自衛隊に敵ドローンを撃ち落とす権限なし

自衛隊に敵ドローンを撃ち落とす権限なし

  • PRESIDENT Online
  • 更新日:2017/11/14
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現在の自衛隊には何もできない

小型無人機(ドローン)の脅威が明らかになっている。家電量販店に販売しているような小型ドローンに手榴弾などを積載して爆撃する事例が海外で相次いでいる。

今年3月、ウクライナ東部の世界最大の弾薬庫がロシア側のドローンから手榴弾が投下されて爆破された。中東ではあらゆる武装勢力が小型ドローンを使用した攻撃をやりあっている。背景には安価にローリスクで相手を攻撃できることがある。

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誰でも手軽に購入できるドローン。海外では兵器としての利用も相次ぐ。(時事通信フォト=写真)

元米海兵隊大佐、国防大学上席研究員のトーマス・ハメス氏を筆頭とする欧米の戦略家たちは「脆弱な目標であればドローンで大ダメージを相手に与えることができる。駐機中の軍用・民間機、液化天然ガス施設、石油化学製品工場などが危ない」と危惧している。

わが国でも、ドローンで那覇空港の旅客機や燃料車が爆破されれば、自衛隊も使用する滑走路は使用不可能になり、沖縄の制空権は喪失する。停泊中のイージス艦もレーダーを破壊されれば、艦は無用の長物と化す。陸自の離島防衛の切り札たる地対艦ミサイルシステムも同様だ。

しかし、仮にドローン攻撃が企てられていたとしても、本格的な武力紛争に日本が突入していなければ、現在の自衛隊には何もできない。

まず、法的に自衛隊の拠点周辺でドローンの飛行を禁ずる法律がない。官邸ドローン事件を契機に制定された“ドローン規制法”で、飛行を禁じているのは防衛省の本庁がある東京の市谷区域のみ。その他基地上空などでは飛行可能だ。航空自衛隊の弾薬の多くが貯蔵されている「高蔵寺弾薬庫」、陸上自衛隊が地対艦ミサイルを配備する計画の「宮古島駐屯地設置予定地」、海上自衛隊の「舞鶴弾薬整備補給所」も、ドローンを飛ばしても問題はない。

50万円以下の罰金が科せられるだけ

ちなみにドローン規制法は警察官、海上保安官、皇宮護衛官のみに撃墜権限を付与しており、自衛隊には捕獲・撃墜する権限すらない。自衛隊法95条に基づく“武器等の防護のための武器の使用”により、自衛隊の装備を守る名目で撃墜は可能という見解もあるが、これも難しい。撃ち落とす以外ほかに手段がないことなど、発動には厳しい前提条件があるからだ

一方、航空法は滑走路周辺や人口密集地などでは許可のない飛行を禁止している。しかしそれも50万円以下の罰金が科せられるだけで、工作員が気にするとは思えない。

防衛省は、もし不自然なドローンが自衛隊関連施設に接近した場合「施設管理権で対応する」としている。ただ、これは家の玄関に「セールスお断り」とシールを貼る程度のもので、基地周辺のドローンを撃墜・破壊できるものではない。

また、防衛省は「小型ドローンを迎撃することを目的とした特定の装備品はない」とも話しており、電子妨害などで撃墜する「ドローンディフェンダー」のような専用装備を所有していないことが確認された。

仮に有事だと政府に認定され、ドローンへの攻撃が許可されたとしても、具体的に対応できる手立てがないのだ。自動小銃ではあまりにも目標が小さいためにドローンを撃ち落とすことは不可能に近い。対空ミサイルではドローンがレーダーに映るのか不明なうえ、費用対効果の問題がある。そもそもドローン攻撃を想定した訓練も皆無である。

自衛隊は110番しかできない

ドローン規制法は、首都中枢機能の防護が立法趣旨の主眼に置かれていたため、防衛省側としてもそれにぶら下がる政令・省令を市谷に限定せざるをえなかったと推察できる。そうなると現行法令下では、有事とはいえない、グレーゾーンの事態で、敵がドローンに爆弾を積載して護衛艦やF-35戦闘機や那覇基地を攻撃しようとしてきても、自衛隊は110番しかできないだろう。

しかし、防衛省・自衛隊の関心はいまだ薄く、伊勢志摩サミットでも航空自衛隊はドローンによるテロの対策はほとんどしなかったという。

今からでも遅くはない。自衛隊員にドローンの撃墜権限を付与する法律を議員立法で早急に制定し、同時に補正予算でドローンディフェンダーを調達し、各拠点に配備するべきだ。でなければ、我々は戦わずして、敵によって壊滅させられてしまう。

部谷 直亮(ひだに・なおあき)
一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構上席研究員
成蹊大学法学部政治学科卒。拓殖大学大学院安全保障専攻修士課程修了。同大学院博士課程単位取得退学。専門は米国製軍関係、同国防政策、日米関係、安全保障全般。財団法人世界政経調査会 国際情勢研究所研究員などを経て現職。共著に『「新しい戦争」とは何か』(ミネルヴァ書房)がある。

(写真=時事通信フォト)

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