが発生・蔓延し、大勢の人々が死に至ることも想起される。

この際、自衛隊、警察、消防をはじめ、救援、復旧、治安維持等の活動にあたるべき各種機関なども、通信連絡や移動の手段を奪われて、効果的な活動ができなくなるであろう。

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北朝鮮によるEMP攻撃は、直接的には人的被害を与えることなく、日米韓の既存のミサイル防衛網を無効化し、国家機能や国民生活を計り知れない困難のどん底に陥れることを意味し、3国は、新たな脅威を前に、ミサイル防衛体制の大幅な見直しを迫られているのである。

恐怖の「第2次核時代」へ突入した世界 「核兵器のない世界」は欺瞞的

●オバマ大統領の「核兵器のない世界」宣言

米国のバラク・オバマ前大統領は、2009年4月、チェコ共和国首都での「プラハ演説」(「プラハ・アジェンダ」)において平和で安全な「核兵器のない世界」に向けた現実的かつ具体的な方途を追求すると明確に宣言した。

そして、2016年5月、唯一の戦争被爆国である日本で開催された伊勢志摩サミットに出席したのち、現職米大統領として初めて広島平和記念公園を訪問し、改めて「核兵器のない世界」の実現を世界に向かって訴え、その活動を主導する責任についても言及した。

これを機に、わが国では、「核兵器のない世界」がにわかに到来するのではないかとの国民の期待感がいやが上にも高まり、マスコミでは一段と平和主義的論調が目立つようになった。

しかしオバマ前大統領が「核兵器のない世界」を提唱する背景には、前述の北朝鮮の核ミサイル開発に見られるように、それに逆行する国際社会の動きが急速に進行している不都合な事実があり、核拡散防止への取り組みを急がねばならない深刻な問題が存在しているのである。

オバマ大統領の「核兵器のない世界」宣言は、ウィリアム・ペリー元国防長官(民主党クリントン政権)、ジョージ・シュルツ元国務長官(共和党レーガン政権)、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官(共和党ニクソンおよびフォード政権)そしてサム・ナン議員(民主党)による「4賢人の『核のない世界』への提言」(2007年~8年)を採り入れたものである。

提言は、「核報復の脅しによる抑止戦略はもはや時代遅れになり、核兵器に依存することは今や危険で非効率的になっている」ので、「核のない世界を目指すべきである」と説いた。

そして、スーザン・ライス国連大使ら約30人で構成されたオバマ前大統領の「核政策チーム」が、4賢人の提言を基に具体化したのが「核兵器のない世界」である。

核政策チームは、人間の安全保障優先、核の役割軽視あるいは軍縮派などのリベラリストと国家の安全保障優先、核の役割重視あるいは抑止派などのリアリストをもって構成され、それぞれの主張をバランスさせた折衷案としてまとめ上げた。

すなわち、核不拡散・軍縮を「リード」するとともに、脅威を「ヘッジ」する「リード・バット・ヘッジ」政策となっている。

その政策では、世界には「核兵器のない世界」と「核兵器のある世界」の2つがあり、「核兵器のない世界」は目指すべき目標として具体的措置をとりながら、それが達成されるまでの間、「核兵器のある世界」での確実な抑止を維持するとされたのである。

冷戦後の米国の核戦略は、クリントン政権による「核態勢見直し」(NPR)に始まり、ブッシュ政権下で「第2次核時代」(下記コラム参照)に対応する現実路線を指向した。

【コラム】第2次核時代

抑止理論の戦略理論家として有名な英国のコリン・グレイ(Colin Gray)は、1999年に出版した『第2次核時代』(The Second Nuclear Age)の中で、米ソという2国間だけで争われていた「第1次核時代」と比べて、現代はソ連よりもリスクを恐れない無数の地域同士の国々の争いに象徴される時代を第2次核時代である、と指摘している。

その後、オバマ政権になって、大統領が宣言した「核兵器のない世界」の方針に基づき、よりリベラルな方向へと核政策を転換し、同政権下で行われた2010年の「4年ごとの国防戦略見直し」(QDR)と「弾道ミサイル防衛見直し」(BMDR)、そして2010年の「核態勢の見直し」(NPR)に大なり小なり影響を及ぼしたのは事実である。

●恐怖の「第2次核時代」へ突入した世界
「核兵器のない世界」は欺瞞的

1970年に発効した核兵器不拡散条約(NPT)は、国連安保理常任理事国と重なる米、露、英、仏、中の5か国を「核兵器国」(NPT適用上、1967年1月1日以前に核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国)と定め、それ以外への核兵器の拡散防止を目指したものである。

