「フルMVNO」ならApple Watchを使えるのか? - IIJが解説

「フルMVNO」ならApple Watchを使えるのか? - IIJが解説

  • マイナビニュース
  • 更新日:2017/11/14
No image

●MVNOがおかれている現状とは

インターネットイニシアティブ(IIJ)は11月8日~10日の日程で、インターネットの最新技術動向を演題とした講演会「IIJ Technical WEEK 2017」を開催した。ここでは最終日に行われた講演「IIJの目指すフルMVNOとは」について紹介しよう。

「フルMVNO」という言葉は、昨年あたりから話題に上ることが多くなってきた単語だが、昨年8月29日にIIJがNTTドコモに加入者管理機能の連携を申し込み、2017年度下期(3月予定)にフルMVNOサービスの提供開始予定、と発表したことで一気に定着した感がある。

それでは「フルMVNO」とはそもそも何なのだろうか。IIJの佐々木氏は「フルMVNO」に対して、従来型のMVNOを「ライトMVNO」と位置付ける。

噛み砕いて説明しよう。MVNOとは、回線設備を持つMNO(キャリア)から設備の一部を借り受けてサービスを提供する事業形態だ。当初、MNOにとって自社の商売敵にもなるMVNOへの回線貸与はなかなか受け入れられなかったが、MVNO事業を推進する総務省が策定したガイドラインによってMNOがMVNO側からの接続要求を断れないような状況になっており、料金についても細かく規定されている。

MNOが持つ設備は多彩だが、基本的にMVNOは「顧客管理システム」と「通信制御用のサーバー」、それに「インターネットとの接続回線(ゲートウェイ)」だけを受け持ち、それ以外はMNOから借り受ける、というのが「ライトMVNO」(レイヤー2接続)だ。

この、MNOが受け持つ部分(コアネットワーク)の中には、基地局などに加え、他の事業者(NTTドコモであればKDDIやソフトバンク、固定網も含む)の電話網との接続であったり、回線を利用しようとする加入者管理のためのサーバーなどが含まれる「シグナリングネットワーク」がある。また、SIMカードもMNOから貸与という契約形態であり、MVNOはMNOからSIMカードを卸してもらい、それを顧客に販売(貸与)するだけで、独自にSIMカードを発行することができない。

総務省によってMVNOは事業参入しやすくなったのだが、MVNO側が保有する設備の割合が小さいため、結果としてMVNO間のサービス競争の前提となる設備競争が難しくなり、価格も含めて横並びになってしまい、通信サービス以外の部分での競争に頼っている、というのが現在のMVNO市場の現状になっているわけだ。

そこでIIJは、NTTドコモとの2年にわたる協議を経て、接続約款や卸標準プランにはない接続形態として、SIMカードの発行・管理と、独自のシグナリングネットワーク、すなわち加入者管理機能である「HLR/HSS」と他の網からの呼制御信号を中継するゲートウェイ「STP/DEA」を自社のコアネットワークに持つかたちで管理することで合意に達した。これがIIJのいう「フルMVNO」だ。

●フルMVNO化してもユーザーのメリットは少ない?

ではフルMVNOになるメリットとはどういったものか。

実はユーザーにとって一番気になる「通信速度が速くなる」「安くなる」といったことは一切ない (強いて言えばSIMカードは安くなるかもしれないが)。最も大きな点は、MVNOが自らSIMカードを発行できるようになるため、eSIMやソフトSIMといった最新技術を採用しやすくなり、たとえば1つのSIMに海外と日本国内の2つの番号を登録するといった独自の付加価値をつけて売りやすくなる。これはIoTやM2Mといった、主にビジネス・産業分野において特に有効になる変化だ。

ちなみに、現在eSIMを搭載しているコンシューマ向け機器としては「Apple Watch Series 3」があるが、佐々木氏によれば、アップルとの契約等クリアしなければならない問題が多いため、フルMVNOになってもApple WatchのMVNOでの運用は不可能だろうとしている。今後、オープンなeSIM RSP(Remote SIM Provisioning:リモートでのSIM内容書き換え)標準に則ったeSIM搭載のウェアラブル端末やスマートフォンが登場すれば、IIJのフルMVNOで対応できるだろうという予想も明らかにした。

ビジネス面においては、IIJがフルMVNO化すると同時に、IIJのHLR/HSSをNTTドコモのネットワークに直接接続する合意を得ており、国内向けのデータ通信を低価格なMVNO向けの接続料金で利用できるのが特徴だという。仮に他のMVNOがフルMVNO化したとしても、この部分で同意が得られなければ国内向けのデータ通信にも海外MNOのローミング接続を介する必要があり、割高になるというのが佐々木氏の説明だ。IIJとドコモの契約が排他的なものかどうかはわからないが、言葉の裏を読むと、現状ではほぼ独占的な契約にこぎつけたのではないだろうか。そのような自信が感じられた。

IIJのフルMVNOは当面産業界などビジネス向けの展開ということで、一般ユーザーが海外旅行向けのSIMなど、フルMVNOならではのメリットを享受できるようになるには、まだしばらく時間がかかりそうだ。とはいえ、現在競争過多とも言える状況にあるMVNO業界において、IIJが他社にはない自由度という大きな武器を手に入れたことは間違いない。フルMVNO化は設備面での投資に加え、MNOとの契約にこぎつけるのもかなりの難関といった様子だが、果たしてこれに続くところは出てくるのだろうか。MVNO業界全体のターニングポイントとして注目したい。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

IT総合カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
【本日のセール情報】Amazonタイムセールで80%以上オフも! 超軽量レインシューズや冬用洗えるスラックスがお買い得に
自分のスマホがAmazon Alexaを搭載したスマートスピーカーになるアプリが登場
クアッドコア搭載でファンレスのスティック型PCが登場
米タイム誌「今年のベストガジェット」、日本のあの製品がiPhone X抑え見事1位
これこそミニマム、そして多機能。鍵もカードもスマホも一括管理できる「シザーバッグケース」
  • このエントリーをはてなブックマークに追加