LESS~プラトニックな恋人~:私と抱き合えなくて、あなたはどうして平気なの?

LESS~プラトニックな恋人~:私と抱き合えなくて、あなたはどうして平気なの?

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  • 更新日:2017/11/20

今、東京の男女が密かに抱えている悩みがある。

恋人や夫婦間での、肉体関係の喪失だ。

この傾向は、未婚の男女においても例外ではない。

化粧品会社でPRをしている美和子は、某大手損保企業に勤める健太と恋に落ち、同棲を開始。

相思相愛、周りも羨むお似合いカップルの二人だが、同棲1年が経つ頃、不完全燃焼の夜を境にして“プラトニックな恋人”となっていく。

−私たち、このままでいいの?

美和子の心で燻る不安に、女子大時代の友人・杏奈の言葉が火をつけた。

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密室の、ベッドで

「健太…もう、寝てる?」

寝室に入ると、ベッドから気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。

疲れているのだろう。近くに寄っても気配に気づく様子はない。

健太の寝顔は無防備で幼く、まるで子どもみたいだ。

彼の傍に腰かけ、出会った頃より丸みを帯びた頬にそっと触れた。そして私は試すように、唇を近づける。

「美和子…?どうした?」

ようやく目を覚ました健太が眠そうに呟くのを無視して、私はそのまま彼の唇を吸う。

健太はそんな私を受け入れ、応えては、くれた。…けれど、次の瞬間、私たちはどちらからともなく照れ笑う。

密室のベッドで恋人同士が唇を重ねているというのに、身体の奥底から湧き上がるような衝動も、胸を締め付けられるような激情も、私たちには起きない。

私たちは、男と女のはずだ。それなのに、動物的に欲望を曝け出し官能に乱れることが、恥ずかしく思えてしまう。

−抱き合えない男と一緒にいる意味、ないでしょ?

私の頭を優しく撫でる彼の胸に顔を埋めていると、また杏奈の言葉が思い出され、私は息が苦しくなって健太から離れた。

そしてそのとき彼はもう、静かに夢の中に戻ってしまっていた。

こんな思いをしているのは、私だけなのだろうか。健太は、私と抱き合えなくて平気なの…?

心に浮かぶその疑問は、月日の経過とともに疑惑へと姿を変え始めている。

あの時…杏奈は私に、続けてこうも言ったのだ。

「男が彼女と“しなくなった”時は、絶対に外で“してる”の。男が誰ともしてないわけ、ないんだから」

仲睦まじい二人だったのに…美和子は健太に対し、不信感を抱き始める

疑問が疑惑に変わる時

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翌朝、鏡の前で私が髪を巻いていると、健太が後ろから覗き込んできた。

「美和子ちゃん、今日も可愛いね」

「何、いきなり(笑)」

苦笑する私に健太は「だって、可愛いから」などと調子のいいことを言い、鼻歌まじりにバスルームへと消えていった。

付き合う前もそうだったし、付き合いが長くなってからも、健太は私をよく褒める。

女子大時代の親友・茜の結婚式の写真を見せた時も、「やっぱり美和子が一番綺麗だなぁ」などとしみじみ言って、私を苦笑させた。

褒められてもちろん悪い気はしないし、愛情表現豊かな健太とだからこそ、こうして仲睦まじくいられるのだと思う。…たとえ、プラトニックな関係であっても。

けれどその日の私は、シャワー音に紛れて届く健太の鼻歌に、言いようのない不安を感じてしまった。

−男が彼女と“しなくなった”時は、絶対に外で“してる”。

振り回されたくないのに…杏奈の言葉が、耳元で不協和音となって響くのだ。

健太の私に対する愛情は疑っていない。

しかし、彼はもともと社交的で、仕事でもプライベートでもとにかく誘いが多い。ほぼ毎日飲んで帰ってくるし、2時3時の帰宅もざらにある。

とはいえ私自身も夜の誘いに乗ることも多く、束縛されるのが嫌いだから(前の彼とは、過度の束縛が原因で別れたくらいだ)、彼にもしつこく予定を聞くようなことはしてこなかった。