しかし、1970年代のインドやイスラエルの核開発に始まり、現在、パキスタン、北朝鮮を加えて核兵器保有国は9か国に増え、今後も拡大し続けるとみられている。すでにNPT体制は崩壊したとの指摘には、率直に耳を傾けざるを得ないだろう。

他方、2009年の「プラハ演説」以来7年間余り、オバマ大統領の「核兵器のない世界」政策は、米露間での核弾頭の一部削減やテロリストによる核物質の入手阻止、イランの核関連活動の制限(「包括的作業共同作業(JCPOA)」の合意)などの分野で一定の成果は認められよう。

世界の核兵器の9割以上を保有する米国とロシアは、戦略兵器削減条約(STARTⅠ)以来、戦略攻撃能力削減条約(SORT)や2011年に発効した新STARTに基づいて核兵器を少しずつ削減してきたため、世界の核兵器(弾頭数および運搬手段)総数自体は緩やかに減少している。

しかし、新STARTの合意内容は、発効後7年以内に、配備核弾頭数を1550発に、ミサイルや戦略爆撃機などの運搬手段を700基(非配備を含めると800基)に、それぞれ上限として削減するに過ぎない。

しかも、両国は、その削減分を補うかのように、核弾頭と運搬手段およびその生産に関して「広範かつ巨額を投じる長期的近代化計画」を進めている。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の2016年版報告書によると、中国は核弾頭数を増やし(約260発、前年比10発増)、核兵器の近代化や新たな核兵器システムの開発を進めている。

北朝鮮は、約10発(前年比2発増)の核弾頭を保有し、世界の中止要求を無視して強力に核ミサイル開発を続けている。

また、NPTの「核兵器国」である英(約215発)、仏(約300発)両国も核戦力近代化を進め、インド(100~120発)とパキスタン(110~130発)はそれぞれ前年から10発増やすなど、核兵器生産能力を拡大し、新たなミサイルシステムを開発している。

どの核保有国も、近い将来に核兵器を放棄する意図がないことは明らかだ。

現在、核保有9か国の持つ核弾頭総数は、約1万5395発に及び、そのうちの約4120発が作戦展開中である。(同上報告書)

一方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、2016年3月に放映された国営テレビのドキュメンタリー番組で、同国が2014年3月にクリミア半島を併合した際、「核兵器を臨戦態勢に置く用意があった」と発言した。

これは、明らかに東方拡大を続けるNATO(北大西洋条約機構、米国)を睨んだ核による脅し以外の何物でもない。

その後9月になって、独ZDFテレビは、米国が年内にも独ビューヒェル航空基地に新型の小型精密誘導核爆弾「B61-12」(航空機搭載)20基を配備する意向と報じた。

それに対して、ロシア大統領府の報道官は、「欧州のパワーバランスを変える。軍事力を均衡させるために、ロシアが必要な対抗措置を取らなければならないことは疑う余地がない」と応酬した(モスクワ、23日、ロイター)。

また、2016年5月、プーチン大統領は、米国のルーマニアとポーランドへのミサイル防衛(MD)システムの配備を巡り、「(ロシアのミサイルの)照準を合わせることにもなり得る」と威嚇した。

中国は、米国に対する「相互確証破壊戦略」(MAD)の態勢を確立するため、確実な核報復力(第2撃力)としての弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)の配備を強化している。

その隠密性・残存性を高める潜伏海域として南シナ海の重要性が認識され、そのため中国は、近年、南沙諸島の岩礁埋め立て・軍事拠点化を強引に進めており、米中間の緊張を高める要因となっている。

このような米露間の応酬あるいは米中間の緊張が示すように、世界では現実に核戦略上の熾烈な戦いが繰り広げられている。

核廃絶を叫ぶだけで、核問題に対して議論することさえも拒んでしまう核アレルギーを持ち、国家の防衛に当事者意識の希薄な日本人の多くは、一連の動きに一瞥の関心も示さなかったに違いないが・・・。

さらに、核戦略の専門家として高名な米国戦略国際問題研究所(CSIS)のクラーク・マードック氏の論文「2025-2050:Recommended U.S. Nuclear Strategy」によると、2030(+)年頃には核保有国が9~11か国となり、2050年までにそれ以上~18か国未満に拡大すると予測している。

地域的には、中東圏、北東アジア、欧州での拡散が顕著となり、核兵器の応用的使用としての「核によるHEMP攻撃」の危険性が増大するとも指摘している。

これが、核兵器をめぐる世界の現実であり、冷戦期を「第1次核時代」(The First Nuclear Age)とすれば、いま世界はコリン・グレイ氏が指摘する「第2次核時代」(The Second Nuclear Age)という「核の恐怖時代」に再び突入しているのである。

