GSOMIA失効まであと3日、延長は支持層が納得せず......追い詰められた韓国のジタバタ劇

GSOMIA失効まであと3日、延長は支持層が納得せず......追い詰められた韓国のジタバタ劇

  • 文春オンライン
  • 更新日:2019/11/20

「これは日本との問題というより韓米問題。GSOMIA(軍事情報包括保護協定)を破棄すれば米国との関係も揺れる」(中道系韓国紙記者)

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文在寅大統領 ©getty

米韓安保協議でも「日本の輸出規制処置が撤回されれば」

23日午前0時。GSOMIA失効期限が迫る中、韓国の保守系メディアからは「延長すべし」という声が上がっている。GSOMIA破棄で保守派が憂慮しているのは、「米韓同盟の弱体化」、「米国から防衛費負担増額の圧迫」、「駐韓米軍撤収の危機」などだ。

しかし、文在寅大統領は15日、米韓安保協議で訪韓したエスパー米国防長官ら米軍関係者を前に、「日本の輸出規制処置が撤回されればGSOMIA終了決定を再考できる」(京郷新聞、11月15日)と話し、17日、タイのバンコクで開かれた日韓国防相会談でも韓国は従来の立場を繰り返した。この会議に参加した韓国の鄭景斗国防相は、今年8月、韓国がGSOMIA見直しを決めた際にも最後まで反対した人物として知られ、前出の記者は「青瓦台(大統領府)の意向を伝えるのは忸怩たる思いがあったと思います」と話す。

GSOMIAは韓国側から提案されていた

韓国がGSOMIA破棄の意向を日本に通告したのは8月22日。日本が安保上の問題から韓国に対して行った「輸出規制」と「ホワイト国(輸出管理優遇国)排除」への対抗措置としていた。「青瓦台の大統領側近が強硬に押し切った」(同前)という。

もともとGSOMIAは1989年、韓国から日本へ提案されていたもので、李明博元大統領時代の2012年6月、締結寸前で世論の反対に遭い、延期された。

日韓で締結が実現したのは2016年11月23日。その年の1月と9月に北朝鮮は核実験を行っていたため、北朝鮮の核・ミサイル情報を共有することが狙いとされた。「米国にとっては、北朝鮮よりも、中国を牽制する意味合いが強い」(同前)協定だといわれる。

韓国社会は、折しも、崔順実事件で混乱に陥っていた時期。追い詰められる中、朴槿恵前大統領は野党(進歩派)の反対などを強硬に押し切って締結に踏み切った背景がある。

GSOMIA「名分なしに延長すれば支持層が納得しない」

別の中道系の韓国紙記者も、破棄することに批判的だ。

「8月、韓国が日本に破棄の意向を通告した時は正直、仰天しましたが、ちょうど曺国事態が始まってその火消しという意味合いもあった。建前上は、日本も安保上の問題から韓国への輸出規制とホワイト国排除を行ったと説明しましたから、安保上の信頼が壊れた日本とはGSOMIAは続けられないというのが青瓦台の立場です。政府は曺国事態での迷走もあり、来年4月の総選挙を見据えると、日本からの譲歩なしに延長すれば支持層が納得しない。

しかし、有事の際、GSOMIAがなければ駐韓米軍や他地域に駐屯している米軍の朝鮮半島支援展開においていちいち米国を介さなければならず、不必要な時間がかかり、円滑なコミュニケーションがとれなくなります。また、エスパー米国防長官が話していた通り、GSOMIAは韓米日3カ国協力の象徴的な協定で、これが終了されれば韓米日の協力が弱まってしまう。

GSOMIA破棄で、日本のみならず今度は米国との関係にどんな綻びができるか、それを青瓦台は想像しているのか疑問です。ここは名分などを考えずに国益を優先させるべきなのですが」

徴用工裁判判決がきっかけに

そもそもGSOMIAを巡る葛藤の発端は、昨年10月30日に出た徴用工裁判の判決だ。韓国では日本の輸出規制はこの判決処理に動かなかった韓国への報復とする見方が根強い。判決後、1965年の日韓請求権協定で解決済みとする日本に対し、韓国は「判決を尊重する」としたまま、沈黙を保った。