健太は天性の人たらしで、人の懐にすっと入り込むのがうまい。それに、私に対してそうであるように、他の女性にだって、上手にリップサービスすることができる男だ。

これまで疑いもしてこなかったが、「男が他の誰ともしていないわけがない」という杏奈の言い分は一定の信憑性がある。

一度浮かんだ疑惑は、否定しようとすればするほどに濃度を増してゆき、私はそんな自分が嫌になってしまった。

怪しい言動があるならいざ知らず、そういうわけでもない、むしろ健太は私を「可愛いね」と褒めてくれただけなのに、こんな風に彼を疑ってしまうなんて。

−やっぱり、このままじゃダメだ。

このままでは自分が嫉妬深い嫌な女になってしまう気がして、私はついに、向き合うことを決めた。

「…健太、今日はお仕事早く終われたりする?」

シャワーを終えて出てきた彼に、できる限りいつも通りの声で問う。

「どうだろう、頑張れば20時過ぎには出られるかなぁ」

「じゃあ私、仲通りの『GARB Tokyo』で待っててもいい?軽く食事してから帰ろうよ」

いいよ、と頷く普段と変わらぬ笑顔に、私はホッと胸をなで下ろす。

こういうことは、できる限り感情的にならずに話した方が良い。

『GARB Tokyo』を指定したのは、適度な喧騒と周りの目がある場所なら、彼の反応がどういうものであろうと、最後まで取り乱すことなくいられると思ったからだ。

ついに健太と向き合うことを決めた美和子。彼の反応は?

抱き合えなくて、平気なの?

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「お待たせ」

20時を少し回る頃、健太はやってきた。

時間にあまり正確と言えない彼なのに、約束の時間にきちんと仕事を切り上げ来てくれたのは、彼にも何かしら思うことがあったからだろうか。

夜の喧騒の中で見るスーツ姿の健太は少しだけ新鮮で、それは彼にとっても同じだったのだろう、健太は私のシャツワンピースを「似合うね」と褒めてくれた。

私たちは、いろんな話をする。

健太の仕事の話も聞くし、私の職場での出来事も話す。健太がおしゃべりだから、彼の先輩であるやまちゃん(私と健太が出会った食事会の、男性側の幹事だった)の直近のデートの結果まで、なぜか私も知っているくらいだ。

この日もお互いの思いつくまま気のおけない話をした後、一瞬、会話が途切れたときに…私はついに、ずっと聞けずにいたことを尋ねる覚悟を決めた。

そう、ただひとつだけ、私たちが決して触れてこなかった、あのことを。

「ねぇ健太」

そう切り出した私に、彼の目が一瞬、泳ぐ。

浅い付き合いなら見逃していただろう、そのほんの些細なしぐさから、彼が私の改まった声に怯えていることに気づいて、続きを躊躇してしまう。

それでも私は、もう言葉にせずにはいられなかった。

「健太は…どう思ってるの?私と…その、抱き合えなくても、平気なの?」

精一杯、平常心で尋ねたつもりだったけれど、その声は自分の耳にさえも浮いて聞こえた。

私の言葉に健太は一瞬、小さく顔を歪める。しかしすぐにいつもの笑顔を浮かべ、宥めるような口調で私に笑いかけた。

「…そんなこと、気にしてたの?そんなの別に、しようと思えば、いつだってできるよ」

−いつだってできる?

違う。そんなのは、嘘だ。

私も最初は健太と同じように、大したことじゃないと思い込もうとした。けれどそれは逃げているだけ。何の解決にもならない。

「いつだって、って私たち、もう1年近くしてないのよ?ちゃんと、この問題と向き合って、解決策を考えた方が…」

「問題って、別に、何の問題もないよ。俺は美和子が本当に大好きだし、最近は…その、そういう雰囲気になっていないだけで。自然に、何かのきっかけで、できるようになるって」

私の言葉を遮るようにして、彼は一気にまくし立てた。

健太の言い分に納得したわけではもちろんないけれど、彼の、どうにか必死で私を説き伏せようとする姿を見ていると、私はそれ以上、もう何も言い返す力が湧いてこなかった。

…多分、私も健太も、わかっていたのだ。

男女というものは、プラトニックな関係に陥ってしまったが最後、抜け出す術など、どこにも用意されていないことを。

NEXT:11月21日 火曜更新予定
問題に向き合うことすらできない…悩んだ美和子が、向かった先。

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