「本麒麟」大ヒットの背景に若手の抜擢

「本麒麟」大ヒットの背景に若手の抜擢

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  • 更新日:2019/05/21
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成熟市場の代表格であるビールの中の「第3のビール」と呼ばれる新ジャンルで、マーケットシェアに異変が起きている。昨年の3月にキリンビールが発売した「本麒麟」の売れ行きが好調で、今年3月には昨年の新発売月を上回り過去最大の販売数量を記録した。

キリンはこの数年、若手を抜擢して大きな仕事、職種を積極的に任せるようにしてきたという。「ビールに対する愛は誰にも負けない」という入社7年目で「本麒麟」のマーケティングを任された京谷侑香さんにインタビューして、ヒットの秘密を聞いた。

京谷さん

「飲みごたえ」で勝負

「2年前に新商品のマーケティングを任されたが、この新ジャンルは2011年ごろから市場が縮小していたので、何とか新ジャンルを支えられるようなブランドを作りたかった。その中でも『コク』と『飲みごたえ』だけはほかの商品に絶対に負けたくなかった」と話す。

新ジャンルではキリンビールの「のどごし<生>」のほか、サントリーの「金麦」、アサヒビールの「クリアアサヒ」の3つのブランドがこの10年間ずっと主力として支えてきた。3ブランドが伸びたのは、顧客のニーズに応えたからだったが、市場全体は伸び悩んでいた。

既にヒットした商品がある中で、それを上回る商品を出さなければならないプレッシャーは相当のものだったはずで、「既存ブランドが顧客に応えられているものは何か、応えられていないものは何かをじっくり分析した」という。

「妥協して価格の安い『第3のビール』を飲むのではなく、確かなうまさで選んでもらえるブランドにしたかった。ゴクゴク飲んで、のどを潤すというよりも、1日1杯を大事にする人を狙った」。

そこでこだわったのが、飲んだ瞬間の味だった。「コク」と「飲みごたえ」については長年にわたり「ラガービール」を作ってきた技術と自信があったので、麦芽比率の制限がある中で、後味に癖のないものを作ることができた。

社内風土に変化

キリンが京谷さんに「本麒麟」のマーケティングを任せたのには伏線があった。新ジャンルで05年に発売した「のどごし<生>」のブランドの新商品「のどごし スペシャルタイム」の商品開発を17年に担当した実績があった。

ビールの若者離れが指摘されて久しいだけに、キリンの経営陣は若手を活用してビール離れのトレンドを何とか歯止めをかけなければならないと思っていた。この数年、キリンの社内風土は、大手外食チェーンを担当する営業部門やマーケティング部門、企画部門など、これまではある程度キャリアを積んでから配属される部署に若手社員が積極的に起用されるなど変化してきている。

その成功事例の一つが「本麒麟」だった言えるが、成功事例に安住すると失敗するとも言われるだけに、このヒットが続く保証はない。

ビールというライバルとの差別化が難しい商品で、ヒットにつなげるのは相当のプレッシャーになったはずだ。「この商品が売れるかどうか発売前は非常に緊張して、『本麒麟』の赤いパッケージが夢にまで出てくるほどだった。いまはヒットしたのでホッとしていると同時に、さらにリニューアルしたおいしさを届けていきたい」と話す。

生かされたビール愛の感性

「ビールは全人類を幸せにできる」と断言するその自信は相当なもので、「ビール愛に関しては私が一番」と笑う。「本麒麟」の開発では、「ラガービール」と同じホップを使い、アルコール比率を6%と高めにして「力強いコク」と「飲みごたえ」にこだわった。

製造方法は長期低温熟成を採用することで、当社の新ジャンルのものより熟成期間を1.5倍長くすることで、思い通りの商品ができた。ビールに関して誰にも負けない感性を持っている京谷さんの経験と能力が生かされた結果とも言える。

「本麒麟」というネーミングは当初から圧倒的な支持を集めて、採用することに迷いはなかったそうで、「第3のビール」のシェアを本気で取りに行くという意味も込められており、満足しているという。

顧客層の拡大目指しリニューアル

売れているのもかかわらず今年2月に「本麒麟」のリニューアルを行った。ヒットしている商品をリニューアルする必要はないのではないかと思いがちだが、ビール会社の商品戦略は違うようだ。

「これまでは40歳代がコアとなるターゲットだったが、もう少し幅広い、とくに若い層に飲んでもらえるようにしたかった。リニューアルでは『コク』と『飲みごたえ』を大事にしながら、完成度を高めることができた。結果は20歳~30歳代の層の比率が上がり、より多くの若い層が飲んでくれて、間口が広がった感じがする。これからも日本のビールの中で『本麒麟』が一番うまいと言われるまで、進化を続けていきたい」と話す。

今後はどんな商品を出したいかを聞くと「若い世代のお酒離れが指摘される中で、若い人がお酒を飲んでもらえることで、新しい価値を見つけることができるようにしたい。世の中にビールの魅力を持続させていくのが会社のモットーなので、お酒はどんな気分の時でも寄り添ってくれるものだということを、若い人の文脈でどう伝えていくのが重要なのではないか。ビールを飲むことで何かスッと気が抜けてリラックスできるような方法を探していかなければならないと思う」と新たな価値創造に挑んでいる。

気になる酒税の動向

「第3のビール」とは、ビール、発泡酒とは別の原料、製法で作られた、ビール風味の発泡アルコール飲料の名称。メーカー各社はビールとの違いを強調して新ジャンルと呼んで、04年以降に各社はこの新ジャンルでの商品を発売して競い合っている。

ビール大手5社が1月16日に発表した18年のビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)の出荷量は、前年比2.5%減の3億9390万ケース(1ケース=大瓶20本換算)となり、05年以降14年連続で過去最低を更新した。コスト増などに伴う値上げが影響したほか、割安な缶酎ハイにシフトする流れが続いており、市場縮小の傾向が鮮明になっている。

ビールだけで見るとは5.2%減の1億9391万ケース、発泡酒も8.8%減の5015万ケースと、いずれも3年連続のマイナスだった。一方で、価格の安い第3のビールは3.7%増えて、ビール類の中で唯一伸びた。今年は10月に控えた消費増税後に生活防衛意識から第3のビールが更に伸びると見られる。しかし、2026年の酒税一本化に向けて酒税が下がるビールカテゴリーの拡大が見込まれ、各社主力ビールブランドのリニューアルなどテコ入れを行っている。酒税が上がる第3のビールの価格が上がる可能性もあり、第3のビールも曲がり角を迎えることになるかもしれない。

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