これまでは、比較的安定した米ソ(露)の2国間対立であったが、そこに核・軍事大国として台頭する中国、さらにインド、パキスタン、イスラエルに北朝鮮までが加わった多国間問題へと形が変わり、それがゆえに、複雑で不安定そして危険な核対立の構造へと国際情勢は悪化の一途をたどっている。

50歳代半ばのオバマ大統領が「プラハ演説」そして「広島スピーチ」で「私の生きている間は実現されないだろう」と述べたように、核廃絶の道のりは遅々としてなお険しく、逆に核が拡散し、その脅威が増大している現状から、むしろ理想追求の目標は遠退いているのが国際社会の現実である。

その意味において、現実世界から見れば、「核兵器のない世界」は欺瞞的であるとの指摘や批判から免れることはできないのではないだろうか。

世界の現実に目を瞑り、真剣な核論議を避ける日本 世界で唯一の戦争被爆国日本と核アレルギー

わが国では、昭和20(1945)年8月に広島市と長崎市に投下された原子爆弾(原爆)によって、一瞬のうちに数多くの市民が犠牲になった。

投下の年、広島と長崎ではそれぞれ14万人、9万人の被爆が確認され、その後の5年間に被爆者数は拡大して広島で20万人、長崎で14万人、現在までの総計は広島40万人、長崎20万人が被害を受け、街は瞬時にして焦土と化した。

そして、原爆投下後70年余りが経過した今なお、被爆の後遺症に苦しみ、筆舌に尽くしがたい苦難の日々をもたらした。

世界で唯一の戦争被爆国日本および日本国民は、このような惨禍が二度と繰り返されてはならないとの強い義憤のもと、「死に神」、「死の道具」(いずれもオバマ大統領の「広島スピーチ」)としての原爆の破壊力の実相や被爆の悲惨な体験を世代や国境を越えて、人類が共有する「記憶」として継承されるべきであると主張し、「核兵器のない世界」の実現を世界に訴える使命と責任を有しているのは当然のことである。

その被爆体験を踏まえて、わが国は核兵器を①持たず、②作らず、③持ち込ませずの「非核三原則」を国是としてこれを堅持し、原子力基本法では核兵器の製造や保有を禁止し、さらに、核兵器不拡散条約(NPT)を締結し、非核兵器国として核兵器の製造や取得をしないなどの義務を負っている。

これらを背景に、日本は、核兵器国と非核兵器国の双方に働きかけを行うことを通じて、「核兵器のない世界」を実現するために、官民一体となって国際社会を主導していくよう努めてきた。

しかし、そのようなわが国の努力を嘲笑い、また、オバマ大統領が提唱する「核兵器のない世界」に逆らうかのように、国際社会では核が拡散し、その脅威が増大する現実が顕になっている。

特に日本およびその周辺地域は、核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮によって「かつてなく重大で、眼前に差し迫った脅威」に曝され、わが国は戦後最大の安全保障上の危機に直面している。

それでもなお、悲惨な被爆体験による核アレルギーとそれに根差した歴代政権の厳格な核政策によって、国民の間にも、また、日本の安全保障・防衛に責任をもつ政府・与党の間にも、現状から一歩でも踏み出した論議を行おうとの前向きな動きは見られない。

長い間、核をタブー視してきたツケか、日本全体が世界の現実を直視する勇気をなくし、すっかり世界へのリアルな現実認識を欠くようになってしまったかのようである。

わが国においては、同じような状況が過去にも起こったことがあり、当時、「非核五原則」と言われた現象である。

2006年10月、北朝鮮は、「日朝平和宣言」(2002年9月)や「六者会合に関する共同声明」(2005年9月)ならびに国際社会の度重なる自制要求を無視して核実験を強行した。

またこれに先立ち、日本に届くミサイルを保有する北朝鮮は、1998年に引き続き、2006年7月、テポドン2号を含む7発のミサイルを日本海に向けて発射した。

それらの核実験とミサイル発射が、身近に迫る死活的な脅威として多くの日本人を震撼させ、有形無形の反応を惹起する「引き金」になった。

それを機会に、わが国においても核政策について活発に議論しようとする動きが出てきた。その政治的イニシアティブを発揮した代表格が、当時の麻生太郎外務大臣と自民党の中川昭一政調会長(故人)であった。

これまでのわが国の政治や言論界の状況から見れば、その勇気や戦略性は大いに評価されてしかるべきであった。

ところが、すぐさまマスコミを含めた旧来の平和主義勢力が頭をもたげ、あるいは親中派などの意図的な発言によってこの動きを封じ込めようとする反作用が強まった。

当時、約8割の国民は核論議を支持していたが、核兵器を①持たず、②作らず、③持ち込ませずの「非核三原則」に加えて、核兵器について④言わず、⑤考えずの「非核五原則」と言われた言論封じや思考停止に向けて世論を誘導し、執拗に核論議を封印しようと試みたのであった。