その間、韓国では、「青瓦台は1965年の韓日基本条約そのものの見直しを宣言するのではないか」といった声も聞かれたが、そんな動きも見られず、5月には日本が日韓請求権協定に基づいて第三者を交えた仲裁委員会の設置を要請。しかし、韓国はこれに応じず、ようやく動いたのは6月だった。大阪で開かれたG20への訪日を前に文在寅大統領が「1+1(日韓企業)」案を提案したが、時すでに遅し。日本は5月に李洛淵総理が「政府の対応策では限界がある」と発言した時点で、輸出規制などの韓国への報復措置を考えていたという話が韓国紙記者の間でも定説になっている。

しかし、実は昨年内に解決する見込みがあったというのは保守系韓国紙記者だ。

「昨年10月30日に判決が出た後、李洛淵総理の下、対策チームが立ち上がりました。そこであらゆる案が出され、シミュレーションも行われた。その中から昨年12月末までには結論を出して、日本側に説明する方向で、国民の理解を請うことで話が進んでいたそうです。

しかし、この時も青瓦台の大統領側近らの強硬な反対で頓挫したと聞いています」

次に待ち受けるのは、日本企業の資産現金化

GSOMIAの次に日韓を待ち受けているのは、元徴用工の裁判で被告となった日本企業の資産の現金化だ。

現金化は韓国でも避けたいという雰囲気で、10月に訪日した李洛淵総理は安倍首相に「今までもこれからも1965年の日韓基本条約を遵守する」と伝えた。文喜相国会議長が早稲田大学の講演で「韓国企業+日本企業+日韓の国民からの支援金」という案を提案したことにも韓国側の意向は現われている。文議長の案は韓国の被害者から反発が起きているが、「日本では比較的前向きに受け止められていると聞いていて、進められるかどうかは被害者の説得いかんによるともいわれています」(韓国紙東京特派員)。

最近、韓国では「韓国側が日本に賠償を求めない代わりに日本には懺悔と謝罪を求める」という案がにわかに浮上している。元徴用工の代理人のひとりである崔鳳泰弁護士は中央日報が12日に主催した「韓日ビジョンフォーラム」の席上で、「被害者と弁護団は韓日政府間で本格的な協議が始まれば強制執行(現金化)をしばらくの間中断することで合意している」と発言し、耳目を引いた。前出の保守系紙記者は言う。

「日本は、韓国が1965年の基本条約を遵守するか否かを巡り、文大統領が言及していないことにまだ不信感があるといいます。韓国の立場からすれば、日本の植民地支配の違法性を1965年の条約に盛り込めなかったという欠陥は認めて、日本とのこんな不毛な葛藤は一刻も早く解消すべきです。文大統領のひと言にかかっているのです……」

日本企業の資産の現金化の時期は、「来年2月以降」や資産の鑑定などの手続きを経た「1年後」などの予測が出ている。

GSOMIAの行方は

18日には、中央日報が「GSOMIA終了決定自体を猶予する方策(決定を6カ月後に延期するもの)」の存在や「(日本が)輸出規制を直ちに撤回しなくとも文大統領が4日、タイのバンコクで安倍首相に提案した『高位クラスの協議』を日本が受ければ変化の兆しと解釈できるのではないか」とGSOMIA破棄を回避する方策を示唆。さらには、「米国、GSOMIA終了待避プランB」と米国がGSOMIA破棄後のプランの準備に入ったと報じると、青瓦台は「まだ失効したわけではない」と応酬している。

GSOMIAを生かすよう、日米韓では詰めの協議が水面下で密かに行われているといわれ、19日、文大統領は国民300人とのタウンミーティング『国民との会話』(MBC)の生放送で従来の立場を固守しながらも、「GSOMIA終了直前まで日本、米国と水面下の接触などでGSOMIA問題解決のための努力をしていく」と話した。

GSOMIAを巡り、韓国はどんな答えをだすのか。

破棄となれば高笑いするのは中朝だ。

(菅野 朋子)

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