日立製作所、重電企業から巨大IT企業へ変貌...“ルマーダ最重視”経営で容赦なきグループ解体

日立製作所、重電企業から巨大IT企業へ変貌...“ルマーダ最重視”経営で容赦なきグループ解体

  • Business Journal
  • 更新日:2019/08/25
No image

「Wikipedia」より

日立製作所は、親子上場の解消に向けて動き出している。親子上場は日本特有の資本政策だ。以前から批判的だった海外勢に加え、国内の機関投資家も「少数株主の利益にかなう統治構造なのか」と、厳しい目を向け始めた。親子上場銘柄に投資しない海外の投資家も増えている。親子上場が、株価が上がらない一因ともなっている。企業集団にとっては、親子上場の解消が大きな経営課題として浮上してきた。

日立製作所と半導体装置の日立ハイテクノロジーズ、建設機械の日立建機、特殊鋼の日立金属、電子・自動車部材の日立化成の上場子会社4社は、代表的な親子上場解消銘柄である。

6月7日の東京株式市場で、日立ハイテクノロジーズ株が買われた。親会社の日立製作所が「完全子会社化を検討」との一部報道を受けて、注文が殺到。制限値幅の上限(ストップ高水準、700円高)で比例配分となった。公開買い付け価格のプレミアム(上乗せ)への期待感からだ。株価は前日終値比14.7%高の5450円へ急騰した。週明けの10日は先週末比370円(6.8%)高の5820円まで買われた。

“思惑買い”はほかの日立系の銘柄にも及んだ。6月7日、日立建機は3%高、日立金属の上昇率は4%を超えた。「親子上場解消」銘柄は買いなのだ。

日立製作所は、かつて多数の上場銘柄を抱えていた。2009年3月期に、製造業で過去最大の7873億円の最終赤字を計上してから10年 、聖域なき再編を進めている。ここ数年間でも、16年に日立物流の株式をSGホールディングスへ譲渡。日立キャピタルの株式を三菱UFJフィナンシャル・グループに売り渡した。17年、日立工機と日立国際電気をコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に売却。19年、クラリオンを仏フォルシアにトレードした。リーマンショック直後に19社あった上場子会社は4社を残すのみとなった。

「ものづくり」からデジタルで稼ぐ会社に変身

「あらゆる場面で、(子会社などの)資本構成を見直していく」

日立製作所の東原敏昭社長兼CEO(経営最高責任者)は、5月10日に開いた新3カ年中期経営計画の発表会見で、親子上場の解消を宣言した。

22年3月期までの中期経営計画では、19年3月期に9兆4806億円だった連結売上収益を年率3%伸ばし、3年後に10兆円以上とする。7549億円だった連結営業利益は1兆円を目指す。8.0%の売上収益営業利益率を10%超に引き上げる。

あらゆるものがインターネットにつながるIoTが柱となる。日立製作所は16年から「ルマーダ」という名称でIoT事業を開始。センサーなどで収集したデータを分析することで顧客の業務を効率化し、対価として手数料を受け取る。工場の自動化を背景に需要が増加し、ルマーダの売上高は1兆円規模になった。東原社長は「(担当部門から)3年後に売上高で1兆6000億円の目標が出てきたが、2兆円にしようとハッパをかけている」と意気軒昂だ。

今後3年間でIoTやインフラ関連を中心にM&A(合併・買収)に最大2兆5000億円を投じる。IoTとの結び付きが強い事業をグループに取り込み、「ものづくり」中心の会社からデジタルで稼ぐ会社に転換する。

IT(情報技術)を軸として関連事業に経営資源を集中しながらグローバル展開し、独シーメンスや米IBMと戦える企業を目指す。同時に、利益率重視の経営を明確にした。売上収益営業利益率を22年3月期に10%以上とする目標を掲げる。営業利益率が5%以下の事業は再編の対象となる。4つの上場子会社についても、今後3年以内に方向性を決める。

上場子会社4社が足を引っ張る

日立の19年4~6月期の連結決算(国際会計基準)は、親と子の明暗がはっきりした。

売上高にあたる売上収益は2兆325億円と前年同期比6.2%減少し、調整後の営業利益は1243億円と16.0%減った。売上収益営業利益率は6.1%と0.7ポイント低下した。最終損益は株式売却益があり14.3%増の1203億円となったものの、本業の苦戦が目立った。

成長部門と位置付けるITは好調だ。部門別の調整後営業利益は14.5%増の402億円となり、営業利益率は8.7%と日立全体(6.1%)を上回った。特にIoT基盤のルマーダを活用したサービスが伸びた。一方で上場子会社4社が業績の足を引っ張った。

【上場子会社の19年4~6月期決算】( )内は前年同期比
※社名:売上収益、調整後営業利益、営業利益率

・日立ハイテクノロジーズ:1616億円(6.6%減)、141億円(13.5%減)、8.7%
・日立建機:2346億円(2.3%減)、226億円(17.2%減)、9.6%
・日立金属:2339億円(9.7%減)、55億円(65.4%減)、2.3%
・日立化成:1559億円(7.7%減)、74億円(36.2%減)、4.7%

日立製作所の4~6月期連結決算のセグメント売上収益・調整後営業利益を基に、増減比を作成した。調整後営業利益は売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を差し引いた日立グループの独自の指標である。

4社の調整後営業利益の合計は496億円で、日立グループ全体(1243億円)の4割にとどまる。上場子会社は景気の影響を受けやすい事業が多く、これまでも景気の回復局面では日立グループの業績に貢献してきたが、ここにきて減速している。

株式市場からは「景気の影響を受けやすい上場子会社をいつまで抱えているのか」と指摘されてきた。

日立化成を売却する方針で複数企業と交渉を進めている。日立化成は日立金属、日立電線(現・日立金属)と並ぶ日立グループの「御三家」の一角だが、再編に聖域は設けない。残り3社についても、ルマーダと親和性がなければ、連結決算から外す方向だ。

その日立化成だが、8月16日に株価が急騰した。一時、380円(12.7%)高の3365円となり、年初来高値を更新した。終値は3310円(325円)だった。日立製作所による日立化成の売却は入札段階にあるとみられているが、米ペインキャピタルやカーライル・グループなど複数のファンド及び企業から買収提案を受けたと、一部のメディアが報道したため、株価が上昇した。TOB価格が高騰し、TOBで完全子会社にする場合、買収資金が8000億円を超える可能性が出てきた。当初、売却価格は6000~7000億円とされていたが、複数のオファーがあったことでTOB価格が高騰すると株式市場は読んだようだ。日立化成株を51.2%保有する日立製作所にもメリットがある。日立化成株は日立製作所の売却方針が報じられた3月に急上昇。株価2000円割れの水準から4月に3000円台に跳ね上がり、「買収に複数提案」報道でさらに高くなった。

日立製作所は、大型発電機など重電部門が花形部署で“重電にあらざれば人にあらず”といわれた時代があったが、今はルマーダが同社の未来を担う花形事業となった。
(文=編集部)

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

経済カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
「格安スマホ」で急成長したあのベンチャーは、なぜ倒産したのか?
トイレトレーラー、箕面市が大阪府で初導入の方針
ソフトバンク幹部が「やっぱり......」 楽天の携帯本格参入が遅れた理由
【トヨタ カローラ 新型】TNGAプラットフォーム採用、ディスプレイオーディオも搭載
元国税が暴露。日本企業の内部留保が増えると社員の給料が減る訳
  • このエントリーをはてなブックマークに追加