今また、北朝鮮の核ミサイルの脅威について、広く国民の間に共有されつつあるが、活発で現実的な核論議を展開する状況はなかなか生まれてこない。

すでに北朝鮮は、日本列島を十分に射程圏内に収め、日本や韓国防衛に協力する米領グアムの米軍基地まで届く多種大量の弾道ミサイルを保有しており、わが国の防衛は直接的・間接的な脅威に曝され、その緊迫度は日々増大している。

さらに、北朝鮮が米国に届くICMBを完成させるのは時間の問題と見られており、日本が核の威嚇や攻撃を受けた場合、北朝鮮の報復を恐れて米国が反撃を躊躇うようなことは大いにあり得ることである。

そうなると、日本に対する米国の拡大抑止(核の傘)に穴が開くことは明白であり、それを埋めて抑止の体制を維持するためには、わが国に米軍の戦域・戦術核を配備させることも有力な選択肢の1つである。

さらには、NATO諸国のように、有事に使用権を行使できる米国との核共有(Nuclear Shearing)に踏み込むことなども、真剣に論議すべき時に差し掛かっているのではないか。

核兵器について④言わず、⑤考えずの「非核五原則」は、わが国の安全保障・防衛を強化するうえで、「百害あって一利なし」である。

いま眼前に迫っている国家的危機あるいは国難を打開するには、国政の場はもとより、広く国民の間で、自由で真剣な、また現実的で責任のある核論議を積極的に展開しなければならない。

そして、すみやかにわが国の核政策の方向とそのあり方に関する論議を集約し、直ちに具体的な政策・措置として実行に移すことが必要であり、そのために、政治の強力なイニシアティブによって国民の合意形成を急がなければならない。

「リード・バット・ヘッジ」政策の追求 「核兵器のない世界」の理想追求と「核兵器のある世界」の現実対応は矛盾しない

前述の通り、世界には「核兵器のない世界」と「核兵器のある世界」の2つがあり、その現実を直視したうえで、状況に即応した実効的な政策が必要である。

「核兵器のない世界」は追求すべき目標として具体的措置を講じながら、その達成に至るまでの間、「核兵器のある世界」での確実な抑止を維持しなければならない。

つまり、核不拡散・軍縮を「リード」する一方で、核の脅威を「ヘッジ」する「リード・バット・ヘッジ」の政策がなければ、国の平和と安全は確保できない。

言い換えれば、「核兵器のない世界」の理想を追求することと「核兵器のある世界」に対応することは、一見矛盾した行為のように見えるかもしれないが、世界の現状を踏まえれば、決して矛盾したものではなく、それは現実主義からの確かな回答と言えるのではないだろうか。

2017年7月、核兵器を国際人道法に違反するものだとして初めてその全廃と根絶を目的として起草された「核兵器禁止条約」が国連本部で採択された。それに対して日本政府は、下記の2つの理由を挙げて、米国などの核兵器の保有国とともに本条約作りの動きに反対し、今後も署名することはないとの基本姿勢であった。

その理由の第1は、わが国には核開発を続ける北朝鮮の差し迫った脅威があり、日本が同盟国米国の核の傘によって守られている以上、条約には賛成できないというものである。

第2に、日本は、核軍縮は核保有国と非保有国が一緒になって段階的に進める必要があるとの立場をとっているが、本条約には米国やロシアなどの核保有国、それに米国の核の傘の下にある日本やドイツのようなNATO加盟国など、合わせて38か国が参加していない。

その一方で、非保有国が参加する二分化対立の構図になっており、そのため、条約はできても具体的な結果を作り上げることはできないとの理由である。

しかし、わが国は、唯一の戦争被爆国として核廃絶を国際世論に強く訴えることができる特別な存在であり、政府も「核兵器のない世界」を目指すことを日本の責務だと位置づけている。

同時に、北朝鮮からの差し迫った核ミサイル脅威に対して米国の核の傘に入ることは国としての死活的な選択であり、同時に日本が自ら弾道ミサイル対処能力の更なる向上や敵基地攻撃能力の保有などによって核抑止力を強化することも、わが国の生存と安全を確保するうえで、不可欠である。

つまり、核廃絶を「リード」する一方で、核の脅威を「ヘッジ」する「リード・バット・ヘッジ」政策を追求することは、わが国の基本方針として決して矛盾のない、賢明で、現実的な選択である。

また唯一の戦争被爆国日本であればこそ世界に向かって発信できる実効性と説得力のある政策ではないだろうか。

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